「ブラック校則」運用の実態!男性教員によるスカート、下着チェックも

昨年、生まれつき髪の毛が茶色いにもかかわらず、教員から黒染めを強要された女子高校生が、学校を訴える裁判を起こしました。この出来事をきっかけに評論家の荻上チキさんやNPO有志が発足させた「"ブラック校則"をなくそうプロジェクト」は3月8日、東京都内で記者会見を開き、「ブラック校則」に関する調査結果を公表しました。


黒染め指導は増加傾向にある


今回結果が発表された調査は、15歳以上の10代~50代2000人と、現役中高生の親2000人、計4000人に対してのウェブアンケートによる量的調査と、当事者・関係者へのヒアリングによる質的調査のニ軸で行われたものです。

アンケートによると、「生まれつき髪の毛が茶色い」と答えた人は全体の約9%。そのうち黒染め指導を経験した人は、中学時代で約1割、高校時代で約2割ほどいました。

また年代別では、現役世代を含む10代が中学で2.53%、高校で6.33%となり、他の年代と比べて最も高い割合で黒染め指導を経験しており、これは20代の中学1.19%、高校2.98%の2倍以上にのぼる数字でした。

このことから、黒染め指導の件数が、過去10年で大きく増えていることが分かります。

男性教員による女子生徒のスカート、下着チェックも


「スカートの長さが決められている」「下着の色が決められている」などの校則体験も、黒染め指導と同じく増加傾向にあり、現役世代を含む10代が最も多く経験していることが分かりました。

また指導の方法について、女子生徒のスカートチェック、下着チェックが、男性教員によって行われたという声も少なくなかったそう。調査を担当した荻上チキさんは「その行為自体がセクシャルハラスメントに当たる」と指摘しています。


校則そのものが全体的に厳しくなっている


「ストッキング、タイツ、マフラーなどの防寒対策の禁止」も、10代が最も多く経験しており、10年前と比べて約3倍に増加しています。防寒対策をさせてもらえないことでお腹を壊したり、冷え性に悩んでいるという事例も複数あったそうです。

「教科書や辞書を学校に置いていってはいけない」は、特に中学では2倍以上も増え、肩凝りなど健康上の問題にも繋がりかねないという意見がありました。

それ以外にも、中学では「リップクリームの禁止」「日焼け止めの禁止」など、健康維持にかかわる項目での校則体験が多くなっています。高校でも「カバンや制服はおさがりではなく新品でなくてはいけない」「SNSを使ってはいけない」などが大きく増え、中高ともに多くの項目が増加していることが分かりました。

多くの学校で校則指導が厳しくなっている傾向があるようです。

ブラック校則が子どもたちに与える影響は?


ブラック校則は子どもたちにどのような影響を及ぼしているのでしょうか。

今回の調査とは別に、文部科学省が不登校者を対象に実施した調査によれば、不登校の原因として「学校の決まりなどの問題」と答えた子どもが10%いました。
またフリースクールの卒業生を対象としたアンケートでは「学校の校則」が不登校の原因になったという回答も20%あり、校則が不登校の要因になり得ることを示唆しています。

LGBTの生徒や、海外にルーツを持つ生徒など、いわゆるマイノリティ属性を持っている生徒は、校則を理由に嫌な思いをすることが多いというデータもあります。生まれの性別は女性だが性自認に悩んでいるという生徒が、スカートを履くことを強要されるのが嫌で不登校になるなどの事例が紹介されました。

また今回の調査では校則といじめとの相関性も明らかになりました。「中学・高校生らしさ」「男らしさ」「女らしさ」といった規範意識の押し付けが強くなればなるほど、そこからはみ出た生徒への風当たりが強くなり、いじめの原因になっているのではないかと考察されていました。

教員や親たちも悩ますブラック校則


ブラック校則に苦しんでいるのは生徒だけではありません。


学校が定める理不尽な校則や指導方針には、現場で働く教員の労働問題という側面もあります。「生まれつき髪の毛が茶色い生徒に黒染めを指示する」「生徒の下着の色を確認する」などといった明らかに理不尽な行為を、業務の中でやらなければいけない現状に対して、教員ら自身が苦痛に感じている場合もあるのだといいます。

また保護者にとっての負担も大きく、経済的な理由から子どもを頻繁に美容室に通わせることができず、校則に違反しない髪型を保つこと自体が負担になっているといった声も複数寄せられたほか、7万円の自転車など、学校指定品が高額であるなどの事例もありました。

同プロジェクトチームは「本プロジェクトは、個別の校則の良し悪しを議論したり、学校への批判を目的とするものではない」とした上で、「今まで長らく注意が払われてこなかった校則について、みんなで考えるきっかけを作ることで、学校現場や地域にとってより良い学びの場を醸成されることを願っています」と呼びかけています。

(辺川 銀)