新卒から18年半、テレビ朝日のアナウンサーとして、報道、スポーツ、バラエティなど多岐にわたる番組を担当してきた大木優紀さん(45歳)。

 40歳を超えてから、スタートアップ企業「令和トラベル」に転職。
現在は旅行アプリ「NEWT(ニュート)」の広報を担当。さらに2025年10月には、ハワイ子会社「ALOHA7, Inc.」のCEOに就任し、家族とともにハワイへ移住。新たなステージで活躍の場を広げています。

 第53回は、旅行会社勤務の大木さんが、旅行アプリ「NEWT」の最新データをもとに、今じわじわと人気を集めている旅行先・シンガポールに注目。円安や物価高が続くなか、なぜシンガポールが選ばれているのか。その背景にある旅行者の価値観の変化について考察します。(以下大木さん寄稿)

シンガポール旅行の人気急上昇とその背景

円安・物価高でも人気急上昇中の“意外な旅行先”。予約「前年比...の画像はこちら >>
 みなさん、シンガポールに行ったことはありますか?

 今、海外旅行を検討している人たちの間で、じわじわと存在感を高めているのがシンガポールです。

 先週、「NEWT」が発表した夏休み海外旅行動向をもとに、円安や燃油高が続くなかでもベトナムに人気が集まっているという話を紹介しました。

 ベトナムは物価が比較的安く、お得感があり、日本からのアクセスも良好。限られた予算の中でも満足度の高い旅ができ、現在もっとも注目を集める渡航先となっています。そんなベトナムを追う形での、シンガポールの人気は少し意外でした。

 シンガポールと聞くと、「マリーナベイサンズ」や「マーライオン」が有名ですが、ベトナムやフィリピンのような「コスパの良い旅行先」ではありません。むしろ東南アジアの中では物価が高い国として知られています。


 私自身もこれまで何度か現地を訪れていますが、「何もかもが安い国」ではありません。交通機関やタクシーは日本より割安に感じることもありますが、ホテル代や食事代を含め、全体的な物価は決して安くはありません。ですから、あまり積極的にショッピングを楽しめる場所ではない。

 それにもかかわらず、なぜ今シンガポールなのでしょうか。

「NEWT」の調査では、シンガポールは「韓国」「台湾」といった近距離の人気旅行先と肩を並べるほど高い注目を集めています。今回は調査結果をもとに、シンガポール人気の秘密を紐解いていきたいと思います。

予約データから見るシンガポール人気の実態

 まずは、シンガポール人気がどの程度なのか、実際の数字から見ていきましょう。

 旅行アプリ「NEWT」の予約データによると、2026年上半期(1~6月)のシンガポール旅行の予約数は、すべての月で前年を上回りました。

 なかでも注目したいのが春以降の伸びです。5月の予約数は前年比約2.8倍。さらに6月には前年比約3.2倍となり、わずか1年で3倍以上に増加しています。

 また、3月、4月、5月と月を追うごとに予約数は右肩上がりで増加。夏休みシーズンを前に、シンガポールへの関心が急速に高まっていることがうかがえます。


 まさに今、これからの夏休みなど、直近でシンガポール旅行を控えている方が現状でもたくさんいることがわかります。

 気になる旅行代金ですが、シンガポール旅行の平均代金は1人あたり約16万4000円。これは、航空券やホテル代、燃油サーチャージなどを含んだ金額です。平均滞在日数は4.9日間。およそ5日間の日程で訪れる人が多いことがわかりました。

 一方で、韓国の平均旅行代金は約7万4000円、台湾は約7万3000円。平均滞在日数は韓国が3.3日間、台湾が3.9日間となっており、シンガポールは韓国や台湾と比べて2倍以上の費用がかかる計算になります。

 韓国、台湾といった近距離、低単価のエリアの構成比が落ち着きを見せる一方で、シンガポールを選ぶ人が増加している。

 このデータから見えてくるのは、「とにかく安く行ける旅行先」よりも、「お金をかけても満足できる旅行先」を選ぶ人が増えているということ。物価高や円安が続く今だからこそ、限られた旅行機会をより価値のある体験に使いたい。

 そんな“体験重視”の旅のトレンドが、シンガポール人気を後押ししているのかもしれません。

アクセス、治安、観光。
三拍子揃った旅行先

円安・物価高でも人気急上昇中の“意外な旅行先”。予約「前年比3倍」に旅行会社のプロも驚き
シンガポール
 シンガポール人気の背景には、旅行先としての“構造的な強さ”があるように感じます。

