停滞していた居酒屋の復調が鮮明になってきました。コロナ禍で宴会需要が急速に失われたことで、多くの企業が不採算店の閉鎖を実施しました。
市場では、飲み需要が再び回復軌道に乗り、客単価が上がったことで居酒屋企業の稼ぐ力が高まっています。
一方、コロナ禍で飲食以外の事業に活路を求めた企業が苦戦する姿も散見され、明暗が分かれました。

鳥貴族、串カツ田中、ワタミが好調の一方で、資金繰りに苦しむ「...の画像はこちら >>

宴会依存から脱却、好調を維持

居酒屋「鳥貴族」を展開するエターナルホスピタリティグループは、2025年8月~2026年4月までの売上高が13%増加。営業利益も17%近く伸びております。同利益率は6%。コロナ前の2019年7月期は4%に届いていませんでした。鳥貴族は断続的に価格改定を実施しましたが、客数は減少せずに客単価が上昇。収益性を高める結果となりました。

コロナ禍は宴会離れを加速させましたが、鳥貴族はもともと宴会客だけに依存することなく、幅広いニーズに適用していました。居酒屋企業の中でもコロナの影響が少なく、立ち直りが早かった企業の一つです。

2023年1月に「やきとり大吉」のダイキチシステムを買収。さらに同系列は現在、海外出店を急ピッチで進めます。2026年4月にベトナム店を出店(計画中)。
すでに中国に2店舗を展開済みです。

エターナルホスピタリティグループは2026年6月5日にアメリカ市場の事業進出を目的として子会社を設立しました。アメリカには2025年2月に「TORIKIZOKU」の1号店を出店済み。次なる成長を目指し、海外展開に力を注ぐ方針にあります。

「串カツ田中」のユニシアホールディングスも好調。2025年11月期は25%の増収、40%近い営業増益でした。足元では「串カツ田中」の出店を強化しつつ、多業態化を図る狙いなのです。2023年8月に「京都天ぷら天のめし」をオープンすると、派生業態として「京都すき焼き天のめし」、「京都和牛とんかつ天のめし」を展開。同店のカジュアル路線として、一人すき焼き・しゃぶしゃぶの「富之上」もオープンしました。居酒屋以外の市場へと進出し、成長を促進しています。

サブウェイ事業は順調の一途

ワタミの2026年3月期における国内外食事業の売上高は10%近く増加、セグメント利益は40%以上も増えました。ワタミはすでに焼肉や寿司、ファーストフードなど他業態化を試みる方針を採ります。とはいえ、居酒屋業態だけに絞っても増収増益でした。
「ミライザカ」や「鳥メロ」などの主力ブランドの売上が堅調で、居酒屋業態は客数が前年を上回る形です。

今後の外食事業の成長を促進しそうなのが、買収した「サブウェイ」。2024年は18店舗、2025年は38店舗を出店しました。デジタル化によって顧客の注文負担を軽減。既存店の売上は67カ月連続で前年を上回りました。顧客の待ち時間の削減や接客態度の向上を図るクレーム軽減策にも取り組んでおり、取り組みの成果も着実に表れております。ブランドをブラッシュアップし、成長の潜在性を高めました。

異業種で苦戦し、泣きっ面に蜂状態

多くの居酒屋企業が好調な裏で、もちろん苦戦する企業もあります。「昭和食堂」や「えびすや」などを展開する海帆が一例だ。

海帆は取引先に対する債務約1億900万円に対して名古屋地方裁判所から差押命令を受けたほか、社会保険料の滞納で日本年金機構からも資産の差押を受けていたことが明らかになりました。恒常的な赤字に陥っており、営業キャッシュフローもマイナスの状態が継続しております。つまり、資金調達によって企業の存続を図っているのです。

飲食事業でも苦戦をしているものの、損失が大きいのは再生可能エネルギー事業とメディカル事業。
海帆はコロナ禍による居酒屋市場の縮小を受け、太陽光発電やバイオマス発電を柱とする新規事業を開始。2024年8月にはM&Aによって美容クリニックの集客・経営支援を手がけるメディカル事業に手を出します。しかし、これらともに利益が出ていません。海帆は資金繰りにも窮しており、特に苦戦している側と言えるでしょう。

リスクのある食材をウリにする難しさ

ゼネラル・オイスターも苦戦を強いられます。ゼネラル・オイスターは「エイス シー オイスターバー」などのブランドで牡蠣にこだわった店を展開する企業です。2026年3月期は1億円近い営業赤字を出しました。

同社も2024年1月から再生可能エネルギー事業を開始しました。新ビジネスは主力を誇る店舗事業よりも利益率は高く、業績に寄与しているのは間違いありません。しかし、ゼネラル・オイスターはオイスターバーの運営、牡蠣の卸売、食材の加工などを手がけており、牡蠣と食を軸としたビジネスモデルを得意としています。再生可能エネルギー事業は専門領域から外れており、主力を誇る食を取り扱う事業への経営資源の集中を妨げているようにも見えます。

ただし、2025年初頭から夏場にかけ、ノロウイルスが蔓延。
安全基準を満たした牡蠣の調達ができず、店舗事業や卸売事業で機会損失が見られる状態です。牡蠣に依存しすぎるリスクもあるのです。選択と集中か、リスク分散か。中期的に確かな答えが出るのではないでしょうか。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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