従業員から退職の申し出があったとき、円滑に事務処理を進めるには退職手続きの基本的な流れを押さえておくことが大切です。
従業員が退職する際は、保険や税金などさまざまな手続きを行う必要があります。
この記事では、従業員の退職手続きの流れや必要書類、注意点などを解説します。
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退職手続きの基本的な流れ
従業員の退職手続きを滞りなく進めるには、基本的な流れを理解しておくことが大事です。時系列で取り組むべきことをまとめると、次のような流れとなります。
上記のように、従業員が退職する際はさまざまな必要な手続きが必要です。手続きをスムーズに行わなければ、退職者が不満を抱く原因にもなるため、会社側が必要な取り組みをきちんと押さえておくことが重要です。
また、健康保険証の返還など、退職者側の協力が必要な部分もあります。しっかりとコミュニケーションをとって、手続きに問題が起こらないように注意しましょう。
従業員の退職時に必要な保険・税金の手続き
従業員が退職する場合、単に退職届を受理すればよいというものではありません。保険や税金に関する事務処理をひとつずつ行い、従業員が円満に退職できる環境を整えてあげましょう。
ここでは、退職手続きを行うタイミングや各種手続きのポイントなどを解説します。
退職手続きを行うタイミング
退職手続きは従業員が退職意思を示し、退職届を受理することで始まります。民法では従業員が退職をする14日前までに意思表示をすればよいと定められていますが、実務的な部分もあるため、ある程度余裕を持って取り組むほうが無難とされています。
何日前までに退職の意思表示をするかは就業規則などによって定められているケースがほとんどです。業務の引き継ぎや事務処理を行うために一定の期間が必要な場合が多いため、退職する1ヶ月前までに申し出ることをルール化しているケースが一般的といえます。
期間の定めがある雇用契約を締結している場合を除き、民法の規定どおりに進めるのであれば最短14日前から退職手続きを行うことになります。必要な事務手続きを把握したうえで、円滑に進められるよう準備しておくことが理想です。
雇用保険の資格喪失手続き
従業員が退職する場合、会社側は雇用保険の資格喪失手続きを行う必要があります。管轄するハローワーク(公共職業安定所)に対して、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」の2つの書類を提出しなければなりません。
従業員が退職をした翌々日から数えて、10日以内に提出することが定められています。厚生労働省のホームページには、雇用保険の資格喪失手続きに関する詳細な解説が掲載されているので参考にしてみましょう。書類のフォーマットなども厚生労働省のホームページからダウンロードできるため、事前に入手しておくと手続きをスムーズに進行できます。
社会保険の資格喪失手続き
健康保険と厚生年金に関する社会保険の手続きは、事業所を管轄する日本年金機構もしくは健康保険組合を通じて行います。従業員が退職した日から数えて5日以内に、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出する必要があります。
健康保険と厚生年金は、原則として退職日の翌日が資格喪失日となり、扶養家族分も含めて保険証をすべて回収して返却しなければなりません。なお、社会保険料は資格喪失日の前月分まで発生するうえ、月末の退職だと翌月の社会保険料も発生するため注意が必要です。
社会保険の手続きの詳細や書類のフォーマットは、日本年金機構のホームページで確認できます。
所得税に関する手続き
所得税に関することで会社側が行うものとしては、源泉徴収票の発行が挙げられます。源泉徴収票は通常、年末調整の折に発行する書類ですが、退職者がいる場合はその年の1月1日から最後の給与支給(退職金は含まない)までの内容を記載した源泉徴収票を退職日から数えて1ヶ月以内に発行し、本人に渡す必要があります。
源泉徴収票を発行するタイミングでは、すでに従業員が退職しているため、直接手渡すことは難しいかもしれません。その際は、給与明細書と同封する形で源泉徴収票を郵送するケースが多い傾向にあります。
退職時の源泉徴収票の作成手続きについては、国税庁のホームページを参考にしてみてください。
住民税に関する手続き
従業員から毎月預かっていた住民税についても、退職手続きのひとつとして事務処理を行う必要があります。具体的な手続きについては、退職者がすぐに転職する場合とそうではない場合で違いがあるため気をつけましょう。
退職者の転職先がすでに決まっている場合は、新たな就業先の会社が「特別徴収継続の届出」を提出することになります。そのため、退職者が新しい就業先に提出する「給与支払報告」と「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の2つの書類を渡しましょう。
一方で、退職者の転職先が決まっていない場合は、退職後は退職者が自ら住民税を納付する形となります。従業員として在籍している間は、基本的に会社側が特別徴収という形で住民税を預かっていますが、従業員が退職すると特別徴収が行えなくなります。
普通徴収という方式に切り替える必要があるため、会社側は「給与支払報告」と「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の2つの書類を市区町村に提出しなければなりません。双方の書類の届出を行うことで、退職者に対して住民税の通知書が送られることになります。
なお、住民税は6月を基準として新たな年度に切り替わるため、退職した月によって取り扱いが異なります。
退職手続きに必要な書類
従業員の退職手続きを行うには、必要書類についても確認しておく必要があります。会社側から退職者に渡す書類だけでなく、退職者から提出してもらうものもあるため気をつけましょう。
ここでは、どのような書類が必要であるかを解説します。
会社から退職者に渡す書類
会社側から退職者に渡す書類は以下の5つです。
- ・離職票
- ・雇用保険被保険者証
- ・年金手帳
- ・源泉徴収票
