「名古屋テレビ塔」所有権を1本化、新呼称で重文指定に|産業遺産のM&A

名古屋テレビ塔は名古屋の中心街、中区栄の久屋大通公園にそびえ立つ。高さは約180メートルあり、1954(昭和29)年の竣工・開業当時は日本では群を抜く高層電波塔であった。

高さ333メートルの東京タワーの竣工は1958年(昭和33年)12月。それまでは日本一の高さを誇っていたのはもちろん、東洋一の高さであり、「東洋のエッフェル塔」とも呼ばれた。

経営と会社・資産の所有は別? 名古屋テレビ塔(株)とは別の塔所有者

名古屋テレビ塔は、名古屋テレビ塔(株)という第3セクターが保有・運営している。同社は1953年7月に設立され、名古屋テレビ塔の管理・運営のほか、イベントの開催や土産品などの販売を行ってきた。

ここで「管理・運営」と述べたが、「所有」はどうだったのか。第3セクターである以上、名古屋テレビ塔(株)のほかに塔の所有者がいた。

話は建設当時にさかのぼる。名古屋テレビ塔の建設には「ダルマ式構造」という工法が使われた。将来、直下で地下鉄工事が行われることを想定し、4本の塔脚を末広がりにして地中深くに埋め込まず、鉄筋コンクリートで結合して重心を下げる工法だ。建設当時は今のような工事用機材も少なく、基礎の土堀りもスコップやツルハシを使い、鉄骨も人力で揚げるなど多くが“手作業”での工事だったという。

この建設の費用は、愛知県と名古屋市がそれぞれ2000万円を出資し、名古屋鉄道などの名古屋財界企業が合わせて4000万円を出資したという。また、NHKも4000万円相当を現物出資し、中部日本放送(CBC)も同額の現物出資を行った。現物出資とは放送機材として鉄塔を購入したということだった。

つまり、建設当時から名古屋テレビ塔の所有権は、愛知県や名古屋市にあると同時に、現物出資したNHKやCBCにもあった。4つの脚から延びる鉄塔の1本1本で所有権者が異なるというわけではなく、展望台より上はNHK、下はCBCといった持分になっていたようだ。

デジタル放送の荒波に揉まれて

名古屋テレビ塔は竣工の翌日に開業して電波の発射を始め、愛知県内のテレビ局は1950年代後半から1960年代初頭にかけて名古屋テレビ塔をフル活用した。NHK名古屋放送局、中部日本放送、東海テレビ放送、名古屋テレビ放送(メーテレ)の4局である。当時は地上アナログ放送の時期であり、テレビが「新・三種の神器、3C」といわれた時代だ。名古屋テレビ塔(株)としても、十分に経営は成り立っていたと想像できる。

ところが、50年ほど経過してテレビ塔としては大きな“転機”が訪れる。地上アナログ放送がデジタル放送に変わったのだ。地上デジタルテレビ放送はNHK・民放局ともに瀬戸市に新たに建設した瀬戸デジタルタワーを集約電波塔として利用した。

東京タワーと違ってラジオ局や業務無線のアンテナは設置されておらず、地上デジタルテレビ放送のアンテナを設置するには強度不足が指摘されていた名古屋テレビ塔。その役割は、終わったかに見えた。年間収入の3割をアンテナ設置料から得ていたとされるが、その安定した売上がなくなれば、経営的には相当な痛手だ。映画上では過去にゴジラやキングギドラなどによって破壊されてきたが、その解体決定を愛知県民・名古屋市民に委ねる状態にまでなっていた。

2011年7月、アナログ放送の終了に伴い名古屋テレビ塔は停波し、電波塔の役割をいったん終えた。その後は2012年4月からスマートフォン向けマルチメディア放送(NOTTV)の電波が送信され、再び電波塔としての役割を果たすことになったが、NOTTVも2016年6月に経営破綻し、放送を終了・停波する。名古屋テレビ塔にとって、NOTTVは“あだ花”だった。テレビ塔の役割も終焉を迎えた。

所有権を名古屋テレビ塔(株)に一本化、再起を図る

その頃(2013年)、名古屋テレビ塔(株)は中部日本放送とNHKが25%ずつ持つ塔の区分所有権を無償で譲り受け、同社に一本化する方針を固めた。地上アナログ放送の終了で収入源が減るなか、10億円規模の免震改修費用など維持費用の一部について、大株主である愛知県や名古屋市などに拠出要請することになる。その過程で所有権の一本化を図り、維持・改修費用を捻出しやすくしたのだろう。

現在、名古屋テレビ塔(株)が塔の所有権を単独で持ち、同社が行政などの支援を受けて観光タワーとしての運営を行っている。株主としては、愛知県と名古屋市のほか、名古屋鉄道、三菱UFJ銀行、大丸松坂屋百貨店、中部電力、近畿日本鉄道、トヨタ自動車、東海テレビ放送、中部日本放送など東海の民間大手が共同出資している。

国の登録有形文化財から重要文化財に、命名権も売却

電波塔の役割が終わった名古屋テレビ塔は、“観光タワー”として再起を図った。2013年7月に会社創立60周年を迎え、2014年6月には「新ライティング・煌」の運用を開始。ライトアップをパワーアップさせ、塔の中心部分に1万球以上のLEDが設置され、ダイヤモンドの輝きをイメージしたライティングを行った。

そして2019年1月より休業に入り、2020年9月、耐震改修工事を完了する。

全面リニューアルし、グランドオープンとした。建設当時の外観はそのままに、塔内を一新し、テレビ塔の意匠を活かしたホテルも誕生した。

東洋一といわれた名古屋テレビ塔は、名古屋のシンボルと呼ばれるにふさわしい歴史と風格を備えていた。2005年7月には「国土の景観に寄与している」として国の登録有形文化財に登録され、2022年12月には国の重要文化財に指定された。テレビ塔の重文指定は初めてのことだという。

また、施設命名権(ネーミングライツ)を株主の中部電力に売却し、2021年5月からは呼称を「中部電力 MIRAI TOWER」としている。ネーミングライツの期間は3年間だが、今も中部電力 MIRAI TOWERの名称は変わらない。

「名古屋のテレビ塔」「栄のテレビ塔」、単に「テレビ塔」のほうが馴染みのある人も多いが、名古屋テレビ塔は運営主体の社名に残るのみで、名実ともに、「テレビ塔」から脱却した。

文・菱田秀則(ライター)

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