仮装通貨の確定申告、実際どう難しいの? 計算ツール「Coin Tool」プロデューサーに聞いてみた

所得が20万円を超える場合は、仮想通貨も確定申告の対象となった。ネット上には「難しい」「わからない」という悲鳴が続々と上がっており、その光景を見て、「仮想通貨に興味はあるけれど、それだけ確定申告が大変なら……」と二の足を踏んでいる人も多いかもしれない。
“仮想通貨の確定申告”を取り巻く現状について、仮想通貨の確定申告のための計算ツール「Coin Tool」のプロデューサーである清水正樹氏(株式会社エンファクトリー執行役員副社長)に話を聞いた。

個人が手動計算するのは諦めた方がいい!?


――「仮想通貨は確定申告が難しい」とは聞きますが、具体的にどう大変なんでしょうか?

まず、各取引所から取引履歴のcsvファイルをダウンロードするんですが、大変な行数になるんですよ。それをもとに所得計算をするのが一苦労です。あと、取引のうち一番ややこしいのは、“交換”です。たとえばNEMとビットコインを交換したとなると、交換当時のそれぞれの価格を調べないといけないんですが、それは取引履歴に大抵残っていないんですよね。しかも国内でその情報を過去にさかのぼって提供してくれているサイトは見たことがありません。たとえば、去年の3月2日15時28分に交換しましたとなったら、海外の仮想通貨・価格情報提供サイトにアクセスして、その時間の価格を調査した上で計算するという煩雑な対応が必要になってきます。

――面倒くさすぎる……!

交換や送金みたいな複雑な動きをしたり、取引の回数が多かったりすると、個人が手動計算で確定申告をしようとするのは、どんどん困難になっていきます。われわれも「Coin Tool」開発時、スタッフが手動で検算作業をしたのですが、あまりの大変さに全員が嫌がって苦労しました(笑)。

――税務署の窓口に行けば、職員さんに聞いて、なんとかなりません?

税務署の職員さんや税理士さんですら、計算方法は説明できても、実際の計算対応ができる人は少ないのが現状です……。

――そんなに確定申告が大変だと、仮想通貨を始めるハードルが上がってしまうのでは?

確かにそれはあります。確定申告の煩雑さもそうですし、他の株式に比べると税率も圧倒的に高い。それに雑所得扱いなので、損失を出したときの繰り越しができませんし、経費に入れられるものもほとんどありません。
投資という点においては、仮想通貨の魅力が少し下がってしまったように思います。ただ、FXも年月を経て税率が下がっていったので、仮想通貨もその可能性があるという意見はありますが……。

取引履歴ファイルさえ用意すれば、そこからの計算は不要


――「Coin Tool」だと、確定申告がどれだけ簡単になるんですか?

本来は頑張ってExcelで計算するところを完全にシステム化しました。Excelやcsvの取引履歴のファイルをダウンロードして、「Coin Tool」にアップロードすれば、年間の所得、通貨ごとにいくらプラスでいくらマイナスかを計算してくれます。「取引履歴ファイルさえ用意してくれれば、そこからの計算は自動でできます」というものですね。

また、仮想通貨の交換に関しても、海外取引所の仮想通貨価格APIから取引時点の価格をさかのぼって計算しますので、ユーザーが自分でいろいろなデータをチェックする必要はありません。

――(実際の計算画面を見て)確かに簡単そう! とはいえ、仮想通貨向けの確定申告計算ツールは少しずつリリースされてきていますよね。「Coin Tool」の強みはなんでしょうか?

個人の方が作ったような無料の計算ツールはいくつか存在するのですが、不具合に対してきちんとサポートがつかなかったり、不明点があってもレスポンスをもらえなかったりするんです。税理士さんに依頼するとしても、仮想通貨に対応できる方を見つけるのが大変ですし、5万円~数十万円の報酬を支払うのは、ハードルが高いですよね。「Coin Tool」は、税理士監修のツールかつ、利用期間中は税理士及び当社スタッフによるメールサポート対応がつきます(サービスの使い方に関してはスタッフより回答、税務相談に関しては税理士より回答。※再質問は1回、最大2回回答)。安心安全性がありながらも、通常料金は税込4500円と安価です。
「無料は不安だけど、高い料金は払えない」という、年間で50万円~200万円の収益を上げている方をターゲットとしてイメージしています。


――今後の機能追加はありますか?

現在はコインチェック、Zaif、ビットフライヤー、ビットバンクに対応していて、すでに国内のほとんどのやり取りをカバーできてはいるのですが、さらに増やしていきたいと思っています。そして、よりサービスも使いやすくしていきます。

また、これは弊社で開発するのでも、他社と連携するのでもいいんですが、収益をリアルタイムでチェックできるサービスが作れないかと考えています。仮想通貨の価格を見られるサービスに税務計算のロジックを組み合わせれば、税引き後で今いくら儲かっているかもわかりますよね。そうなったら、年に1回確定申告のときだけではない、こまめな収益確認が可能になると考えて、今はアイデアを練っている段階です。

仮想通貨全体を盛り上げるためにも……


仮想通貨は、既存の経済・金融システムを変化させて、新たな価値評価の仕方を社会にもたらすものになるのではないかと期待されている。しかし、「なんだか大変そう」と敬遠して、仮想通貨を始める人がいないのでは意味がない。仮想通貨を盛り上げるためにも、“確定申告の困難さ”という問題は業界全体で取り組むべきもののようだ。

(原田イチボ@HEW)
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