
【プレチャン りょー】プレミアリーグの魅力を伝えるために、YouTubeチャンネル「プレチャン」を開設。チャンネル登録者数は20万人を超える。13年以上にわたるアーセナルファンとして、試合解説や移籍情報、観戦時の雑談配信などを通じて、プレミアリーグやチャンピオンズリーグの楽しさを発信している。
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選んだり悩んだりすることこそが楽しさ|プレチャン りょーのA面
サッカー界の利益を求めて。大手の自覚と戦略
なぜサッカー系のYouTuberになろうと考えたのですか?もともと話すことも企画を考えることも好きだったので、「YouTubeをやってみたい」という思いはずっとありました。大学3年生の頃にエンタメ系のチャンネルを立ち上げたのですが、恥ずかしさが勝ってしまって上手くいかず、結局すぐに断念して就活を始めました。ただ、就活も上手くいかず、どの企業にも受からなかったんです。
僕は昔から自信家で、実績もないのに「自分はできるやつだ」と思い込んでいるタイプだったのですが、それじゃダメなんだと痛感しました。そこで、何か実績を作ろうと考えて、再びYouTubeに挑戦することにしました。
サッカーを選んだのは純粋に好きだったからというのもありますが、いろいろなジャンルを見極めた結果、サッカーなら勝機があると感じたんです。当時は「サッカーについては有識者以外は語ってはいけない」みたいな風潮があって、元プロの選手や解説者くらいしか表立って発信していなかったんです。
現在、アカウントを運営する上でどのようなことを大切にしていますか?
チャンネル開設当初からずっと大切にしているのが、どのクラブのサポーターも楽しめるチャンネルにすることです。サッカー界隈は意外と狭いので、僕が好きなアーセナルのコンテンツだけに絞ってしまうとすぐに限界が来るでしょうし、幅広く取り扱わないと大きくはなれないだろうと思いました。
最近は、僕たちがサッカー界を引っ張っている一員であるという意識も芽生えています。界隈が狭い分、僕らの規模でもインフルエンサーとしては大手の部類です。もちろん、もっと知名度のある有識者もいらっしゃいますが、そういった方々は「自分のクラブの認知度を高めたい」など、別の目的を持っていることが多いので、フレキシブルに活動できる立ち位置としてはトップの方だと思います。
だからこそ、目先の利益よりもサッカー界全体の利益を考えて行動するように心がけていますし、ファンとして「楽しむサッカー文化」をどれだけ作っていけるかを追求しています。
Z世代の視聴者が多い中、その世代に刺すためにどんなことを意識していますか?
サッカー部の部室のような雰囲気作りを意識しています。実際、試合を見ながらの配信中でもサッカーの話をしているのは全体の1/3ぐらいで、それ以外は雑談なんですよ。友達と一緒に試合を観るときって、そんな感じだと思うんですよね。そんな空間を作れるように、視聴者さんのコメントを拾いながら、部室でダベっているような雰囲気になるよう意識しています。
トップに必要なのは、人間力
インフルエンサー活動を始めてから最初に直面した壁は何ですか?壁を感じたことはあまりないのですが、強いて言えば、チャンネルを立ち上げて1年目に、コロナ禍でサッカーの試合が休止になってしまったことですね。僕たちは試合があるからこそ動画を作れますし、視聴者の関心を集めることができるので、試合がなければどうしようもありません。当時は、サッカーゲームの配信など、その状況下でできることを模索していました。
幸いなことに、サッカーはほかのスポーツよりも早く試合が解禁されたんです。みんながサッカーを見られるようになったことに加えて、リアルでは人と会えないなか、オンラインで一緒に試合を楽しめる配信の需要も高まり、何とか乗り切ることができました。
これまでに失敗したと思ったタイミングはありましたか?
配信中の行動で炎上してしまった時です。配信ではいかに素を出すかが大事だと考えているのですが、それもあくまでエンタメとして面白く受け入れられる範囲内であることが前提です。その時は、やりすぎてしまって…。今でも言動には常に気をつけていますが、後から振り返って反省することもあります。
失敗を経て、どんなことを学びましたか?
