自動車部品中堅のNITTAN<6493>がエンジン部品関連のM&Aに向けアクセルを踏み込む。
EV(電気自動車)の普及が進む一方で、エンジンを搭載する車も残るとの見通しのもと、内燃機関部品企業を取り込み、主力のエンジンバルブ市場でシェア拡大を狙う。
M&A投資には100億円を充てる方針で、既存事業の収益改善で創出する資金を事業ポートフォリオ(事業構成)の変革につなげる。
内燃機関部品を成長領域に
NITTANは、今後EVが増え、エンジン搭載車は減少するものの、長期的には一定規模で残るとみる。
2040年時点でもエンジン搭載車は一定規模で残り、排ガス規制への対応やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車の普及に伴い、エンジンバルブに求められる性能が高まると予測する。
同社の手がける製品は主力の小型エンジンバルブをはじめ、舶用のエンジンバルブや精密鍛造歯車などで、いずれも内燃機関や周辺部品との関係が深い。
このため、M&A戦略では、EV関連部品への転換よりも、内燃機関部品の強化に重点を置くことにした。
中空バルブとインド進出が強み
NITTANは、乗用車エンジンバルブで国内26%、グローバル11%のシェアを持つ。
自社の強みとして、燃費向上に伴って高まる燃焼温度に対応できる中空バルブ技術と、インドなど成長市場での生産・供給体制を挙げる。
中空バルブは軸や傘の内部を空洞にしたエンジンバルブで、耐久性を確保しながら燃費向上に対応できる。
またインドでは、現地で製造する部品の領域を広げ、安定的に稼ぐ収益基盤の構築を進める。
2026年3月期の売上高は516億7600万円で、このうち小型エンジンバルブが80%を占めた。
このほか、舶用部品が10%、歯車が4%、工作機械や可変動弁などのその他が6%となっている。
M&Aも、主力のエンジンバルブを起点に、内燃機関部品の事業領域を広げる手段と位置付ける。
既存事業との相乗効果が見込める自動車部品分野で事業を広げる方針を示しており、「エンジンバルブ市場におけるシェア拡大」と「エンジンバルブ以外の自動車部品でのシナジーの追求」の二つをM&Aの取り組みの方向性として挙げる。
「内燃機関を信じ、インド成長投資と内燃機関部品企業のM&Aを進め、成長基盤を築く」としており、2027年3月期~2029年3月期の3年間に、M&Aに100億円を投じる計画だ。
資金調達では、既存事業の収益性改善による営業キャッシュフロー創出力の最大化に加え、有利子負債での調達や政策保有株の売却も検討する。
恵那金属、新和精密が布石に
NITTANはすでに、M&Aを通じて内燃機関部品の事業領域を広げている。
2024年には、鋳物、鋳鋼、鋳鉄切削加工や、アルミダイカスト切削加工、金属部品表面処理などを手がける恵那金属製作所を子会社化した。
同社は、難切削材を用いた耐熱鋳鋼タービンハウジング(エンジンの出力を高める過給機向けの部品)で世界トップクラスの加工能力を有しているという。
また、2026年4月には、バルブリフター(エンジン内の吸気バルブと排気バルブを開閉するカムシャフトの動きをバルブに伝える部品)を製造販売する韓国の新和精密を子会社化した。
同社は北米やインドでの販売拡大を進めており、NITTANは同社の子会社化によって、インド子会社のニッタンインディアテックとの連携強化や、インド事業の継続的な拡大を見込む。
NITTANは今後、M&Aを活用した事業ポートフォリオの変革と成長に注力する。
こうした取り組みで、2029年3月期には売上高630億円、営業利益58億円を目指す。
同社は、M&A投資の未使用分について、株主還元への配分も検討するとしている。
100億円の投資枠を着実に具体化できるかが、今後の成長を左右することになる。
文:M&A Online記者 松本亮一
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