銀河系軍団・レアル・マドリード。サッカーファンならもちろん、サッカーに詳しくない方でも名前くらいは知っているのではないだろうか。

現在は、ポルトガル代表クリスチアーノ・ロナウド、ワールドカップで大活躍したコロンビア代表のハメス・ロドリゲスなどが在籍する、スペインにある世界一のビッグクラブである。しかし9月20日、そんなレアル・マドリードが、総額6億200万ユーロ(日本円にしておよそ840億)もの負債を抱えていることを、スペイン紙・アスの取材で認めた。


 6億ユーロの内2億4千万ユーロは長期負債で、負債の合計額は前年度よりも11%上昇。しかも長期負債以外の3億6千万ユーロは、緊急に返済が必要な負債だと言う。10年連続で世界一収入のあるクラブとなり、フォーブス発表の「世界で最も資産価値のあるクラブ」にも3年連続で選ばれたレアルだが、この増え続ける負債の理由はどこにあるのだろうか。


 1つはこの10年、収入自体が減ってきたことが挙げられる。

チャンピオンリーグでの優勝や、世界中からの莫大な放映権収入などがある一方、昔ほどの圧倒的な強さやスター選手が見られないのは確かだ。ラウール、ロナウド、ジダン、ベッカム、フィーゴの揃っていた2004年頃が強さ、ネームバリューともに最盛期だっただろう。


 2つめは、スペインのクラブチームが持つ「ソシオ制」という経営方法にある。ソシオ制下ではサッカークラブは国営法に基づいた非営利団体とされ、ファンからの会費によって運営される仕組みとなっている(もちろん別途スポンサー収入などはある)。このソシオ制、会費を払ったファンはクラブの会長を決める選挙に投票ができる。しかし非営利団体のため、会長も会員も経営責任がなく、結果的にかなり場当たりな公約を掲げたり、クラブの経済状況を考えずに巨額を投じて有名選手を揃えたりを繰り返している。


 ナショナルチームよりクラブチームを愛すると言われるスペイン人のサッカー愛やラテン的気質が現れた大変面白い制度だが、さすがに動かす金額が大きすぎる。現在、スペインでソシオ制度を続けているのはレアル・マドリード含め4クラブだけだが、経済学者からは、「レアルは経営危機を脱するためにソシオ制を捨て、経営手腕のある会長や体制を作るべき」との声もあるようだ。


 レアル・マドリードの負債状況が悪化すれば、ビッグクラブであるがゆえに、スペインのリーガ・エスパニョーラ全体も揺るがしかねない。試合の行方やファンタジックなプレイだけではなく、レアルの経済の行方からも目が離せない状況だ。(編集担当:久保田雄城)