- ・給与支払報告、特別徴収に係る給与所得者異動届出書
離職票の正式名称は雇用保険被保険者離職票です。退職者が失業手当の給付などを受ける際に必要な書類であるため必ず渡しましょう。
ただし、転職先がすでに決まっている場合は不要であるため、退職者に離職票が必要であるかを確認しておくことが大切です。雇用保険被保険者証は退職者が転職先に提出をしたり、教育訓練給付金を受給したりする際に必要な書類です。
また、年金手帳を会社で預かっている場合は速やかに返却しましょう。源泉徴収票や給与支払報告、特別徴収に係る給与所得者異動届出書などもきちんと発行して、渡すようにしてください。
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退職者から会社に提出してもらう書類
退職者のほうから会社側に提出してもらうものとして以下の5つが挙げられます。
- ・退職届
- ・健康保険証
- ・名刺
- ・会社の備品
- ・書類やデータ
退職の意思は口頭でも成立するものですが、後からトラブルが起こるのを防ぐために、退職届の形で書類を受け取っておきましょう。
契約社員など契約期間が満了したことによる退職の場合は、退職届を提出してもらう必要はありません。また、会社都合で解雇する場合は、会社側から退職者に対して解雇通知書(解雇予告通知書)を渡す必要があります。
健康保険証は退職日の翌日に無効なものとなるため、返却してもらいましょう。名刺については本人分だけでなく、取引先などから受け取った名刺も含めてすべて返却してもらいます。
そして、会社が貸し出しているパソコンや携帯電話、制服なども返してもらう必要があります。返却物のリストを作成して渡しておくと、漏れが生じにくくなるでしょう。さらに、退職者が持っている書類やデータは機密情報が記載されているものも多いため、すべて回収するか破棄してもらうか指示を出しておくことが大切です。
スムーズに退職手続きを進めるための注意点
従業員の退職手続きをスムーズに進めるには、いくつか注意しておきたい点があります。ここでは、3つの注意点について解説します。
返却が必要な物品の取り扱いについて
退職者から会社側に返却してもらう物品として、各種備品や名刺、社員証などが挙げられます。返却が必要なものは基本的に、直接手渡しで行うほうが間違いはないでしょう。
すでに従業員が退職してしまっている場合は、郵送でも返却を受け付けるなどして柔軟に対応することが大切です。返却リストを作成して渡したうえで、返却期限をしっかり設けておきましょう。
保険証の返却について
健康保険証については会社側が預かったものを日本年金機構もしくは健康保険組合に対して、速やかに返却する必要があります。退職者に扶養家族がいる場合は、家族全員分を返却してもらいましょう。
直接手渡しで受け取るのが間違いはないため、退職日に返却してもらうのが無難です。どうしても、退職日に受け取れないときは郵送で送ってもらうようにしましょう。
電子申請も活用してみよう
退職手続きは会社側が行政機関などに提出する書類が多いため、手続きの負担を減らすには電子申請を活用してみることも有効です。退職手続きの事務処理を行う担当者の業務負担を軽減させるために、労務管理システムを整備することも重要だといえます。
労務管理システムは退職手続きだけでなく、勤怠管理や給与計算など幅広い用途で利用可能です。従業員数が多い会社ほど事務処理の負担を軽減し、金額の計算などの間違いを防ぐことができます。
さらに、労務管理システムで作成した書類をe-GOVで利用して、電子申請を行うことも可能です。行政機関に出向く手間を省けるため、労務管理にまつわるさまざまな手続きの負担を軽減できます。
退職手続きに関するQ&A
退職手続きを滞りなく進めるには、気になる点をあらかじめ把握しておくことが大切です。退職手続きに関するよくある質問を以下で見ていきましょう。
退職手続きが遅れるとどうなる?
退職手続きが遅れてしまうことで、退職者に対してさまざまな不都合が生じます。転職先に提出する書類が用意できなかったり、失業給付や教育訓練給付金を受給するための手続きを行えなかったりする場合が考えられるため注意が必要です。
また、会社側としても健康保険証の返却などで支障が出てきます。会社と退職者の双方にとってデメリットしかないため、定められた期日までに速やかに退職手続きを済ませましょう。
高齢者の退職手続きの注意点は?
退職者が高齢者である場合でも、通常の退職者と同様に雇用保険や社会保険に関する手続きを行います。再就職をする場合は特に問題ありませんが、再就職をしない場合などには保険の手続きについて丁寧に案内を行う必要があります。
また、退職者が59歳以上の場合は高年齢雇用継続給付金の給付額を計算するために、離職票を必ず発行する必要があるため注意してください。
リファレンスチェックとは?
退職者の転職先が外資系企業である場合は、リファレンスチェックが行われることが少なくありません。リファレンスチェックとは、転職先の会社から採用予定者についての問い合わせを意味します。
経歴照会などと呼ばれることがあり、電話やメールだけでなく、担当者同士が直接会ってやりとりをすることもあります。
勤務状況や人柄などについて問い合わせが行われるため、あらかじめ必要な資料を準備しておくとスムーズに手続きを進行可能です。
(参考:『【弁護士監修】リファレンスチェックとは?違法にならないための注意点とやり方について解説』)
まとめ
従業員の退職手続きは、単に退職届を受け取るだけでは完了しません。保険や税金に関する手続きも必要であり、従業員に貸与していた備品や名刺などの回収などいくつか必要な事務処理を並行して行う必要があります。
退職手続きが遅れてしまうと退職者に不利益が生じるだけでなく、会社側にとってもマイナスとなってしまうため、基本的な流れを押さえたうえで円滑に手続きを行うことが大切です。
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(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)

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