福田正博 フットボール原論

■欧州サッカーの新シーズンが始まり、各チームで日本人選手たちが奮闘している。各選手のシーズン序盤のプレーぶりを、福田正博氏に評価してもらった。

【欧州サッカー】鈴木彩艶ら5大リーグで奮闘の日本人 福田正博...の画像はこちら >>

【注目されている鈴木彩艶】

 イングランドのプレミアリーグ、スペインのラ・リーガ、ドイツのブンデスリーガなど、欧州サッカーの5大リーグが開幕し、日本人選手たちも躍動している。ただ、昨シーズン、北中米W杯を経て、多くの日本人選手がステップアップ移籍を果たすのではと予想されていたが、蓋を明けてみれば望んだような形で新チームに移籍を遂げたのは、鈴木彩艶くらいだったのではないか。

 移籍は選手の力量だけで決まるものではなく、各クラブの同じポジションの選手などとの兼ね合いも強く影響する。そうした側面を改めて実感した。

 鈴木はイタリア・セリエAのパルマからプレミアリーグのアストン・ヴィラに移籍した。昨シーズンの順位で比べればパルマはリーグ13位、アストン・ヴィラはリーグ4位で、今季はチャンピオンズリーグ(CL)に出場している。

 移籍決定後のチーム合流が間もなかった開幕戦こそ出場しなかったが、第2節のアーセナル戦でプレミアリーグデビューしてからは、レギュラーでゴールマウスを守っている。CLにも第1節のクラブ・ブルッヘ戦でスタメン出場して、3-2の勝利に貢献した。

 目を見張るのがロングフィードの精度の高さだ。鈴木からのパスがピンポイントで前線につながり、チャンスが生まれるシーンが何度もある。持ち味を新天地でしっかり発揮できているのは頼もしい限りだ。ただ、ファインセーブでゴールを防ぐシーンがあるものの、チームとして失点の多さは気になるところだ。チーム合流が開幕直前だった影響もあるのだろうが、試合を重ねながらDF陣との連係を高めて、ゴールを防ぐ場面でも鈴木らしさを見せてもらいたい。

【上田綺世は結果にこだわってほしい】

 CL組では、上田綺世も移籍期間の終了間際にオランダ・エールディビジのフェイエノールトからフランス・リーグアンのリールへの移籍がまとまった。

 昨季はエールディビジの得点王になり、今季はプレミアリーグへの移籍を視野に入れていたようだが思うように移籍がまとまらず、フェイエノールトで迎えた新シーズンで4戦3得点。移籍が決まったのは第4節で3試合連続得点を果たした2日後だった。エールディビジでしっかり結果を出したことで、最後に道が開けたのかもしれない。

 リールでは合流初戦となったトゥールーズ戦に途中出場すると、値千金の決勝ゴールを決めた。攻撃的なポジション、特にストライカーにとって、ゴールという目に見える結果をすぐに出せたのは大きかった。リーグアンデビュー戦の5日後に行なわれたCLのベティス戦では先発起用され、CL初ゴールを決めた。続くリーグアンでもスタメンで起用されている。

 ただ、結果がすべてだ。最初にゴールを決めてチャンスをモノにしたからといって、いつまでもスタメン起用が保証されるわけではない。得点を積み重ねていかなければ、すぐにポジションを失ってしまう厳しい世界だ。それだけに結果にこだわってプレーしてもらいたい。

 それにしても上田は、大器晩成型なのだとつくづく思う。

大学時代からそのポテンシャルが注目されていたが、鹿島アントラーズ時代や2022年のカタールW杯あたりまでは、上田が活躍しても「もっとやれるはずなのに」と彼への期待とのギャップばかりに目が行った。

 だが、いまは期待のはるか上を行っている。まだまだ成長の余地を感じさせるだけに、リーグアンとCLでしっかりと結果を残してもらいたい。それができればさらなるステップアップへの扉は開くはずだ。

【心配な三笘薫】

 プレミアリーグはいま、多くの日本人選手たちが目指している舞台だ。昨季は遠藤航(リバプール)、三笘薫(ブライトン)、鎌田大地(クリスタル・パレス)、田中碧(リーズ)の4選手だけだったが、今シーズンから先述の鈴木、前田大然(イプスウィッチ)、守田英正(ハル・シティ)、冨安健洋(クリスタル・パレス)、そして昨シーズンにコベントリーの昇格に貢献した坂元達裕もプレミアリーグでプレーをしている。

