女子バレーボール日本代表は、8月21日から中国・天津で開催されるアジア選手権に挑む。予選ラウンドは順に香港、韓国、ベトナムと対戦。

準々決勝からはトーナメントで、優勝チームが2年後のロサンゼルス五輪出場権を獲得する。

 ここで優勝を逃した場合、2027年のワールドカップの順位や2028年の世界ランキングで出場権争い(出場枠は開催国アメリカを含めて12チーム)をすることになるだけに、乾坤一擲の大会になるだろう。現在の世界ランキングで日本はアジアトップの6位だが、中国が7位、タイが17位と勝負の行方は予断を許さない。特に中国は地元開催のアドバンテージがあり、接戦は必至だ。

 際どい勝負を制するには、やはり絶対的エースである石川真佑(26歳)の活躍が欠かせないだろう。

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 直近のバレーボールネーションズリーグ(VNL)で日本を牽引し、世界のトッププレーヤーとしての存在感を示したのも石川だった。

 石川は大会を通じた総得点で世界のトップ選手たちに少しも遜色ない9位の215得点を記録した。攻撃だけではない。ディグ(スパイクレシーブ)成功数も日本トップの世界9位。さらにレセプション(サーブレシーブ)成功数も日本トップの世界5位だった。まさに八面六臂の活躍で、彼女の存在そのものが攻守を起動させていた。

 VNLでは、アジア選手権でもライバルとなりそうなタイと戦い、セットカウント3-1で勝利を収めたが、石川は獅子奮迅の活躍だった。

最多得点を記録しただけでなく、ブロックポイントだけで4点も取るなど、防御を攻撃につなげていた。レシーブ力も際立った技術を披露。今回はかなりマークされることになりそうだが、それを克服するだけのプレーの幅を感じさせる。

 石川の真骨頂のひとつは、ハイセット(レシーブが乱れたあと、セッターの定位置から離れた場所から、苦しい状況で上げる高いトス)でのプレーにあるだろう。彼女は、どんなボールも打ちきれる強さを持つ。少々パスが崩れても、それをねじ込むことができる。角度や高さやタイミングにこだわったトスでなくても構わない。上がったパスに空中でアジャストし、打ちきれる。その技量は世界でも屈指だ。

【「自分らしくチームを引っ張る」】

 下北沢成徳時代からハイセットを鍛えられた技術が土台になっているのだろう。さらに、イタリアに渡って最高峰セリエAで世界の高さやパワーと戦いを重ねたことにより、技をアップデートさせた。強打で吸い込ませるだけでなく、コースを打ち分け、フェイントをかけ、ブロックアウト、あるいはブロックタッチへ持ち込む。

多彩な攻撃で得点を決めることができる。

 実力どおりのプレーができれば、アジアでは無双を誇るはずだ。

 そんな石川がコートに立つことで、相手は後手に回り、味方が有利になる。相手はまず石川への対処を考えざるを得ないからで、おかげで日本のほかの選手たちはアドバンテージを得られる。石川があらゆるトスを決めるような技を持つことで、ミドルブロッカーも含めた攻撃が多彩になる。日本のミドルは身長こそ大きくはないが機動力に長け、ブロード(移動攻撃)は得点源だ。

 石川がもたらす効果は、石川自身のプレーに表われるだけではない。

 パリ五輪後の石川はキャプテンの重責を担い、自分と対峙することによって習熟を続けている。VNLでも、彼女はリーダーとしてチームをひとつに束ねながら、チームメイトのフォローに回る度量の大きさを見せ、それぞれのよさを引き出していた。

「自分がうまくいかなくても、和田(由紀子)さんがよかったので、だったら自分もそれを助けるってところでした。(自分が)点数を取るっていうのは考えていましたが、たとえ点数を決めきれなくても相手を崩すっていうか、助け合うことにフォーカスしていましたね」

 この2年で、新たに船出をした女子バレー日本代表の活力は漲(みなぎ)りつつある。

 昨年の夏、石川に質問したことがあった。

――(5月から)キャプテンになって、見える景色は変化したのですか?

 彼女はほんの一瞬、考えてから、淀みなく答えた。

「キャプテンとしてやらせてもらうようになったので、"チームに対してどう接していくのか"はいつも考えていますね。(古賀)紗理那さん(パリ五輪までの主将でエース)も、"チームを引っ張っていく"ということをやってくれていたので、学ぶべきものはたくさんありました。ただ、"紗理那さんみたいに"というよりも、自分らしくチームを引っ張っていけたらと思います。誰かと比べるよりも、自分のなかでしっかり整理をして、キャプテン像というか、キャプテンのあり方を考えながら、これからもやっていければなって思っています」

 独自のキャプテン像を見つけた石川は、2年後のロス五輪に向け、着実に新時代を切り拓きつつある。アジア選手権、彼女がコート上で弾むような笑顔を浮かべていたら――。日本は栄冠、すなわちロス五輪出場を勝ち取っているはずだ。

小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

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