バレーボールネーションズリーグ(VNL)予選ラウンドで、日本は無敵の12連勝を飾り、首位での決勝ラウンド進出を果たした。なかでも半分の6試合はフルセットの末の接戦勝利で、粘り強さが際立っている。

 日本ラウンドでは、パリ五輪でメダルの道を閉ざされた因縁のイタリアに、髙橋藍が大爆発し、石川祐希、西田有志も次々にスパイクを決め、劇的な逆転勝利。昨年の世界バレーボール選手権で決勝ラウンドへの道を阻まれたカナダ、さらに世界的スパイカーを擁するベルギーを、大塚達宣、富田将馬、甲斐優斗などの活躍で轟沈させた。

「ボールを落とさない」

 アタッカー陣の選手層の厚さが目立ったが、そんな日本バレーの伝統とも言えるディフェンス力も、忘れるべきではないだろう。相手を辟易させるほどの"不落"ぶり。トータルディフェンスで、ブロックとレシーブが連動しているが、神がかったディグ(スパイクレシーブ)は日本の土台になっていた。それは「頑張る」という精神論の話ではない。圧倒的な技術の結晶だ。

 日本のリベロ、山本智大、小川智大のふたりは世界に誇る"不落の守護神"と言える。

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 イタリアをフルセットの末に下した試合後、何度もチームを救った山本に質問を投げた。

――日本が相手のスパイクを拾い続けることで、相手にも焦りが生まれていました。それが勝機につながっていた気がしますが?

 山本は歯切れよい言葉で説明した。 

「そこは日本の武器というか、生命線かなと思っています。

ディフェンスでプレシャーを与えられることによって、自分たちは有利に立てるので。もちろん、サイドアウトを取る強みも自分たちは持っているし、それを取るための1本目のパス(レセプション)の精度を上げることで、最後のスパイカーにもつながると思っています」

 拾うだけでは満足しない。"1本目のパス"と捉え、味方につなげるのだ。

 たとえばイタリアとの1セット目、16-17で髙橋が背面ショットで会場を沸かした。しかし、それを相手が必死に拾ってラリー戦が展開。相手のスパイクを髙橋がブロックするも、再び攻撃を受ける。そこで山本が奇跡的なディグを成功。これが深津英臣のトスを経て、石川の豪快なバックアタックにつながった。

【全員の"落とさない"気持ち】

 スーパースターたちのスペクタクルを、山本が紙一重のところで回していたとも言える。

 あるいは1セット目を取られたあとの第2セット、22-18とどう転ぶかわからない点差で、石川のスパイクがブロックにつかまると、ネット近くに山本がしっかりといてブロックフォローに成功。西田のアタックで得点につながった。隠密のように、その場に潜む。

そのポジショニングの適切さ、タイミングを見抜く勘のよさは、さまざまに蓄積されてきたデータを基に導き出す答えであり、守備者の醍醐味と言える。

「ブロックフォローのところは、たまたまライト側に動いていて。石川選手の(体が)クロスに向いていたので、そこで止まっていたら(ボールが落ちて)来た感じなんですが、普通のプレーに見えて意外と難しいです(笑)。たぶん、なかなか取れないボールで。あそこで取れた1点が大きかったかなって思いますね」

 山本は小さく胸を張って、こう続けた。

「もちろん、ディフェンス力はリベロだけでなくて。たとえば(髙橋)藍選手はディフェンシブな選手で、取れる範囲が広いことに特徴があります。そこで、ある程度は任せて。一方、石川選手にはアタックに専念してほしい。だから、できるだけ僕が広くカバーして。全員での"落とさない"気持ちが強みでもあるので、しっかりしたポジショニング、いいブロックディフェンスの関係を築けるか」

 言うまでもないが、リベロだけで防御は成り立たない。ブロッカーとの連係ありきで、複数の選手でエリアカバー。

日本大会はセッターの深津英臣もレシーブ力の高さを見せていた。そうした構造のなかで守備が機能し、攻撃を回すのだ。

「イタリア戦は1試合を通じて(相手の)エースがほぼないのはよかったですが、こっちのもったいないミスはあったし、いつもできているプレーができていないところもありました。そこをもう少しラクに取れていたら、フルセットじゃなく、3-1、3-0で勝てたはず。完璧なゲームだったとは言えませんね」

 山本は守備者らしく言った。完璧性を求めることで、ミスを最小限にできるし、それでもミスは起こるもので、そこで改善し続けられるか。リベロは常に失敗から学習するポジションで、さもなければ、相手の渾身の一撃を拾う技量など身につかない。その点、彼は至って用心深く、性質的に守備者と言える。

 カナダ戦、アルゼンチン戦で山本に代わって守護神ぶりを見せた小川も同じことが当てはまる。

「バレーは点を取らないと勝てないので......リベロは常に冷静に判断し、たとえば相手が強いとブロックもいいので、丁寧にブロックフォローするとか。(無理に打たず)賢くリバウンドを取るとか。力任せに戦うだけではなくて。

VNLでフルセットの試合を全部取れているのは、"最後の1点を取りきるチーム"の証拠。全員が同じ方向を見られているのかなって思います」

 山本は不敵な笑みをもらして言った。チームを加護する力は、相手には絶望を与える。たとえば打出の小槌をふる大黒天は福々しいが、破壊神シヴァが変身した姿だ。

 VNL決勝ラウンドは、7月29日に開幕する。日本は開催国の中国と準々決勝で対戦。史上初の優勝が手の届くところまできたが、今年の目標はあくまでロス五輪出場をかけたアジア選手権(9月、福岡県で開催)だ。

小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

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