
■首都圏への本社移転、過去10年で最多5年ぶり「転入超過」へ
2025年1-6月に判明した、地方から首都圏へ本社機能を移転した企業は200社に上った。過去10年で最も多く、前年を47社・30.7%上回る高水準で推移。他方、同期間における首都圏からの転出企業は150社で、前年から17社・10.2%減少。コロナ禍により首都圏外への転出が増加した2021年以降では最少となった。
本社転出入社数の推移(2015年以降)この結果、2025年1-6月における首都圏への本社移転動向は、転入企業が転出企業を50社上回る「転入超過」となった。半期で転入超過となるのは2019年(17社の転入超過)以来6年ぶりで、超過社数は比較可能な2011年以降で最多。
このペースで推移した場合、通年では5年ぶりに「転入超過」が見込まれ、転入超過社数も2015年(104社の転入超過)を上回り、過去35年で最多となる可能性がうかがえる。
地方からビジネスチャンスを求めて首都圏に移転する中小企業が目立つなど、首都圏エリアの企業吸引力が急回復しており、企業の「脱首都圏」の動きは減速の兆しに。
地方から首都圏へ転入した企業の業種では、「サービス業」(80社)が最も多く、大幅に増加した前年(68件)を上回り、通年で見ても1990年以降、最多ペースで推移。
サービス業の首都圏転入では、「受託開発ソフトウェア業」(14社)が最多。「卸売業」(32社)は前年同期(19社)から大幅に増加し、「小売業」の29社(前年18社)が続く。

サービス業のうち、最も多いのはコールセンターなどを含む「他の事業サービス」(11社)で、「経営コンサルタント業」(6社)、「広告制作」(3社)などが続き、次いで多い「卸売業」(34社)は、前年同期(31社)から3社増加し、機械類や食品、化粧品など幅広い業種での移転が目立つ。
また、「小売業」(21件)は前年からほぼ倍増となり、半期としては過去5年で初めて20件を超えた。
■首都圏への「転入元」は計33道府県、2年ぶり増加
地方から首都圏へ転入した企業を売上高規模別にみると、「1-10億円未満」(84社)が最も多かったものの、前年同期からの増加幅では「1億円未満」(79社)が24社増と最多に。売上高「100億円以上」(9社)は増加したものの、売上高10億円以上の企業が首都圏への転入に占める割合は半期ベースで18.5%と3年ぶりに2割を下回ったほか、コロナ禍以降では最少となった。
首都圏から地方へ転出した企業では「1億円~10億円未満」(71社)が最も多く、前年から増加。一方で「1億円未満」(55社)は大幅に減少し、半期ベースでもコロナ禍以降で最少を記録。
首都圏外への企業移転は、コロナ禍前に多かったIT関連産業など小規模な企業の動きが中心だったものの、近時は中堅規模以上の企業で首都圏から本社を移転するケースが増加した。

首都圏から地方へ移転した企業の転出先では、「大阪府」の17社が最多で、半期としては3年ぶりに20社を下回った。「静岡県」(15社)、「茨城県・愛知県」(13社)など、首都圏企業の移転先は総じて首都圏近隣または大都市部に集中する傾向が続く。
移転先は29道府県にとどまり、前年(35)から減少するなど、首都圏から転出する企業はコロナ禍で目立った「遠方・広範囲」への動きから、東京などアクセスしやすい首都圏近郊へ回帰する動きが続く結果となった。

帝国データバンク『首都圏「本社移転」動向調査(2025年上半期)』