
元リンクトインのリーダーたちによるスタートアップ「Bluebirds」

同社は2023年10月に500万ドルのシード資金を獲得。この資金を使ってAIやデータの専門エンジニアの採用や、より低いコストで取引を成立させる包括的なソリューションの開発をする予定だという。
AIがアウトバウンドセールスを自動化する
従来の営業では、ランダムな潜在顧客リストに大量のメールを送ったり電話をかけたりするアプローチが主流であった。これでよかった時代もあったが、今は競合他社も同様の手法を取っていたり、高性能なスパムフィルタが導入されてメールが届かなかったりと、以前ほどの効果は見られなくなってきている。Bluebirdsのトリガーは、LLM(大規模言語システム)と機械学習を組み合わせた独自のAIが生成している。
最近開発されたトリガーのひとつに「転職トリガー」がある。既存顧客のCSVをアップロードすると、AIは独自のアルゴリズムによってウェブ上の公開プロフィールと照合し、その人物が転職したかどうかを探し当てる。
またその際、その転職が「正当」であったかどうか(不祥事による退職の可能性はないか等)も検知して、最終的にはその人物が「最適な見込み客であるか」をランク付して判断してくれるのだという。
AIが最初にふるいにかけることによって、営業担当者はスムーズに次のステップに移行することができる。

Bluebirdsのローハン・プナミア共同創業者は「サービスはまだベータ版であり、開発中のものもいくつかあります。
CRMを解析してターゲットを検出「OneShot」

OpemShotのテクノロジーは、リンクトインのプロフィールや企業のウェブサイト、財務報告書、SNSまで広範囲に検索し、同社が導き出した「理想のペルソナ」に近似したターゲットを選出する。そして、効果的にアプローチできる可能性の高い顧客を特定する。
また、見込み客のメールやリンクトイン、SNSアカウントなど、複数のチャネルに利用できるカスタムメッセージも生成できる。その相手にとって何が最適かをアドバイスしてくれるため、従来のような「定型文を一斉送信」ではなく、個別化・最適化された内容でプッシュすることができる。
OneShotの共同創業者であるペダ・ポーラは、「多くの企業は、従来型のアウトバウンドセールスに多額の費用を投じていますが、今はより科学的でデータ主導型のアプローチの方が、良い結果を得られるでしょう」と述べている。
OneShotは、ベンチャーキャピタル42CAPや複数の投資家から資金調達をしており、その額はこの2年間で約290万ドルにのぼる。
大手企業も利用する「Apollo」

現在、同社は2億7,500万件を超える顧客情報のデータベースを保有している。Lyft、ペロトン、Gympassなどの大手企業を含む約1万6,000社の企業が有料会員として利用しており、セールステック業界では頭ひとつ抜けた存在といえる。
ApolloのプラットフォームはCRMと直接統合でき、高度なアルゴリズムとデータ取得方法を使って、見込み客のビジネス属性と連絡先を提供する。CRMデータベースに加えた200以上の独自の属性によって、情報に変化があった場合はリアルタイムで通知される。
営業にテクノロジーを取り入れる動きは急速に拡大している。Gartnerによると、セールスリーダーの93.6%が、テクノロジーへの投資や利用を考えているという。
実際、その効果も出ているようだ。ホスティングサービスのKinstaは、Apolloを導入したことで営業チームの成長率は360%に達したと報じている。また、ApolloのオープンAPIを使用した営業代行会社のLeadiumは、年間収益が3倍に増益。セールステックは、今後のアウトバウンドセールスの鍵を握る存在となっていくのは確実だろう。
文:矢羽野晶子
編集:岡徳之(Livit)