職場のAI利用、「社内ルールなし」が7割超　業務でのAIを活用を周りへ共有しない「サイレント活用」も6割超に

SHEは、全国の20～59歳の有職者400名を対象に、日常と仕事それぞれの場面における生成AI活用の実態を調査し、結果を公表した。

■AI「使う46％vs使わない54％」「必要45％vs不要55％」──若い世代ほど利用が進み、全体でも“約2人に1人”が活用

AIツールについて「仕事または日常のいずれかで使っている」と回答した人は46％、一方で「ほとんど使っていない」は54％となり、活用の有無は拮抗する結果に。

必要性の認識も同様で、「なくてはならない／あった方が助かる」が45％、「なくても困らない／必要性を感じない」が55％と、利用と必要性の双方で半々に近い構図が見られた。

世代別では、20代を中心とした若い層で利用率が高い傾向が見られ、AIを「仕事・日常の一部として使う」姿勢が浸透し始めていることがうかがえる。一方で50代では利用と必要性とも低水準で、世代によってAIへの距離感が異なることも明らかとなった。

この結果に同社は、AIは特別な技術ではなく、仕事や日常の中で必要に応じて使われる“身近なツール”として普及し始めていることが明らかになったとしている。

AIツールをどの程度利用しているか・AIはどの程度仕事や生活に必要だと感じるか

■仕事では“効率化と発想支援”、日常では“迷いや感情に寄り添う”──ChatGPTを中心にAIの役割が場面ごとに多様化

仕事におけるAI活用について尋ねたところ、最も多かったのは資料・企画書・プレゼン資料の作成（50人）。次いで、メール文・原稿作成（49人）、議事録・要約（37人）が続き、業務の文章を効率化する用途が中心に。

また、アイデア出し（40人）やデータ整理・分析サポート（38人）といった、発想や判断を支える領域にも利用が広がっており、単なる作業代替に留まらず「考える仕事」を支える役割が見られた。

一方、日常生活では、相談・助言（49人）が最多となり、キャリア・人間関係・健康など、意思決定の迷いを支える「対話型サポート」としての利用が進んでいる。続いて、旅行・飲食店などの調べ物（48人）、推し活・趣味関連（39人）が挙がり、さらに占い・おまじない（19人）といった、感情や興味に寄り添う領域でも利用が広がっていることがわかった。

特に相談・助言では、女性が男性の約2倍利用しており、また30代は相談、20～30代は推し活・占いと、日常領域では世代による特徴も見られた。

仕事では「効率化と発想支援」、日常では「迷いや感情に寄り添う存在」として、AIの役割が場面ごとに多様化し、生活側では世代や性別の違いが色濃く表れることがうかがえる結果に。

仕事でAIを使う主な目的・日常生活でAIを使う主な目的

■AI普及が進む中、“社内ルールなし”が7割超──利用は進むのに、職場の整備は追いつかず

職場のAI利用について、「会社支給のアカウントを使っている」が45％に対し、個人契約のアカウントを仕事に使用している人は46％と、それをわずかに上回った。企業環境よりも、個人判断の利用が先行している実態が見て取れる結果となっている。

さらに、AI活用に関するルールは「明確に定められている」が28％に留まり、「暗黙の了解（34%）」「決まりなし（38.0%）」を合わせると72％と、約3/4が明文化されていない環境でAIを使っていることが判明。

禁止は0％であるにもかかわらず、制度設計が整わないまま現場の利用だけが先に進んでいる状態がうかがえる。

職場でのAI利用の主な形・職場にAI利用に関するルールがあるか

■業務でAIを活用しても“周りへ共有しない”が6割超─サイレント活用は、AIが“日常インフラ化”した証か

職場でAIを活用している人のうち、「積極的に伝えている」は37％にとどまり、「特に隠してはいないが話さない」（43％）、「周囲に伝えていない・全く伝えない」（20％）を合わせると63％が“共有せずに使っている”実態が明らかになった。

利用の一般化が進む一方で、“使っていること自体をあえて話さない”というスタイルが広がっていることが判明。

利用を共有しない理由をみると、「評価への不安」や「誤解を避けたい心理」が上位に並び、中でも特徴的なのは、最多となった「特に理由はないが、話す必要も感じない」（25件）という回答している。

職場でAIを使っていることを周囲に伝えているか・伝えていない理由かつては「AIを使った」と説明したり、正当化したりする場面が必要でだったが、AIが成果物を支えるための道具として自然に根づき始め、“宣言して使う技術”から“説明不要の身近なツール”へ移り変わったことを示唆していると同社は考察している。

さらに職場では、ルール未整備が7割超という状況の中で個人の判断による活用が先行し、成果物の裏側では静かにAIが働く、そんな「サイレント活用」の風景が今年の現場で広がっているとのことだ。

【調査概要】
調査目的：AI活用の実態と、世代・性別・職場環境による意識差を明らかにすること
調査方法：Webアンケート調査
調査対象：全国の20～59歳の有職者（男女均等）
サンプル数：計400名（20代100名／30代100名／40代100名／50代100名）
調査期間：2025年10月27日～10月29日
※調査結果は小数点以下第1位を四捨五入。

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