 鎌田は開幕から4戦連続でスタメンに名を連ね、充実の時を迎えている。ボールを持ったところに目が行きがちだが、鎌田の場合は状況判断、ポジショニングなどで試合をコントロールし、チームに不可欠な存在になっている。チームメイトになった冨安健洋はコンディションを懸念されたが、チームに貢献するプレーを見せている。ケガに見舞われたが、かつてはアーセナルにおいてプレミアリーグの高いレベルでプレーしていた選手だ。それだけに、シーズンを進めながらコンディション面での不安を取り除き、フルタイムで躍動する姿が見られるようになってくれたらと思う。

 心配なのは三笘だ。ピッチに立てばプレミアリーグでも圧倒的な違いを出すが、この数シーズンは故障で戦線離脱をする期間が増えている。

アーセナル時代の冨安もそうだが、プレミアリーグの高い強度で試合に出続けるのは、肉体への負担が想像以上に高いのだろう。

 もともと日本人選手は海外のトップ選手に比べて身体の線が細く、厚みがないと言われる。ぶつかる瞬間に力を入れたり、タイミングをずらしたりする術をそれぞれ持っているとはいえ、シーズンを通じて蓄積されていくダメージによって、身体が悲鳴をあげている部分はあるだろう。5大リーグのなかでも頭ひとつ強度が高いプレミアリーグだけに、なおさら故障のリスクをはらんでいる。

 三笘がプレミアリーグのピッチに戻る日を心待ちにしているが、彼の肉体への負担が続くようなら、次のタイミングで違うリーグに移るのも検討していいのではないかと思う。サッカーファンが見たいのは、三笘がピッチで相手守備陣を切り裂く姿。プレミアリーグより負荷の軽いリーグでプレーしてもいいのではないか。

【ラ・リーガのふたりは苦しい状況】

 ラ・リーガの久保建英(レアル・ソシエダ)は正念場のシーズンを迎えている。北中米W杯で負ったケガの影響もあって、今季の開幕戦ではヒザにテーピングがあって心配した。リーグ戦が進むなかでそれはなくなったが、久保のパフォーマンスが上がらない。技術の高さで存在感を示すシーンはあるが、試合を通じて久保の存在が消えている時間が長かった。

 開幕からスタメン出場したものの、3試合目は途中出場、4試合目はスタメン復帰したが、続く5試合目は出場機会がなく、6試合目は途中出場になった。

攻撃的なポジションの選手として貪欲にゴールを狙って現状を打破してもらいたいところだ。

 昨季はリーグ戦24試合で2得点と寂しい結果に終わっているだけに、ここから巻き返して、レアル・ソシエダ1年目に記録した9得点という1シーズンでの自身最多ゴール数を更新するような活躍を期待している。

 そのラ・リーガでは今季、19歳の佐藤龍之介がFC東京からバレンシアに移籍した。開幕から3戦連続してスタメンに名を連ね、第4節のバルセロナ戦こそ途中出場だったが、第5節のセビージャ戦ではふたたびスタメンに復帰。攻撃ではたびたび存在感を示してきた。

 だが、チームは開幕から1分け4敗で、佐藤を起用してきたカルロス・コルベラン前監督が解任。第6節のアラベス戦からオスカル・サンチェス暫定が指揮をとり、1-0で今季初勝利をあげたものの、佐藤の出番はなかった。

 佐藤を外したから勝ったわけではないだろうが、勝ったチームはすぐにいじらないのが勝負の常道だ。もしかすると佐藤は数試合ベンチからゲームを見る状況が続くかもしれない。だが、見て気づくこともある。その気づきを次のスタメン出場の機会に生かし、初ゴールへとつなげてもらいたい。

 他の選手たちもそれぞれのチームで奮闘している。

大型移籍が期待されながら残留することになった佐野海舟(マインツ)は今季も中盤の底で違いを見せているし、リーズでは昨季は評価を高められなかった田中碧が、好プレーでチームの信頼を勝ち取りつつある。5大リーグでプレーする日本選手たちがどんなシーズンを送るのか、楽しみにしている。

text by Ichiro Tsugane

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