いろいろと学んできてはいますが、それで守りに入っても面白くないと思っていて。笑える範囲でいかにはじけられるかが肝ですから。その“ちょうどいいライン”は経験や場数を積んで養っていくしかないと思います。
成功している配信者の方々は、サッカーに限らず「人間力」で視聴者を惹きつけていると感じています。
「チャンネルあっての視聴者」の関係性は崩さない
視聴者との繋がりを強化するために特に重要視していることは何ですか?DMをあまり返さないことです。ありがたいことに、配信ではたくさんの方からスーパーチャットをいただいていて。お金を払ってまで質問してくださる方がいるのに、DMに答えてしまうのはスーパーチャットをしてくれる方々に失礼だと思っています。
また、これからカギになると考えているのが、オフラインでのつながりです。そう強く感じるきっかけになったのが、2024年の能登半島地震があった後にいただいた配信でのコメントでした。「プレチャンが好きでつながった友達が被災して苦しい状況だから、励ましてあげてほしい。イベントがあったら一緒に行こうと話していたけれど、そう言える状況じゃなくなっちゃった」と。
プレチャンを好きだと言ってくれる人同士が偶然出会って、友達になれる機会って、日常生活ではなかなかないと思います。これまではそうした場を提供してこなかったので、これからは増やしていきたいと考えています。
ファンのフィードバックをどのように取り入れていますか?
2週間に1回ほどの企画会議で、視聴者からのフィードバックをもとにメンバーと話し合うことはあります。ただ、内容をそのまま取り入れることはあまりありません。というのも、チャンネルが視聴者の下についてはいけないと思っているんです。

僕たちの言動に嘘がないことです。YouTubeで伸びていくためには人間力が不可欠で、そのためには人柄はもちろん、信頼も大切だと考えています。
僕が個人的に大事にしているのが、弱い面を見せることです。私生活でも、強いエピソードや自慢話って聞いていて面白くないじゃないですか。そういう話にカリスマ性を感じてもらえるかもしれないですが、楽しい存在ではなくなってしまうような気がします。だから僕は、あえて自分の黒歴史や失敗談を積極的に話すようにしています。
サッカー系の動画は見ない。ヒントは他ジャンルにあり
コンテンツのネタを選ぶ際の基準は何ですか?試合以外のネタについては、Xで話題になっているトピックや現地のメディアの情報を元に検討することが多いです。メンバーとのネタ会議を通じて、企画を作り上げていくこともよくあります。
視聴者の関心やトレンドをどのように把握していますか?
Xは反応がダイレクトに見れるので、トレンドを把握しやすく、とても活用しています。
コンテンツの制作についてのアイディアやヒントを得るためにしていることは何ですか?
普段から、YouTubeではいろんなジャンルの動画を見るようにしています。あえてサッカー系はあまり見ず、「この企画をサッカーに応用したらどうなるのか?」という視点でチェックしています。
着眼点が面白い企画や尖ったアイデアを見つけたら、それをサッカーに応用してみたり、編集がうまい動画のやり方を調べて導入してみたり、トークの言い回しを取り入れたり…。そうやって日々研究しています。
もともとテレビっ子でもあったので、テレビの企画から着想を得ることもありますね。
思いとニーズのマッチがコラボの成功を導く
コラボしたいブランドや企業はありますか?その理由も教えてください。山ほどありますが、まずは大好きなファッション分野でコラボをしてみたいですね。世界的なサッカーブランドであるUMBROさんとコラボできたら、本当に嬉しいです。
それから、英会話の企業さんともご一緒したいです。年に2~3回は海外観戦に行くのですが、英語が全然話せなくて。過去には、サッカーゲームの世界大会で12カ国の代表とコミュニケーションを取る機会があったのですが、そこでも苦戦しました。そんな経験から、英語を勉強したいという思いが強くなりました。
同じような経験をしている人はきっと多いでしょうし、サッカー好きで、現地観戦をしたい人は英語学習への意欲も高いと思います。僕の思いとみんなの関心がマッチして、非常に良いムーブメントを起こせるのではないかと考えています。
コラボレーションを選ぶ際の基準は何ですか?
