企業383社の人材マネジメントの実態を調査 「業績好調」の裏で、「新価値創造」と「人材流動化」に課題感
リクルートマネジメントソリューションズは、会社で人事責任者、または人事担当者を務める383名に対し、「人材マネジメント調査2025」を実施し、結果を公表した。

■「業績向上」は高評価も「新価値創造」・人材の「流動化」に課題感

回答企業383社の項目ごとの平均値(5点満点)では「業績向上」に関する2項目はどちらも3.50を上回り、「新価値創造」に関する3項目はいずれも3.50を下回る結果に

同調査では、回答者が自社の人材マネジメントの成果について、どのように捉えているのかを項目ごとに確認。

その結果、既存の「業績向上」に関しては一定の手応えを感じている企業が多い一方で、新しい取り組みや価値創出といった「新価値創造」、および事業間での人材の再配置などを示す「流動化」については、課題を抱えている企業が多いことが明らかになった。


自社に対する評価を要素別に確認すると「業績向上」に関する2項目の値(5点満点、以下同様)がどちらも3.50を上回るのに対し、「新価値創造」に関する3項目の値はいずれも3.50を下回る結果に。

これは、売上や顧客評価といった現在の成果は一定水準にあるものの、新たな価値創出や将来に向けた変革に関しては、十分に実現できていないと認識している企業が多いことを示している。

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「業績向上・新価値創造」全体平均
「人材の最適化」に課題感。なかでも「流動化」の値が低く、多くの項目で3.00を下回った

続いて、「人材の最適化」についての自社に対する評価を確認したところ、全体的に企業の問題認識を感じられる結果に。

なかでも「事業推進に必要な人材の最適化が実現できているか」という項目に対する値は、2.54と低く、企業の多くが「人材の最適化」の実現に至っていないと認識していることが明らかになった。

また、「人材獲得」「流動化」「活躍支援」の3つの要素別に確認すると、「流動化」に関する7項目の値が最も低く、多くが3.00を下回りまわっている。

なかでも、「社内異動により、事業推進に必要な人材を充足できている」や「事業縮小や拡大に合わせ、事業横断での人的リソースのシフトがうまくいっている」はともに2.60を下回り、多くの企業が事業環境に応じた人材の再配置に課題を抱えていることが示唆された。

企業383社の人材マネジメントの実態を調査 「業績好調」の裏で、「新価値創造」と「人材流動化」に課題感
「人材の最適化」全体平均

■「人材の最適化」が進む企業は、業績も価値創造も好調 人材の「流動化」がカギに

「人材の最適化」の実現群と非実現群の差が際立つ結果に

次に、「人材の最適化」の実現状況に応じて企業を「人材最適化実現群」と「人材最適化非実現群」の2つに分類し、その違いを比較。

「人材の最適化が実現できている」と回答した「人材最適化実現群」は、「業績向上」「新価値創造」のすべての項目で3.50を上回った。

一方、「人材最適化非実現群」は「新価値創造」の3項目において3.00を下回る結果に。また、すべての項目で群間の差は統計的に有意となった。

企業383社の人材マネジメントの実態を調査 「業績好調」の裏で、「新価値創造」と「人材流動化」に課題感
「業績向上・新価値創造」群別比較●「人材の最適化」を実現するためにはヨコ(事業間での人材リソースの最適化)とタテ(主要ポジションの適性把握と充足)の両軸で最適化を進める必要がある

「人材獲得」「流動化」「活躍支援」に関する項目についても、「人材最適化実現群」の方がすべての項目の値が高く、なかでも、「流動化」に関する項目で大きな差分が見られた。

これらの結果から、「人材の最適化」を実現するためには、ヨコ(事業間での人材リソースの最適化)とタテ(主要ポジションの適性把握と充足)の両軸で最適化を図っていくことがポイントと捉えられる。


「人材の最適化」が進んでいる企業では、業績や新価値創造といった成果面でも良好な結果が見られ、流動性の高い人材配置が企業成長に寄与する可能性が高いことがうかがえる。

企業383社の人材マネジメントの実態を調査 「業績好調」の裏で、「新価値創造」と「人材流動化」に課題感
「人材獲得・流動化・活躍支援」群別比較

■「人材の最適化」の実現群は「評価での行動・成果」、「異動での会社主導・従業員希望」を両立

人事施策方針においても「人材の最適化」の実現群と非実現群との差は顕著に

さらに同調査では、「人材の最適化」を実現している企業が、どのような人事施策方針をとっているのかについても確認。

その結果、実現群の企業では、「評価」「異動」「等級」に関する項目で、値が高い傾向となった。なかでも「行動・プロセス」と「成果・結果」の両方を評価する方針や会社主導と従業員の希望を両立させた異動方針をとっていることが特徴的に。

具体的には、「等級の格付けは、能力を重視している」「評価は、成果や結果を重視しつつ、行動・プロセスも見る」「[異動は会社主導と従業員の希望の両立」のような項目で値が高く、非実現群との差も顕著となった。

そして、「人材最適化」を実現している企業には、以下の特徴があることが判明。

(1)行動・プロセス評価と成果・結果評価を両立しつつも、成果・結果評価を重視する「評価」方針である。
(2)会社主導と従業員希望の異動を両立しつつも、従業員希望を反映させる「異動」方針である。

また、非実現群との有意差をふまえると、上記に加え、より能力を重視する「等級」方針であることも有効に機能する可能性がうかがえた。

企業383社の人材マネジメントの実態を調査 「業績好調」の裏で、「新価値創造」と「人材流動化」に課題感
「現状の人事施策方針」群別比較【調査概要】
調査対象:企業の人事責任者、または担当者
調査方法:インターネット調査
調査期間:2025年1月8日~24日
有効回答数:383件
従業員規模:
・1~500人未満:29.2%
・500~700人未満:11.0%
・700~3,000人未満:33.2%
・3,000~5,000人未満:7.0%
・5,000~10,000人未満:10.2%
・10,000人以上:9.4%
業種:
・建設・不動産・住宅メーカー:9.9%
・電気・自動車・精密機器・機械・素材・エネルギー:14.6%
・医薬品・医療機器・化粧品:5.0%
・食品・飲料・農林水産:3.7%
・素材(紙・化学・繊維など):3.1%
・商社・卸売:6.3%
・小売・外食:2.9%
・金融(銀行・証券・保険など):5.2%
・サービス(人材・教育・BPOなど):15.4%
・水産・農林:0.5%
・官公庁・団体:10.7%
・その他:22.7%

<参考>
リクルートマネジメントソリューションズ『人材マネジメント調査2025
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