 まず、日本からのアクセスが良好です。羽田や成田からは直行便が多数運航されており、フライト時間は約7時間。時差もわずか1時間しかありません。

 ヨーロッパやアメリカのように時差ボケに悩まされることもなく、帰国翌日から仕事や学校があっても比較的負担が少ないのは大きな魅力です。限られた休暇でも行きやすく、「せっかくの休みを移動で終わらせたくない」という人にとっては理想的な旅行先と言えるでしょう。

 そして、海外旅行で気になるのは現地での治安だと思いますが、シンガポールは世界トップクラスに治安が良くて、さらにアジアの中でも街が圧倒的に清潔で綺麗。

 英語も通じるので、久しぶりの海外旅行や初めての海外旅行でもハードルが低いという安心感があります。

 さらに、子連れファミリー層も行きやすい国です。

 街中どこに行っても整備されていて、コンパクトな国土の中にエンタメ、グルメ、ショッピングがギュッと凝縮されているのがシンガポールの魅力。私も子どもと一緒に行ったのですが、移動の負担が少なく、短期間でも楽しめる場所がたくさんありました。

 例えば、「マリーナベイサンズ」や、近未来的な景観が広がる植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」。
人気テーマパークの「ユニバーサルスタジオシンガポール」など、大人も子どもも楽しめるスポットが数多く集まっています。

 さらに近年も新たな話題が続いています。2025年には人気施設だった水族館 「シーアクエリアム」が「シンガポール・オーシャナリウム」としてリニューアルオープン。経済成長を続ける国ならではの勢いもあり、新しい施設や体験が次々と生まれています。

 一度行けば終わりではなく、何度訪れても新しい発見がある。

 高い旅行代金を払ってでもシンガポールが選ばれる理由は、こうした「失敗しにくさ」と「満足度の高さ」の両方を兼ね備えているからなのかもしれません。

20代女性が支持。「映え」と「タイパ」を叶える旅先

 では、実際にどのような人たちがシンガポールを訪れているのでしょうか。

 調査データを分析すると、構成比が大きく伸びていたのが25~29歳の女性でした。現在、この層はシンガポール予約者全体の21.9%を占める最大のセグメントとなっています。

 その人気を支えているキーワードが、「映え」と「コンパクトさ」です。

 シンガポールには、思わず写真を撮りたくなるようなスポットが数多く存在します。
マリーナベイエリアの近未来的な景観や、おしゃれなカフェ、ライトアップされた街並みなど、SNSで目にしたことがある風景も少なくありません。

 SNSで見た写真や動画をきっかけに、「私もここに行ってみたい」と憧れを抱き、実際の予約につながるケースも多いようです。

 さらに魅力的なのが、コンパクトな国土です。

 主要な観光スポットが比較的近いエリアに集まっているため、移動時間が少なく、限られた滞在日数でも効率よく観光できます。

 グルメの選択肢も豊富です。多民族国家ならではの食文化が根付いており、ローカル屋台で味わうチキンライスから、ミシュラン掲載のストリートフード、高級レストランまで幅広く楽しめます。

 夜はルーフトップバーで夜景を楽しみ、昼はフードコート「ホーカーズセンター」でローカルフードを味わう。ラグジュアリーな体験と現地らしい体験を、どちらも無理なく楽しめるのもシンガポールならでは。

 さらに、予算の幅が広く、10万円台で楽しむコスパ重視旅から、18万円超えのマリーナベイサンズに泊まっちゃうようなラグジュアリーな層まで、自分のスタイルに合わせられる選択肢が多いのも人気の秘密のようなんです。

 シンガポールは、自分に合ったスタイルを選べる選択肢が多いうえ、「写真に残したい景色がある」「おいしいものを食べたい」「限られた休みでも満足したい」。そんな現代の若い女性たちのニーズに、シンガポールはフィットしているのかもしれません。

シンガポール人気が映し出す、旅行者の新しい価値観

円安・物価高でも人気急上昇中の“意外な旅行先”。予約「前年比3倍」に旅行会社のプロも驚き
大木優紀
 ローカルな魅力と都会的なラグジュアリーの両方を味わえるシンガポール。
人気の秘密は「高くても、それ以上の価値を感じられるから」にありそうです。

 正直なところ、私自身はこれまでシンガポールに対して、「物価が高い」「暑くて湿度も高い」というのもあり、積極的に旅行先として選ぶイメージがありませんでした。円安が続く今、その人気がここまで伸びていることには少し驚きもあります。

 限られた休みを有意義に使いたい。せっかくお金をかけるなら満足度の高い体験をしたい。そんな「体験重視」の価値観が広がる今、シンガポール人気の背景には、現代の旅行者の本音が詰まっています。

<文/大木優紀>

【大木優紀】
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母
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