13%カットでも20万円──メリハリ消費の内実
削るところは削り、使うところには使う。最新調査で明らかになったZ世代の消費傾向だ。米PwCの分析によれば、Z世代は2025年1月から4月にかけて全体支出を13%削減した。
将来的な購買力の大きさを考慮すると、Z世代の消費傾向は無視できない。NielsenIQ、GfK、World Data Labによると、Z世代の購買力は2030年までに12兆ドル(約1,800兆円)規模に達する見通しだ。単なる若年層のトレンドとして片付けられる規模ではない。
興味深いのは、デジタルネイティブであるはずのこの世代が、実店舗での買い物体験を重視している点だ。PwCの調査では、61%が「新商品の発見に店舗を好む」と回答。手に取って確かめたい、店の雰囲気を楽しみたいという欲求は、完全なオンライン世代という先入観を覆す結果となった。
ブランドに対する姿勢も多様化の様相だ。59%が既知ブランドを好む一方で、41%は安価なプライベートブランドを受け入れ、49%がカスタマイズ商品を求めているという結果に。ブランドロイヤルティは存在するものの、それは絶対的なものではなく、状況や商品カテゴリーによって大手ブランドと無名ブランドを使い分ける傾向が浮かび上がる。
高級品市場でも同様の傾向が観察されている。ミレニアル世代とZ世代を合わせると、2025年末までに世界の高級品支出の4分の3を占める見込みだが、米国では高級ファッション支出が2023年に12%減、2024年にはさらに9%減少している。伝統的な高級ブランドへの支出を抑える一方で、再販市場は活況を呈し、2028年までに3,500億ドル(約53兆円)規模に成長すると予測されている。
定価購入は21%のみ──AIで加速する値引き探し
メリハリ消費を特徴とするZ世代にとって「定価で購入する」ことは稀な行動だ。「セールを待つ」というZ世代は79%以上に上り、定価で買うのはわずか21%。「値引きされるまで待つ」ことは、もはや当然の消費行動として定着しつつある。実際、ディスカウントコードを検索する行動は前年から14%増加し、買い物の閲覧行動も17%上昇している。AIツールを駆使して「最もコスパの良いマスカラ」を検索するなど、テクノロジーを活用した買い方が広がっている。
価格への敏感さは、あらゆる調査で裏付けられている。家庭用必需品の購入において、価格を最重要要因として挙げる割合は51%に上る。さらに5人中2人が購入前にクーポンを積極的に探しており、特に米Z世代は平均的な消費者と比べて中古品を購入する割合が8%高いとされる。DepopやVintedといった再販プラットフォームの利用も急増。Depopの使用は2022年から8%増加、Vintedに至っては英国とフランスのZ世代訪問者が47%増加した。
値引きツールへの関心も過去最高水準に達している。キャッシュバックやクーポンに今まで以上の興味を示しているという消費者は78%と、調査史上最高の数値を記録した。実際の利用状況も活発で、「ほぼいつも、または頻繁に」デジタルクーポンやプロモコードを使用している割合は51%、キャッシュバックリワードを獲得しているという回答は48%となった。
また半数以上が価格比較にAIを使うことを検討しており、5人中2人がショッピングサポートにAIの使用を検討すると回答。特に、オンラインショッピング中の予算サポート機能がAIを使用する動機になると回答したZ世代の割合は、平均的な消費者に比べ22%高いことが分かった。現在ショッピングでAIを利用している人のうち、54%が価格比較に、41%がディール発見に活用しており、AIが賢い買い物のための新しい武器として認識され始めている状況も浮き彫りとなっている。
SNSでトレンド確認、アプリで価格比較、実店舗で購入という新たな導線
デジタルネイティブと呼ばれるZ世代だが、その消費行動においてリアル店舗は必須の存在であり、重要性は年々増している。2025年の休暇シーズンに店舗での買い物頻度を増やす予定のあるZ世代は37%に達し、前年の27%から10ポイントも上昇した。店舗を訪れる理由として最も多かったのは、商品を実際に触って見たいという欲求だ。41%がこれを理由に挙げており、前年の34%から増加した。
俯瞰すると、Z世代の購買行動はオンラインとオフラインを行き来するものであることが見えてくる。
ソーシャルメディアでギフトを検索する割合は43%で、全体平均の30%を大きく上回る。リサーチに使用する割合も39%と全体平均の27%より高く、購入前の比較でも32%が活用、これも全体平均の22%を超えている。
店舗体験への期待値は極めて高い。決済プラットフォーム企業Adyenの調査では、Z世代の60%近くがチェックアウトラインが長すぎると購入を中断すると回答。さらに4分の1以上が、好みの支払い方法が利用できなければ商品を置いて店を去ると答えた。スピード・利便性・柔軟性が欠如した店舗体験は、即座に機会損失につながる可能性を示しており、店舗運営企業への重要な示唆となる。
ただし、商品カテゴリーによって店舗への依存度が異なる点には留意が必要だ。美容製品では31%が店舗での購入を好み、高級品においてはベビーブーマー世代の4倍も店舗で購入する可能性が高いという傾向が確認されている。デジタルに精通していても、高額商品やパーソナルケア商品については、実物を確認できる店舗で購入するというのが実態となっている。
デュープ82%、中古83%──多様化する節約手段
Z世代の購買行動において、「dupes(デュープ)」(廉価版)商品を購入する新たなカルチャーも注目されている。デュープとは、duplicateから派生したもので、主に高級有名ブランドの廉価版を指す言葉。たとえば、高級バッグブランドThe Rowの5,000ドル相当のバッグに対して、The Cosが提供する300~400ドル相当のバッグなどがデュープとされる。今年の休暇シーズン、こうしたデュープを購入する予定というZ世代は82%に上る。
デュープ文化は、この数年顕著になっており、数字からもその傾向が読み取れる。2023年の調査では、Z世代の70%が過去1年に「時々または非常に頻繁にデュープを購入した」と回答。米国のオンライン検索でも「dupe + skin care」が1年で123.5%増加し、「dupe + make-up」も2022年から2023年の間に31%上昇した。TikTokのハッシュタグ#dupeは60億回以上視聴されるなど、ソーシャルメディアがデュープ探しの主戦場となっている。
Z世代による消費の影響は中古品・再販市場にも波及している。米国の再販市場は2025年時点で推定560億ドル規模に達し、2024年には58%の消費者が中古アパレルを購入した。特に熱心なのがZ世代で、83%が中古アパレルを購入したか興味を持っており、クローゼットの5つに2つは中古品だという。さらに34%が常に中古ショップなどで買い物し、64%が新品を買う前に中古品を探す習慣を持っている。
これらの調査から浮かび上がるのは、従来の消費者像とは一線を画すZ世代の姿だ。彼らは節約志向でありながら、価値を見出したものには惜しみなく支出する。定価で買うことは稀だが、店舗体験には高い期待を寄せる。デュープや中古品を積極的に活用し、AIツールで最適な価格を探し出す。
文:細谷 元(Livit)

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