サッカー解説者の林陵平さんと元サッカー日本代表岩政大樹さんが、スポルティーバのYouTubeチャンネル「林陵平のフットボールゼミ」にて、ワールドカップを終えた日本代表について語り合った。今大会で学んだことから、4年後の2030年ワールドカップに向けて日本サッカーに何が必要なのかまで、率直な言葉で語ってもらった。


 

【日本代表のよかった点、足りなかった点】

林陵平(以下、林)今回のワールドカップの日本代表はいかがでしたか?

岩政大樹(以下、岩政)よくも悪くも予想どおりという感じですかね。

林 よかった面としては何がありますか?

岩政 チュニジア戦は個々の選手の特徴が生かされていたなと思います。オランダ戦も、リードされながら自信満々に取り返しに行くという、これまでの日本にはなかった姿が見られて、マインドが変わってきたなとあらためて感じました。

林 欧州で活躍している選手も増え、個人のレベルは高くなってきましたし、通用した部分はありましたよね。僕は日本の強みである「団結力」は、ほかの国の代表チームにはないものと感じました。逆に足りなかった部分はどこだと思いますか?

岩政 前置きとしてサッカーは、すべてうまくいっても負けることがあるし、その負けた試合でよかった面もある。それをしっかりと分析して積み上げていくことが大事だと思っているんですが、それを許さない風潮、うまくいっている時に「ダメ」と言ってはいけないとか、負けた時に「よい」と言っちゃいけないとかがありますよね。

 そこを踏まえて試合をちゃんと分析して伝えるのが大事だと思っているんですが、総括すると起こりうることが想定内で起こったなという印象です。

 3バックの形はアジア予選では前からプレスに行く形でうまくいっていたけど、ワールドカップではそれが難しくなるということはわかっていたはず。構えた時にどう出ていくのか。これはアジア予選を戦っている間に、もっといろいろな意見が出てしかるべきだったんじゃないかなと思います。

林 特にブラジル戦は、先制点を獲って守りきるというのがプランだったと思うんです。ただ、グループリーグでは日本(に有利な)の雰囲気があったのですが、ブラジル戦の雰囲気は完全なアウェーだったんですよね。

それで押し込まれた感じもありました。

岩政 それは現地じゃないとわからないね。

林 一時期、森保一監督も4バックを試したりしていましたけど、最終的には3バックでいこうとなって、4バックの準備はたぶんしていなかったんですよね。そうなると、自分たちがボールを持った時にプレーをやめるのではなく、相手を押し込むくらいの時間がつくれないとああいう展開になってしまう(攻められる時間が多くなる)。「守備」なんだけど「攻撃」の部分が足りなかったと思います。

岩政 まさにそうですね。その点で言うと、ケガをした選手が多かったのは事実ですが、その一方で代わりにライン間で受けられるような選手をほとんど招集していませんでしたよね。そう考えると、どういう戦いを想定していたのか「守りきるためにも保持をちゃんとしようね」というのをみんなが認識した大会になったのはよかったですが。

林 5-4-1で構えて強すぎる相手と戦うと、ボールを奪った時に出しどころが見つけられないんですよね。そう考えると状況に応じて、4バックが必要だったかなと思います。結局、今大会上位のチームは「4枚で守れる2センターバックがいて、いいサイドバックがいる」と考えると、そこも重要なのかなと思いました。

岩政 世界的にもいいサイドバックが欠けてきているというのは感じました。

そのなかでスペインはマルク・ククレジャとペドロ・ポロの両サイドバックがすばらしかったですよね。日本もサイドバックが新しく出てこなくなったというのは、ひとつポイントだと思います。そういう選手が出てこないと4バックは難しいと思います。

林 日本は3バックで両ウイングバックも頑張っていましたが、ワールドカップでは難しかったですよね。

岩政 ただ、4バックで守れる選手がいない状況の解決策として、両ウイングバックが頑張る形はひとつアリだなと思いました。

【日本代表の2030年に向けて】

林 次のワールドカップの2030年に向けて、この4年間で何をやるべきだと思いますか?

