ロックバンド『LEGO BIG MORL』のヤマモトシンタロウさんによる、新作映画のレビュー連載。第6回は映画『プーと大人になった僕』を紹介していく。
世界中の人々から愛される“くまのプーさん”が初の実写化。“大人になった僕”と“プーさん”との心温まる物語をレビューしてもらった。

ディズニー実写映画『プーと大人になった僕』をLEGO BIG MORL・ヤマモトが紹介
(C)2018 Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.

僕は両親がディズニー映画を好きだったこともあって、小さい頃からよくディズニー映画を観ていました。『ロビン・フッド』を観たときには、父に弓矢を作ってもらうために家の近くの山へ一緒に遊びに行ったことを覚えています。

それから、実写作品ではディズニーキャラクターのピーターパンを題材とした、『フック』も好きでした。ネバーランドを出て大人になったロビン・ウィリアムズ演じるピーターパンとダスティン・ホフマン演じるフック船長が再び戦うというお話なのですが、ピーターは自分がピーターパンだったことさえ記憶から無くなっています。
けれども、自分の息子がフック船長に攫われたことでネバーランドへ戻り、徐々に記憶を取り戻します。なんか、その感覚が『プーと大人になった僕』に通じる部分があるなと思いました。

『フック』自体はスティーブン・スピルバーグが監督をしていて、ディズニー公式作品ではなかったと思いますが、昨年ヒットした『美女と野獣』などのディズニーの実写映画は、夢の国と僕たちの世界を繋いででくれるような不思議な力があります。

プーという存在


ディズニー実写映画『プーと大人になった僕』をLEGO BIG MORL・ヤマモトが紹介
(C)2018 Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.

今回、ディズニーが実写化したのは『くまのプーさん』です。プーさんと言えば誰もが知っているキャラクターですが、プーさんとは一体何者なんだい!? という問いかけにちゃんと答えることが出来る人は実は少ないのではないかと思います。僕もそうです。ハチミツが好きな黄色いクマさんでしょ! というぐらいしか知りません。
もはやハチミツ好きという情報以外何もわからないです。そういう部分で『プーと大人になった僕』は、くまのプーさんをよく知らなかった人にとっても長年愛されてきたプーという存在を深く知ることができる映画です。

“100エーカーの森”に住んでいるプーは、そこでクリストファー・ロビンという少年と出会い、森の仲間とともに互いに大切な絆を作っていました。ですが、クリストファー・ロビンは寄宿学校に行くのを機に、プーに「君のことは絶対忘れないよ」と約束をして別れます。時が経ち、プーは変わらずに森のなかでクリストファー・ロビンを想いながら仲間と日々を過ごしていましたが、ある日、森から仲間がいなくなってしまいます。必死に森を探すも見つからず、プーはクリストファー・ロビンなら仲間を探してくれるのではと思い、別れて以来立ち入ることの無かったクリストファー・ロビンと森を繋ぐ扉を開け……。


この映画のポイントは原作では少年だったクリストファー・ロビンが大人になっていることです。あの頃と“変わらないプー”と、現実社会を生き、あの頃とは“変わってしまったクリストファー・ロビン”。時を経た二人を繋ぐものとは?

僕は迷子だ


ディズニー実写映画『プーと大人になった僕』をLEGO BIG MORL・ヤマモトが紹介
(C)2018 Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.

人は大人になるにつれて何かを得て、何かを失っていきながら成長します。クリストファー・ロビンもそうです。プーと別れて寄宿学校へ行き、大人になり、社会に出て、家族を持ち、大切なものが出来て、日々悩み、葛藤する。そういう意味では人は子供の時より、大人になってからの方が迷子になってばかりのような気がします。

この映画でのプーは救世主のような存在ではありません。
彼は彼の変わらない生き方をしているだけです。大切な誰かが困ったら助けるし、何もしたくないときは何もしない。「何もしないのは最高の何かが待っているから」とプーは言います。何もしないのは諦めるという意味ではなく、何かが向こうからやってくるから、何もしなくていいいんだよ、という意味が込められています。プーはある意味、絶対的に変わらない存在であり、安心して帰ってこられる存在なのだと思います。

僕も、小さい頃すごく大切にしていたことが何だったのか、大人となった今ではもうわからなくなってしまったことも多いです。
でもそれは記憶とか、思い出とかという言葉の中だけに存在するものではなく、本当に大切なことはきっと気づいていなくとも僕たち自身の“本能”がわかっているものなんだと思います。だからこそクリストファー・ロビンもプーを助けたのだと思います。この先、色んなことが変わり、何が起ころうとも、プーはクリストファー・ロビンが好きで、クリストファー・ロビンもまたプーが好きだということは決して変わらず、そのこと自体が一番大切なことなのだと、僕はこの映画を観て感じました。

<プロフィール>
ディズニー実写映画『プーと大人になった僕』をLEGO BIG MORL・ヤマモトが紹介

ヤマモトシンタロウ
ロックバンド『LEGO BIG MORL』のリーダーでベースを担当。5月16日にシングル『命短し挑めよ己』を配信リリース。11月1日に自主企画イベント『LEGO BIG MORL “Thanks Giving” vol.12』を開催。


https://www.legobigmorl.jp/
https://twitter.com/chin_taurou

作品情報


ディズニー実写映画『プーと大人になった僕』をLEGO BIG MORL・ヤマモトが紹介
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映画『プーと大人になった僕』
監督:マーク・フォスター
脚本:アレックス・ロス・ペリー AND トム・マッカーシー AND アリソン・シュローダー
ストーリー:グレッグ・ブルッカー AND マーク・スティーヴン・ジョンソン
キャラクター原案:A.A.ミルン AND E.H.シェパード
製作:ブリガム・テイラー,p.g.a. クリスティン・バー,p.g.a.製作総指揮:レネ・ウルフ ジェレミー・ジョーンズ
撮影:マティアス・クーニスヴァイゼル
プロダクション・デザイン:ジェニファー・ウィリアムズ
編集:マット・チェシー,ACE
衣裳:ジェニー・ビーヴァン
音楽:ジョフ・ザネリ ANDジョン・ブライオン
CAST:クリストファー・ロビン/ユアン・マクレガー、イヴリン/ヘイリー・アトウェル、プー(声の出演)/ジム・カミングス、イーヨー(声の出演)/ブラッド・ギャレッド
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
オフィシャルサイト:http://disney.jp/Pooh-Boku
(C)2018 Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.