「2泊3日の東京旅行のプランを作って。地元で人気のレストランも教えて」。

中国瀋陽市に住む陳勇さんは、国慶節連休の日本旅行の計画にChatGPTを活用した。ガイドブックを調べることもなく、わずか1分足らずで満足のいく旅行プランを作成できた。リアルタイムの航空運賃やホテルの空室情報も一覧できる形になっていたという。

人工知能(AI)が生活に浸透する中、中国観光業では今年、旅行プランのカスタマイズなどでAIを活用したサービスが人気を集めている。こうしたサービスでは、個人の好みに合わせたプラン作成だけでなく、リアルタイムの情報取得やワンクリック予約など、旅行全体の手配を一括して管理することが可能だ。

オンライン旅行サイト各社も観光客のニーズに応えようと、相次いでAIアシスタントを導入している。「携程(トリップドットコム)」が提供するAI旅行アシスタント「TripGenie(トリップジーニー)」は英語や日本語、韓国語など12言語に対応。海外ユーザーのプラン作成の手間を大幅に軽減している。

中国トリップドットコム、1~3月の純利益860億円 ビザ免除などで訪中需要が復活

中国を拠点とする国際的な観光都市ネットワーク「世界観光都市連合会」の特任専門家、王笑宇氏は「AIによる旅行のカスタマイズは、個性的で多様な若者の需要を満たせるし、状況に応じていつでも柔軟に変更できる」と指摘。AIの活用は単なる技術導入にとどまらず、観光業の生産モデルやサービス形態、顧客体験、運営効率を根本から変える力があると語った。

AIの活用は観光市場の競争の新たな方向性となりつつある。浙江省杭州市はネット大手の百度(バイドゥ)と協力し、観光PRやサービスを担うAIエージェント「杭小憶」を開発。

旅行のプランニングや予約など通常の観光サービスを提供してくれるほか、AIシステム内で商品購入を完了できる機能を全国の都市に先駆けて実現している。

アント・インターナショナル、旅行者向けAIアシスタント「Alipay+ Voyager」発表 Eウォレットと統合

北京視旅科技は観光分野に特化した大規模AIモデルを開発し、旅行ガイドの作成からワンクリックでの購入まで、旅行の全プロセスに関わるサービスの提供を実現した。メニューのリアルタイム翻訳やブログの投稿文生成、写真のスマート編集などの高付加価値サービスも提供している。

アリババ傘下の高徳地図、AIで進化 行き先も提案する「考えるナビ」に

同社の孟曄副総裁によると、国慶節連休ではサービスの利用が急増。AIと観光産業との融合はますます進むとし、「ただのガイドではなく、バトラー(執事)やパートナーとして寄り添い、観光客により良いサービスを提供していくだろう」と語った。【新華社瀋陽】

編集部おすすめ