中国では現在、人工知能(AI)がさまざまな産業を活性化させており、「1人会社」(One Person Company=OPC)の興隆が注目を集めている。「1人会社」とは、1人でイノベーションチームを結成し、アイデアの萌芽(ほうが)からプロジェクトの実行まで全過程を自力で完成させる形態を指す。

軽量な組織体制や迅速な対応力、低コスト、そして高い柔軟性を強みに、この新しい起業モデルは複数のニッチ分野で急速に台頭している。

「家賃無料・隣に投資家」南京に広がる専用コミュニティ

江蘇省南京市では、先見性を持つ数多くのOPC社区(コミュニティー)が急速に広がっている。ソフトウエア産業拠点、中国(南京)軟件谷(ソフトウエアバレー)に位置する「質能・工坊」OPC社区では、地域のAI産業エコシステムと大学の研究資源を基盤に、演算能力やデータ、アルゴリズム、資本などの要素を統合し、AI分野のOPC企業に対するライフサイクル全体の育成サービス体系を構築。第1期として優良企業22社が選ばれて入居した。

地元のベンチャー企業、江蘇小微数字科技の創業者である左賦斌さんは社区に入居して以来、多くのことを実感し、「賃料無料で、起業の雰囲気が孤独感を払拭してくれる。隣を訪ねるだけで協業の話ができる」と述べ、特にうれしいこととして、江蘇投資人中心(投資家センター)がすぐ隣にあることを挙げ、「よく訪問しては最先端の情報を得ている。発展の勢いがある会社は投資も受けられる」と語った。

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大学連携と専門家による「技術の壁」の突破

向かい側にあるオフィスでは、南京棋盤石智能科技の創業者、王磊さんがスマートハードウエアのAI改良に取り組んでいる。王さんによると、社区が大学との連携を取り持ってくれただけでなく、技術的なボトルネックの解決に向けて権威ある専門家を招いてくれたという。

南京市河西中央科創(科学技術イノベーション)区のアリババセンター内にある親橙OPC社区は昨年12月に開設された江蘇省最大のOPCコミュニティーで、3カ月足らずの間に500余りのワークスペースが満席となり、1000平方メートル超の追加スペースを確保することになった。ここで「1人会社」を立ち上げた伯谷金人才科技の谷燕燕さんは、自身を社区の「住民」に例え、後ろ盾を得たことでコア事業である「AI+HR(人材)」ビジネスを順調に発展させただけでなく、それを土台に「1人会社」向けにカスタマイズしたAIオペレーティングシステムを開発し、より多くの起業家が1人で全てを回せるように支援していると紹介した。

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ギークたちの交流から生まれる「初の受注」

社区が主催する各種イベントでは、起業家同士が交流の中で協力関係を築くことも多いという。テクノロジー企業の昱脈科技を創業した王鵬さんは、あるギーク交流会を通じて濃密なイノベーションの雰囲気を肌で感じただけでなく、将来性あるビジネスの手がかりを手に入れたと述べ、企業サービスチームの支援もあり、初の受注契約を獲得したと明らかにした。

一つのアイデア誕生から、会社の安定した運営に至るまで、南京市のOPC社区は政策による後押しとエコシステムの力を通じて、イノベーションと起業のための土壌を着実に豊かにしている。【新華社南京】

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