中国天津市にこのほど、同市初の市中免税店がオープンした。店内に足を踏み入れると、中国伝統文化の要素を取り入れた「国潮」の雰囲気が漂う。

ショッピングに訪れたロシア人のリバコワさんは夢中になり、すっかり長居してしまっていた。

来年1月に帰国するリバコワさんは茶器のブースで長時間立ち止まり、「家族が中国茶をとても気に入っている。これらの茶器には歴史と文化が宿っており、この美しさと物語性を兼ね備えた贈り物を持ち帰り、家族により深く中国を感じてもらいたいと思う」と語った。

中国では今、無形文化遺産や老舗などの伝統工芸品、ポップマートやファインディング・ユニコーン、酷竜(クーロン)などのブランドが手がけるアートトイ、あるいは新エネルギー車(NEV)やドローンといった科学技術を用いた新製品などに、世界的な訴求力を持つ一連の消費IP(知的財産)が次々と生まれ、海外市場で新たな需要を掘り起こし続けている。

以前、「LABUBU(ラブブ)のブラインドボックス」が世界中で大ヒットした際には、天津外国語大学に在籍するカザフスタン人学生、エカテリーナさんも1個購入したという。「この『不確実性の楽しみ』が、未知のものを探求したいという今の若者の心理的なニーズに合致しており、カザフスタンをはじめ世界中の若者から歓迎され、新しいトレンド文化の一つになった」とエカテリーナさんは語る。

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ラブブは2019年にポップマートから発売されると、たちまち世界中を席巻した。データによると、ラブブが属する「THE MONSTERS(ザ・モンスターズ)」シリーズの24年の売上高は30億4000万元(約670億円)に達し、ポップマートの海外収入は5.8倍になった。これは、中国のトレンドIPが国際市場で強い影響力を持っていることを裏付けている。

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中国はここ数年、科学技術の革新と産業の高度化を通じて中国製品の競争力を質的に飛躍させており、国産のハイテク製品は外国の消費者からも広く支持されるようになった。

天津で中国の自動車運転免許試験の勉強に熱心に取り組む、ベネズエラ出身のフランコ(中国名は呉瑞竜)さんは、低炭素性能やスマート機能、そしてファッション性の高い外観が絶えず「更新」される中国製NEVのファンだという。

24年、中国の自動車新車総販売台数に占めるNEV新車販売台数の割合は40.9%に達し、10年連続で世界一となった。

NEVに代表される「中国智造(スマート製造)」は、各国消費者がより良い生活を追求するための重要な手段となりつつある。

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華為技術(ファーウェイ)の折りたたみスマートフォンや小米集団(シャオミ)の骨伝導イヤホンから、影石創新科技のパノラマカメラ「Insta360 X5」、杭州宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)の人型ロボットに至るまで、次々と生まれる中国製品は世界中で高い評価を受け、注目を集め続けている。

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天津市にある南開大学観光・サービス学院の妥艶媜副教授は、中国のトレンドIPや、テクノロジー製品、伝統文化商品が海外で成功できる鍵は、世界中の消費者が持つ個性化や、文化的な中身、感情的な表現に対する深いニーズを鋭敏に捉え、対応したことにあると分析。この「需要創造」の背後には、中国で日々整備が進むクリエーティブなエコシステムと機敏なサプライチェーン(供給網)による強力なサポートがあり、ブランドがアイデアを迅速に売れ筋商品へと変え、世界の市場に新鮮な選択肢を提供し続けることを可能にしているとの認識を示した。【新華社天津】

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