僕たちは基本的に案件を受けていないのですが、もし受けるとすれば、「信頼できる企業かどうか」と「面白いコンテンツが作れるかどうか」が判断基準です。案件に否定的というわけではなく、むしろ案件をきちんと消化できるYouTuberこそ、強いと思います。ただ今は、面白い動画になるかどうか、企画力との兼ね合いもあって、なかなか実現できていないのが現状です。

HISさんとの「プレたび」です。延べ200人以上の方にご参加いただいて、HISさんからも異例の数字だとおっしゃっていただきました。
海外サッカーの現地観戦は、個人で手配することもできますが、やっぱり不安もありますよね。そこで、大手旅行会社であるHISさんが主催し、さらにいつも見ている僕たちも同行するという安心感が、多くの方に支持されたのだと思います。
また、LINEのオープンチャットを使ったリアルタイムのアドバイスも好評でした。海外旅行では「ホテルでお湯が出ない」「ドライヤーってどこにあるんだろう」など、ちょっとした困りごとが出てくるものです。そんな時に、参加者同士がリアルタイムで情報を共有し合えるオープンチャットの仕組みが、安心感につながったように感じています。
参加者みんなで楽しみながら、現地観戦の魅力をダイレクトに伝える、という良いサイクルを生み出せた、やってよかったと思えるコラボでした。
海外サッカーの聖地を日本に作る。夢の実現に向けたステップ
今後取り組みたいと考えている新しいプロジェクトにはどのようなものがありますか?まずはオフラインでの交流をもっと強化していきたいです。2025年2月に開催した、ユニフォームをファッションの一環として楽しむポップアップショップが大盛況で。今後はもっとたくさんの服屋さんと協力して、より多くの人に来ていただけるようなイベントにしていきたいです。
もう一つ、僕はサッカーのニュースを得るためにXを毎日見ている一方で、X自体があまり好きではないんです。口喧嘩のようなやりとりを見ると、嫌な気持ちになることが多くて…。でも、情報をいち早く得るためには見ざるを得ない。「Xに代わるサービスがあったらいいのに」とずっと思っているので、それを自分で実現しようと考えています。
そうしたプロジェクトや活動を続ける先で、どのようなことを成し遂げたいですか?
日本に海外サッカーの聖地を作ることが夢です。渋谷のような若者が集まる街に、海外サッカー好きが気軽に集まれる場所を作りたい。その場所が赤字にならないぐらい、サッカー人気が当たり前な世の中にしていきたいです。また、日本のワールドカップ優勝は多くの人の夢だと思うのですが、僕はその後こそが大事だと思っていて。優勝したその瞬間にブームが終わらないよう、そこでサッカーの熱を支える存在になりたいです。

いろんな人と直接会って話を聞くことを意識しています。ありがたいことに、僕に会いたいと言ってくださる方もいますし、僕自身も会いたい人と会えている。そうやって、いろいろな界隈のリアルな声を聞きながら、サッカーにどう活かしていけるかを考えていきたいです。
はつらつとした語り口や素直さで少年のような雰囲気をまとい、親しみを感じられるりょーさん。その心の内には、海外サッカーに対する熱い思いと未来への野望が燃えている。一方で、客観的に自分たちの立ち位置を見つめ、必要なことを分析しながら界隈の先を見据えて活動する冷静さも持ち合わせている。熱い気持ちと論理の二刀流だからこそ、界隈大手として着実にファンを増やしているのだろう。日本で海外サッカーがさらに浸透し、広く親しまれる未来はそう遠くないのかもしれない。
文:安藤 ショウカ