黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に脳科学・AI研究者の黒川伊保子が出演。語感の正体が発音体感であるということについて語った。
ニッポン放送「あさナビ」
黒木)今週のゲストは人工知能研究者で感性アナリストの黒川伊保子さんです。私も『妻のトリセツ』、『夫のトリセツ』を読ませていただいて共感しかなかったのですけれども、1つだけわからなかったところがあるので、聞いてもよろしいですか?
黒川)はい。
黒木)「語感の正体が発音体感であることを発見したとき」とあったのですが、どういうことでしょうか?
黒川)言葉は意義の他にイメージを伝えています。そのイメージは発音をしたときの、息の流れや筋肉の使い方から出ていることが多いのです。例えば、「すみません」と「申し訳ありません」という2つの謝り方があります。「すみません」の方ですが、「す」という音は息の隙間風で発音しようと思ってから、音のピークまでがとても速い。ところが「も」という音は舌の上に空洞をつくって、そこに息を少しずつ溜めながら鼻の奥、鼻腔を鳴らす。ハミングの音ですね。「も」というのは、日本語の拍のなかでは、脳が発音しようと思ってから発音のピークまでにいちばん時間のかかる音です。そうすると「す」というのは速くて、「も」というのは遅い。「申し訳ありません」というのは一瞬ですけれど立ち止まる。これにけっこう、人はイラっとする。
黒木)なるほど。
黒川)「そうですね」と言ったら、ちょっと不安な感じがする。
黒木)無意識に使っていますけれども、それを発見したわけですね。
黒川)「やゆよ」という音があります。「やゆよ」という音は、「いあいういお」の二重母音。「いあ」を1拍で言うと「や」です。それから「いう」を1拍で言うと「ゆ」になります。二重母音なので、「も」と同じようにゆっくり発音する音。長い時間を感じさせたり、癒しなどのイメージをつくるのが「や行」の音なのです。私はいい男は「や行」を使う、と言います。「やれやれ」とか「やっと2人になれたね」とか、「ようやくこういうことができるようになったね」と。
黒木)ゆっくりしようね、とか。
黒川)「や行」で言ってもらうと時間が優しくゆっくり流れる。また「さ行」は、女性に対して使うなと言います。「さあ、さっさと注文しようよ」なんて、大切にされていない感じがするではないですか。でも実は男性の方は「さしすせそ」が好きなので、男性を褒めるときは「さしすせそ」で褒める。「さすが、知らなかった」、「すごいわ、それって世界一じゃない」、「そうなんだ」と。「さしすせそ」で褒めると男性は気持ちいいのだけれど、「女性には『さしすせそ』を使わないで『やゆよ』を使ってね」とよく言います。

ニッポン放送「あさナビ」
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)/人工知能研究者・感性アナリスト・エッセイスト
■1959年、長野県生まれ。栃木県育ち。
■1983年、奈良女子大学理学部物理学科を卒業。
■富士通ソーシアルサイエンスラボラトリで、14年にわたり人工知能の研究開発に従事。その後、コンサルタント会社勤務、民間の研究所を経て、2003年に株式会社感性リサーチを設立。
■2004年、脳機能論とAIの集大成・語感分析法『サブリミナル・インプレッション導出法』を発表。サービス開始と同時に化粧品、自動車、食品業界などの新商品名分析を相次いで受注し、感性分析の第一人者となる。
■著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社+α新書)など。
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