9月13日、北九州市。日本はバレーボール男子・アジア選手権決勝でイランを3-0(25-21、26-24、25-23)とストレートで下し、輝かしい金メダルを手にした。

同時に、それはロス五輪出場権獲得を意味していた。終わってみれば、初戦のオマーン戦で1セットを失ったのを除いて、すべてストレート勝ちだった。

 優勝決定直後、14人の選手たちがお互い抱擁を交わし、感情を爆発させた。重苦しいものから解放されたのか、主将の石川祐希の子どものように弾んではしゃぐ姿があった。赤いユニフォームが、コート上で艶やかな花を咲かせたように見えた。

 それはチームがひとつになったことを意味し、まさに日本バレーの強さにつながっていた――。

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 今大会の日本代表はチーム全体でのウォーミングアップ前に各自で行なわれる準備に、それぞれのパーソナリティが出ていた。それはルーティンに近いのだろう。

 たとえば髙橋藍、大塚達宣、富田将馬、山本智大、小川智大の5人は輪になってサッカーのリフティング、ツータッチなどの縛りで、ボールをつなげて楽しんでいた。仲間同士の遊び感覚で、自然と試合仕様になる。セッターの深津英臣、河東祐大のふたりはスタッフのサポートで、オーバーパスの感覚を確かめた。その日のボールを触り、照明の感じ方、あるいは空調の確認などのディテールだ。

 一方、もう半分は個人で準備する選手たちだった。

 石川、宮浦健人はストレッチで体をほぐし、真剣に自身の肉体と向き合っていた。西田有志は黄色いスイング棒やメディシンボールなどの道具を使い、工夫しながら体の感覚を調節する。山内晶大は体幹のメニューが多く、小野寺太志、エバデダン ラリーはチューブを使い、西本圭吾は瞬発系の筋肉を確かめているようだった。

 その光景は、違う個性、違うキャラクターの集まりということだろう。しかし大会を通じ、彼らはひとつに束ねられていた。キャプテンである石川の求心力もあるのだろうが、「個人だけでどうするってなると、日本はひとりだけでは弱いので。チームプレーにフォーカスするっていうか......」と西田が語っているように、個人がチームに結びつく強さは、日本の拠りどころだろう。

【増していった信頼感】

 たとえば、ミドルブロッカーのラリーはセッター陣への信頼をこう語っていた。

「(セッターの)オミさん(深津英臣)は、自分が(スパイクを打つ)いいところで使ってくれますし、そうでないところでは"いい意味で"使わない。それは(河東)祐大さんもそうですが。おかげで毎回、信用してマックスで(スパイクに)入っていけるので、それがクイックの成功率が上がることに生きてきているのかなと思います」

 結果的に、触発されたラリーは攻撃力を開花させた。

彼はこのアジア選手権で、最も株を上げたひとりだ。

「代表に入って、もともと攻撃力に関しては自信があったんです。だから、よくなったというよりも、周りのおかげで『持ち味を出し続けられるようになった』という感じですかね。波なく、いいイメージを持ち続けられているなと」

 バレーの1点は、お互いの関係性で成り立っている。そのなかで、個人の技量が上がったら、その選手は他の選手に力を還元する。そのサイクルがはまったチームは強い。

 たとえば、筆者が深津に「スパイカーが(相手の)ブロック1枚で打てるようになってきました」と問いかけると、彼の答えは「それは1本目のパスの精度のおかげです」だった。判断に優位性を与えてくれるリベロの山本、小川、あるいは髙橋のレセプションやディグを称賛していた。さらに、ラリーや小野寺がおとりになることも、得点に絡んでいた。

 最後のパスを託されたスパイカーには重圧がかかるが、日本にはそこで逃げるスパイカーはいない。

「ブロックが1枚だったらしっかり決めるというのはありますけど、2枚つかれても結局は決めないといけないんで、そこはどっちみち同じですね(笑)」(西田)

「自分はどんな選手とも合うので、そこは問題なくて、最後の1点を決めきるだけです」(髙橋)

 託されたパスは、どれも同じ重みがある。それを受け止められる選手に、エースの称号が与えられる。

 特筆すべきは、攻撃に特化したオポジットの西田でさえ、「スパイクさえ決めればいい」とディフェンスを放棄していない点だろう。たとえば韓国戦、彼のディグの本数はチームトップだった。日本がお家芸とするブロックディフェンスを強固にするため、積極的にディフェンスに参加していた。これは海外のオポジットと一線を画す点だ。

 連係の大事さの論理で言えば、敵を分断することは自ずと勝機につながる。

「相手のエースにスパイクを打たせたくなかったので、そのシチュエーションを作るためにいろんなサーブを打ちました」

 深津は韓国戦後にそう語っていたが、セッターとして連係の回路を誰よりも心得ている。

「今シーズン、VNL(ネーションズリーグ)で日本が強い時は『誰がどこに打ってくるかわからない』という状況になっていました。アジア選手権でもそうやって、状態がいい選手に打ってもらって......。自分としては、どんな状況でもスパイカーが打ちやすいトスを上げるだけですね」

 今大会の総得点は、髙橋がチーム最多96点だったが、西田も77点、石川も71点とそれを追い、ミドルの小野寺、ラリーも30点以上を決めた。途中から出場した大塚、富田、宮浦、西本、山内も要所で存在感があった。ひとりの選手に依存しない、多彩な攻撃を実現。ちなみに決勝ラウンドの各試合の最多得点者は、インド戦は髙橋、韓国戦は石川、イラン戦は西田と日替わりだった。

 パスがつながって、得点が決まるシーンはカタルシスがあった。想いをつないだプレーの集積と言えるだろうか。イラン戦のチャンピオンシップポイントで石川が二度続けて深津からトスを託され、その合間には山本の神がかったディグもあって、最後はねじ込むような一撃を決めた。それは実に日本らしい、絆を感じさせるフィナーレだった。

 次は、ロス五輪で祝う宴のための準備となる。

小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

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