岩政 森保監督が半年続投されて、そのあと大岩剛さんになることが決まって、剛さんは4バックでやると思うのでシステムが変わると思います。そうすると選ばれる選手も変わると思うので、そこはひとつ大きな変化になるでしょうね。サッカー協会や僕らも含めて、ここからの4年の歩みは10年後、20年後を見据えた時にすごく大事な気がします。

林 僕も今大会をとおして、もっと観る側やメディア側のリテラシーを上げないと、日本は絶対に上に行けないなと感じました。

岩政 メディアも含めて、ふんわりしていることが多いですよね。「ベスト8を目指す」「優勝を目指す」という目標もどこかふんわりしていて、「優勝って言わなきゃいけない」みたいな雰囲気で目標を言うけど、それが叶わなかったとしても別に誰も咎められない。それはそれでひとつのエンタメとしてはいいのかもしれませんが、サッカーとしてはすごく浅はかだと感じています。

 じゃあここからの4年間をどう考えるのか。

ベスト8を目指すのか優勝を目指すのかで戦略は変わりますし、決勝トーナメントで2つ勝つことが目標なのか4つ勝つのかによって、予選からの組み立て方は全然違ってきます。となると、国としてどこを目指すのかを誰かがリーダーシップを取ってまとめていかないと、結局、現場が困る気がします。

林 選手たちのレベルは確実に上がってきていますし、「日本はすごくいいチームだ」と見られるようになってきているなかで、ここからさらに上に行くためには、もっといろんなものが必要だと思います。

岩政 選手たちには、チャンピオンズリーグに出場できるクラブ、プレミアリーグで優勝を争えるクラブへどんどん行ってほしい。それが国のレベルアップになりますよね。それを取り巻くメディアや日本サッカー協会、僕たちも含めて、お祭り騒ぎで終わるのではなく、もっときちんと戦略を組んでやるべきだと思います。

【批判と誹謗中傷は、まったく別の話】

林 大会が終わると批評が絶対にありますけど、リスペクトがあるなかでの批評や批判は、成長につながると思っています。ただ、リスペクトのない「あいつのここがダメだ」とかは違うと思うんです。ミスに対して、人間性がダメだとか、そこまで言うのは違うと思います。

岩政 先ほども森保さんの采配について話をしましたが、それは森保さんがダメと言っているのではなく、悩まれたのはわかったうえで、こういう可能性もあったかもという話をしました。勝ったからいい、負けたからダメという話とはまったく違います。

林 試合では想定どおりにいかないこともありますし、しっかり準備をしていても結果がついてこない時もあります。

その背景を踏まえた上で話すことが大切ですよね。今大会を見ても、結果が出なかった時に、ただの文句や誹謗中傷で終わるのはもったいない。「なぜその選択をしたのか」を遡って考えることでもっと強くなれると思います。

岩政 僕も監督をしていると「根深い」という表現をよく使うんです。チームの問題には今すぐ解決できることと、クラブや国に何年も積み重なって起こっていることと、両方あります。それをそれぞれの立場で解決しようと動くわけですが、現場の選手や現場の監督はその一部でしかないわけです。それにもかかわらず、チームには「優勝を目指します」と言う風潮だけが先行して、実際にはクラブとしてはまだ積み上げていかなきゃいけない段階なのに現場だけ放り出されている。そして負けた時に誹謗中傷をされて......という構造がずっと続いている気がします。

 メディアの人間も、クラブの人間も、サッカー協会の人間も、それぞれが責任を持って発信していかないといけないと思っています。

林 かなり熱く語りましたがいかがでしたか?

岩政 大丈夫かなと不安です(笑)。

林 根底には日本のサッカーを強くしたいという思いがありますからね。

岩政 みんなで取り組んでいきたいですね。

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