「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
株式会社アクアマリンパークウェアハウス・鈴木泰弘代表取締役
「ホテル」と聞くと、洋風の宿泊施設を思い浮かべます。

E657系電車・特急「ひたち」、常磐線・泉~植田間
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第38弾・小名浜美食ホテル編(第2回/全6回)
東京・品川と福島・いわきを結ぶ常磐線特急「ひたち」。概ね上下毎時1本が運行され、一部の列車は、仙台まで足を伸ばします。「ひたち」は、いわき市内のいわき、湯本、泉の各駅に全列車が停車、一部は勿来(なこそ)にも停まります。いわき市は、昭和41(1966)年に5市4町5村が合併してできたまち。いわき~勿来間は、特急でも約20分を要し、まちの広さを体感できます。
「ひたち」が停まる泉駅は、日本有数の港町・小名浜の玄関口。この小名浜を拠点として、いわき・湯本・泉の各特急停車駅の駅弁を製造しているのが、「小名浜美食ホテル」です。「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第38弾は、この小名浜美食ホテルを経営する、株式会社アクアマリンパークウェアハウスの鈴木泰弘代表取締役にお話を伺います。鈴木社長は、なぜ、この会社を起こし、どのように震災を乗り越え、駅弁に参入したのでしょうか?
株式会社アクアマリンパークウェアハウス・鈴木泰弘代表取締役
鈴木泰弘(すずき・やすひろ)
株式会社アクアマリンパークウェアハウス 代表取締役。

アクアマリンふくしま
●商工会議所で「アクアマリンふくしま」の誘致に尽力!
―大学ご卒業後、いわき商工会議所に入られた理由は?
鈴木:首都圏の大学に進学しましたが、都会が少し苦手で、地元に帰ってこようと思っていました。バブル景気の真っ只中、(当時の竹下内閣が)ふるさと創生事業を立ち上げて、各自治体に1億円を配ったのをきっかけに地方経済の活性化に興味を持ちました。大学でも公共経済学を専攻していて、卒業論文も地方経済の再生がテーマでした。そんなときに商工会議所の求人の話をいただいて、軽い気持ちで入ったのがきっかけです。
―商工会議所には、どのくらいいらしたんですか?
鈴木:18年間、商工会議所にいました。経営指導員をやったり、経済産業省管轄の中小企業大学校で改めて学ぶ機会もいただきました。最も大きな仕事は、小名浜港の再開発事業です。当時、地元を挙げて、水族館「アクアマリンふくしま」の誘致事業をやっていました。これに合わせ、国・県・市・民間で協力して、小名浜港を“にぎわい”のある空間に変えていくのが目標で、隣の「いわき・ら・ら・ミュウ」も、この一環でできた施設なんです。

アクアマリンパーク
●小名浜港をにぎわいのある空間へ!
―さまざまな組織が「協力」とはいっても、「調整」にはご苦労もあったんじゃないですか?
鈴木:小名浜港は国の重要港湾に位置付けられています。管理は福島県ですが、国土交通省から国の整備費も投じられています。このため、かつてはイベント1つ行うにも、さまざまな申請や許認可が必要でした。そもそも一般人の立ち入りも禁じられていたんです。しかし、YES’89横浜博覧会の成功をきっかけに、横浜赤レンガ倉庫の再開発が行われ、地方港も人が集う場所にしようと機運が高まり、小名浜でも再開発の動きが起こりました。
―いまや、この地域を代表する観光名所の1つになりましたが、どのように運営が行われているんですか?
鈴木:アクアマリンパークは、小名浜まちづくり市民会議という民間の組織が委託を受け、管理者となっています。このため、いまでは、イベントなどの開催は、とてもスムーズになっています。(港の再開発では)全国トップクラスの高い評価をいただくようになりました。コロナ前は、年間に約180日、イベントが行われるほど、にぎやかな場所となりました。

小名浜美食ホテル「潮目の駅」
●商工会議所を飛び出して、食をテーマにした新しい会社「アクアマリンパークウェアハウス」を起業!
―「アクアマリンパークウェアハウス」は、どうして立ち上げることになったんですか?
鈴木:いま、この会社がある場所は、運送会社が所有していた倉庫でした。この倉庫も、私が再開発を担当していたのですが、再開発後の会社を作ることになって、私が「(商工会議所をやめて)やります!」と手を挙げたんです。正直、このままサラリーマンでいても、経営に携わることができるまで昇任するとは限りませんから、(このチャンスを活かして)自分がトップになって、やれるところまでやってみようと思ったんです。
―平成18(2006)年に立ち上げた「アクアマリンパークウェアハウス」という社名、そして、「小名浜美食ホテル」という屋号には、それぞれどんな意味がありますか?
鈴木:アクアマリンパークにある倉庫(ウェアハウス)ということで、そのまま「株式会社アクアマリンパークウェアハウス」としました。屋号を「小名浜美食ホテル」としたのは、食をテーマに、地元のお店に入ってもらって再開発を行うイメージでしたので、美味しい食・美食。

うにめし
小名浜美食ホテル(株式会社アクアマリンパークウェアハウス)がいわき駅の駅弁に参入する前は、平成17(2005)年まで、かつての平駅時代から駅前にあった「住吉屋」が駅弁を製造・販売してきました。当時の看板駅弁が「うに弁当」。小名浜美食ホテルでもその系譜は受け継がれています。現在は扇形の容器に入った「うにめし」(1000円)が作られ、いわき駅・湯本駅・泉駅のNEWDAYSで販売されています。

うにめし
【おしながき】
・うにめし(うにの炊き込みご飯、蒸しうに)
・煮物(帆立、人参、椎茸)
・大根しそ巻き
・ガリ

うにめし
ふたを開けると、フワッと広がる磯の香り。うにが炊き込まれたうにご飯の上に、蒸しうにも載って、見た目も贅沢な駅弁となっています。ガリでアクセントを付けていただけば、さらに箸も進むというもの。うにめしに加えて、帆立や人参、椎茸の煮物、さらに、いわき名物・大根のしそ巻きも入っていて、ご当地らしさも感じられる「うにめし」となっています。1000円という価格設定も、このご時世では、十分にありがたいものです。

E531系電車・普通列車、常磐線・久ノ浜~四ツ倉間
太平洋を車窓の友に、常磐線の列車が駆け抜けていきます。
- ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」
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- うにめし
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連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/