荒木絵里香さんインタビュー 後編

(前編:荒木絵里香があらためてアジア選手権を総括 日本女子にとって「全員が弱さや課題と向き合う機会になった」>>)

 アジア選手権を終えた女子日本代表は、「第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)」を戦っている。一方で石川真佑は、今シーズンからプレーするトルコリーグのエジザジュバシュに合流するため、ひと足先にチームから離れた。

そんな石川を含め、新たな道に進む選手たちについて荒木絵里香さんに聞いた。

【女子バレー】荒木絵里香が「すごさ」を感じる、石川真佑がトル...の画像はこちら >>

【アジア全体のレベルはこれから上がっていく】

――アジア選手権はタイが決勝で中国を下して優勝。また、日本と3位決定戦を戦ったイランが4位となりました。

「イランはこの先、非常に怖い相手になると思います。男子イラン代表は世界トップレベルにあり、多くの優れた選手がいます。女子代表もそれに追随するように、あと数年もすればアジア圏でさらに上位に食い込んでくるチームになる予感がしますし、勢力図も変わってくるでしょう。ほかに、フィリピンやベトナムなども着実に力をつけている印象でした。日本としては脅威ですが、試合のレベルという点では楽しみな部分でもあります」

――これから、日本に求められるバレーボールは変わってきますか?

「日本がやるべきバレーボールは、どの国が相手でも変わらないはずです。精度の高さや失点の少ないバレーを突き詰めていかなければ、どんな相手でも戦うのは厳しくなります。アジア全体のレベルが上がることはすごく喜ばしいことですが、そのなかでも日本の根本的な部分はブレないように。男子日本代表はそれを十分証明していると思います。自分たちがどこを見据えるべきか、常に考えておかなければなりません」

――石川真佑選手は出場していませんが、日本代表は現在、アジア競技大会を戦っています。

「メンバーはアジア選手権とは少し変わりますが、大きな国際大会であることに違いはないので、貴重な経験を積んでもらいたいです。

個々の選手があらためて自分の課題にしっかり取り組み、その上でひとつのチームとしてやりきってもらいたいと思います」

【石川真佑へのエール】

――代表活動を終えると、クラブチームでの2026-27シーズンが始まります。佐藤淑乃選手や和田由紀子選手もイタリア・セリエAに挑戦するわけですが、そうした動きは代表の強化にもつながるでしょうか?

「それは本人たち次第です。海外のリーグに行ったからといって、必ずしもうまくなるわけではありませんから。クラブでの貴重なシーズンのなかで、日々の練習はもちろん、1試合、1プレーをどのように積み重ねていくかが大事です。

 ただ、海外のリーグでは常にサイズもレベルも高い選手と対戦することになりますし、環境の違い、試合の入り方や進め方など、日本国内では経験できないことを学べる機会であることは確かです。さらに強く、たくましくなって、日本代表に戻ってきてくれることを期待しています」

――キャプテンの石川選手は、2026-27シーズンはトルコリーグという新天地を選びました。

「アジア選手権を終えた直後の表情からは、『もっとやってやるぞ』という気持ちが伝わってきましたよね。彼女には自分自身の道を、本当に悔いなく突き進んでほしいと心から思います。日本代表でキャプテンを務め、プレッシャーや責任を誰よりも感じていることでしょう。それでも気負いすぎることなく、いいエネルギーに変えてもらいたいです。

 今回、トルコリーグを選択したのも『どうすれば自分がより成長できるかを考えた結果』と聞きました。イタリアリーグのトップクラブにいたにもかかわらず、そうした思いを人生の選択の判断材料にできるところが彼女のすごさです。今まで以上に強くなってくれると願っています」

――荒木さん自身も、現役時代はそうした思いを持っていましたか?

「私は本当にヘタだったので。

『まだまだ伸びる、まだまだうまくなれる』と思いながら競技を続けていました。それが何よりのモチベーションでしたね。日本代表として結果を出すことはもちろんでしたが、ひとりの選手として自分自身を突き詰めていくこと。そういった考えを、今の現役選手たちも忘れずにプレーしてほしいですね」

【SVリーグでプレーする選手たちへの期待】

――10月からは「2026-27大同生命SVリーグ」も始まり、そこで戦う日本代表もいます。クラブシーズンをどのように戦ってもらいたいですか?

「SVリーグは外国籍選手のオンザコートルールも拡充される(同時出場可能な外国籍選手の人数が2名から3名に変更)ことで、競技自体のレベルやスピード感はますます上がってくるでしょう。そうしたレベルのなかでプレーすることが、代表での取り組み方やオリンピックにつながってくるはず。しっかりとアピールしつつ、自分のスキルやテクニックを磨いてほしいです。

 自分が関わるチームのことですが、私がチームコーディネーターを務めるアリーザ愛知の鴫原ひなた選手は、SVリーグでしっかりと活躍したことでアジア選手権のメンバーにも選出されました。そういうチャンスはどの選手にもありますから、それぞれSVリーグで頑張って、それがリーグ全体の盛り上がりにつながるとうれしいです」

――アジア競技大会について、荒木さんは聖火リレーにも参加されましたが、どんな大会になってほしいですか?

「今回、私はアジア競技大会のアスリート委員を務めさせていただいています。日本でこれほど大きな大会が開催されること自体が多くないですし、そこに向かってたくさんの方々が準備を積む様子を見てきました。出場する日本代表選手団のみなさんにとっては、自国で多くの方々に応援していただける機会です。

 そこでもバレーボール日本代表には1試合、1点を大事にして戦ってもらいたいです。

きっと盛り上がるでしょうから、競技の魅力が選手たちのプレーから伝わるように頑張ってもらいたいですし、私もそれを伝えていきたいです」

【プロフィール】

荒木絵里香(あらき・えりか)

1984年8月3日生まれ、岡山県倉敷市出身。身長186cmのミドルブロッカーとして長年にわたり日本代表を支え、4度のオリンピック出場を果たした。
成徳学園高校(現・下北沢成徳)で高校三冠を達成。2003年に東レアローズに入団。2006年頃から日本代表でレギュラーを獲得し、2008年北京五輪に初出場。2012年ロンドン五輪では、主将として日本女子28年ぶりの銅メダル獲得に貢献した。出産後に現役復帰を果たし、2021年東京五輪まで第一線で活躍。引退後はトヨタ車体クインシーズ(現・アリーザ愛知)のスタッフとしてチーム運営に携わり、現在はSVリーグ、日本バレーボール協会の理事も務める。

坂口功将●取材・文 text by Kosuke Sakaguchi

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