「自分たちは自分たちの戦い方を......」

 西田有志(26歳)は、その決意で今回のアジア選手権に挑んでいる。優勝=ロサンゼルス五輪出場権獲得となる大会に対して、彼らしいスタンスだろう。

それは相手の戦いを無視するということではない。"試合に適応しながら、相手や状況に流されない"という流儀か。

 表現はありふれているが、それは彼の人生を通じた作法だけに、言葉以上の意味を持っている――。

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 予選ラウンド3連勝で日本の準々決勝進出が決まったなか、あらためて西田がどのように予選ラウンドを戦ったのか。心の持ちようを訊いたことがあったが、その答えは象徴的だった。

――予選はランキングでかなり下位のチームとの対戦になりますが、どんなメンタルで臨んでいるのでしょう。「油断しない」か「叩き潰す」か?

 西田は、視線を合わせてこう答えた。

「(相手は)奇想天外というか、難しいところはあります。ただ、対戦相手で変わってくるところはあると思うんですが、大もとのようなものは変わらない。自分たちの戦いにフォーカスし、そこに磨きをかけられるか」

 開幕戦のオマーン戦、西田は第3セットまでは髙橋藍や石川祐希とともに得点を重ね、14得点を記録していた。右陣地から出る左腕の大砲感があった。だが4セット目、序盤で着地のアクシデントがあり、足を痛めて交代した。

状態が心配されたが、誰よりも自身の肉体と向き合ってきた男の回復力は際立っており、無理もきくのだろう。

 続くバーレーン戦は先発で出場し、第2セットまでで7得点を記録。最後はサーブがアウトの判定になってベンチに下がったが、1ミリ外側だった。西田本人が「(筋は)見えてきている」と語ったように、こうした1本が入ると一気に突っ走りそうな気配が漂っていた。

 そしてオーストラリア戦。第3セットに入ってチームの勢いがやや停滞するなか、西田は4-4と同点の状況で逆転につながるサービスエースを決めた。ブレ球で相手レシーバーをひざまずかせた。

【計算で導き出された"勝ち筋"】

「サーブも徐々にハマってきました。準々決勝からは、よりいい形になってくると思います。いい感じのピーキングで、よくなりそうな体のフィーリングもありますね。ネガティブになるポイントはいくらでもあると思うんですが、それをポジティブに変換することが大事かなと」

 西田は戦いに対してたくましさを見せる。野生動物のような雄叫びを上げ、本能的な衝動に突き動かされているようにも映る。

しかし、実は帰納的な計算で導き出された"勝ち筋"をトレースしているのだ。

 それは彼自身の人生の投影と言えるかもしれない。

 たとえば昨シーズンのSVリーグでの、チャンピオンシップで優勝するための徹底したピーキングもそのひとつだった。決戦の舞台のために、西田は焦らずに割りきって、最高のパフォーマンスを用意していた。ファイナルでの彼のサーブは鬼気迫るものがあった。

 彼の言う「自分」は筋金入りである。

 西田は、少年時代から西田だった。彼だけの感性と律動で生きていた。それは尖っていたとか、異彩を放っていたというよりも、好奇心だったか。発見にワクワクすると、止まらなかった。高い跳躍力に憧れを持つと、マサイ族の戦士が超人的ジャンプをする姿を見て、「裸足で走っていれば、こうなれる!」と確信し、自ら実行した。

「外を裸足で走っていましたね。

『マサイやアフリカの人は裸足だから強いんや!』って」

 西田はそう言って、当時の自分を懐かしんで顔を綻ばせた。

「でも、裸足で走ると痛いんですよ。ジャンプ力も『上がるわけないやん』って(笑)。当然なんですけど、自分なりに実験をして、『これは違うから、ここは省こう』という作業で質を上げてきた人生というか......」

 仮説を立て、実証する。その繰り返しが膨大なデータとなって、帰納法で出した選択が、彼に個性を与えた。同時に、周りに流されず、実行する意志の強固さもあった。

「『これいいじゃん!』って思うと、すぐ取り入れました。猫やカエルの飛び方も研究しましたね。単純にバネがあるとかじゃなく、どうやって骨盤を使って後脚を伸ばしているのか。俺ら人間の足を当てはめて、『こうやって飛べば』って。猫は丸くなるイメージですが、跳ぶ前に背筋を真っ直ぐにしてから跳ぶんです。人間も真っ直ぐからケツを引いて、もも裏を使って......」

 その探究心こそ、西田を丸ごと覆う要素だろう。

いつだって彼だけの答えがあり、それを裏切らない。たとえば県内トップではない高校を選んだのも、強者を倒す喜びを感じたからだった。問いが浮かべば、それに向き合う。自分のもとになる生き方を大事にできているか。自身の行動に忠実であることが彼の哲学で、そのパーソナリティを形作っているのだ。

 アジア選手権の西田が、爆発的なエネルギーを感じさせるのに、不思議と気負いがない理由は、自然体だからだ。オーストラリア戦はチーム最多の16得点だった。ピークは合いつつある。

 そこで取材の終わりに訊いた。

――西田選手は「自分のもとになる生き方を大事にできたか」を自分に問いかけてきましたが、五輪切符がかかる決勝トーナメントに向け、その真価が問われることになりそうですね。

「半年間、その結果(五輪出場)を求めて戦い続けてきたんで、"ここで"というよりも、半年間どれだけやってきたか、ですかね。自分がどんなコンディションであれ、やり続けることはしてきました。

なので、あとは結果が勝手についてくるかなと思って」

 西田は古(いにしえ)の豪傑のように、不敵に笑った。勝ち筋は見えている。それをトレースするだけだ。

「(決勝トーナメントは)相手のブロックがよくなる、展開が速くなる、サーブのクオリティが上がる、とかはあると思います。けど、それは対相手のことで、自分たちの問題ではない。"自分たちがどうするのか"を持っていれば、常に有利に立てる。どんな状況になっても、逆転する兆しは出るはずなので」

 西田の言う「自分」には気骨がある。

小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

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