Mrs. GREEN APPLE 第2章の幕開けを告げる新曲は映画『青夏』主題歌/インタビュー前編

Mrs. GREEN APPLE/8月1日にシングル『青と夏』をリリース


幕張メッセ国際展示場2daysを含めた全国ツアーは、全公演即日ソールドアウト。今最も注目されるバンドMrs. GREEN APPLEの新曲「青と夏」は、映画『青夏 きみに恋した30日』の主題歌でもある、耳にしているだけで鼓動まで速くなりそうに熱量が高い楽曲。
強い日差しが色濃い影を作るように、気持ちの憂いを折り込むことで弾む気持ちがさらに輝きを増す、夏がテーマのキラーチューンだ。

またカップリングも好曲。同じ映画の挿入歌「点描の唄」は、文語調の美しい日本語と、徐々に男女の感情が露わになっていく構成も見事な井上苑子とのデュエットによるバラード。そして“先天的な”という意味の哲学用語をタイトルにした『ア・プリオリ』は、けたたましく響くサウンドに乗せて表と裏に引き裂かれる感情が生々しく歌われた意味深長なアップナンバー。聴けば聴くほど3曲それぞれが傑作であることに気付かされる、Mrs. GREEN APPLE第2章の幕開けを告げる7枚目のシングルである。
(取材・文/前原雅子)
※ベース高野の「高」の字は正しくは「はしごだか」になります

ただキラキラしてるだけの夏じゃなくて、いろんな憂いがあるからこそ憂いもキラキラに変換したくなる

──「青と夏」は映画の主題歌として作った曲ですか。


大森:そうです。ちょうどアルバム『ENSEMBLE』を作り終えた時にお話しをいただいて。だから曲を作ったのはアルバムのリリース前で、レコーディングはツアー初日の直後でした。

Mrs. GREEN APPLE 第2章の幕開けを告げる新曲は映画『青夏』主題歌/インタビュー前編
大森元貴(Vo,Gt)

──映画の制作サイドからは何かリクエストがありました?

大森:NGなこともなく、曲調やテンポの指定もなく、自由に作ってくださいっていう感じでしたね。ただ観終わったあとに「よし! 自分もこれから頑張ろう!」っていうように、何かしらの気持ちを“自分ごと”として持ち帰ってほしいと言われたので、それがコンセプトになると思って。歌も自分ごととして持ち帰ってほしいというところから、“映画じゃない”っていう言葉が出てきたんですけど、さすがにそれはNGかなと思ったら、ならなかったんですよね。


藤澤:やりすぎでしょって言われても文句は言えない(笑)。

大森:ねっ(笑)。でもOKで。こちらの意図も汲んでいただけて。だからすごくありがたかったですよね。

──作り始める前に映画の映像みたいなものも観せてもらって?

大森:原作の少女マンガと台本は読ませていただいたんですけど、まだ撮影が終わってなかったので映像は観てないです。
なので、逆に曲に映像をあてますっていう感じもあって。どこでどういうふうに曲が流れるかを聞いて、それを参考にしつつ作っていきました。

──曲調や歌詞は“夏”をテーマに?

大森:そうですね。あと“自分ごと”っていうコンセプトもあったので、僕自身も書き手として自分ごとでありたいと思って。映画の主題歌ではあるんですけど、自分にとっての夏ということも、ちゃんと掘り下げたいと思って書いていきました。

──具体的には、どんな夏を想って書いていったのですか。


大森:映画自体が夏休みっていうことを題材にしているお話で。夏休みって楽しい半面、休みには終わりがあるから、その寂しさもあるなあと思って。例えば友達と夕方まで遊んでいてもチャイムが鳴ったらバイバイしなきゃいけないとか、なんか1個1個すごく寂しがっていたことを思い出したりして。そういった気持ちも曲にできたらと思ったんです。ただキラキラしてるだけの夏じゃなくて、いろんな憂いがあるからこそ憂いもキラキラに変換したくなる、そういう夏の思い出を書きたいと思いました。だから、なんかこうフィールドを用意してもらったような感覚で。


Mrs. GREEN APPLE 第2章の幕開けを告げる新曲は映画『青夏』主題歌/インタビュー前編
若井滉斗(Gt)

──映画から“夏”というお題をもらったような?

大森:はい。夏っていうフィールドで書いてください、って。だからスラスラ書いていけたんですけど、産みの苦しみは久々に味わったかもしれない。

──スラスラ書けたけれども、産みの苦しみもあった?

大森:そうなんですよ。Dメロの<寂しいな やっぱ寂しいな>っていうところが、この曲の核になる部分だと思っていて。楽しいだけじゃない、寂しさがあるからこそキラキラした夏に憧れるし、ワクワクするし、人と一緒にいたいと思う。
この歌詞にたどり着くまでが、結構辛かったですね。

──イメージはあるものの、上手く言葉にならないような?

大森:いつもメロディと歌詞は同時に浮かぶんですけど、この曲は頭にあることを、どう書いていいかが掴めなかったという。

──「青と夏」のサウンドや演奏面に関してはどうでしょうか。

藤澤:Mrs. GREEN APPLE的には、この作品の前に出したアルバム『ENSEMBLE』でロックやジャズやポップスっていうように、本当にいろんな振り幅での表現ができて。それを経て、初期の疾走感あるギターロックをベースにしながら、いろんな情緒を盛り込むことができた楽曲になったなと思います。

大森:そういう原点回帰っていうのは、映画のお話しをいただく前から、みんなで考えていたことなんです。『ENSEMBLE』ができたときに次は原点回帰だねって話していたので。やっぱりあのアルバムで、デビューしてからの第1章みたいなものをまとめられたので、ここからリスタートするにあたっての原点回帰というか。

若井:それで改めて初期の頃の曲を聴いてみたんです。そしたら荒削りながらも輝くもの、今じゃ出せない色とか雰囲気があって。そういうのを今回の楽曲で出せたらっていうのがありましたね。だから久々にギターリフをテーマにしてみたし、バンドだからこそ出せる疾走感みたいなものも改めて意識しながら作っていきました。


──リズム隊はどうでした?

山中:『ENSEMBLE』を経て、演奏するってどういうことなのかを各々が掘り下げるようになった気がしていて。それがあったからこそ、お互いの息遣いを感じながら演奏ができたし、バンドとしてのまとまりも増した気がしました。

高野:原点回帰してみたからこそ、疾走感や憂いの表現の幅が広がったことに気付いたというか。それを自分たちが今鳴らせるバンドサウンドに、ちゃんと落とし込めたかなって思うんですよね。

大森:やっぱり荒削りではあったけど、デビュー当時の勢いとか熱量はすごいものがあったから。でも『ENSEMBLE』はそれと真逆の作品で、「熱量でやってはいけません」っていうのを掲げて作ったものなので。それだけにそれぞれの演奏のハードルも高かったと思うんですけど。その、ある意味高カロリーなアルバムを経て、もう一度僕らのなかで熱量の出し方、音を鳴らす楽しさを思い出しながらやったのが今回の制作なんですよね。だからすごく新鮮だったし、どこか懐かしい気持ちでできましたよね。

――【Mrs. GREEN APPLE】インタビュー後編へ