それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
生地が主役のクレープ屋さんです
今回ご紹介する中川和音さんは、高校を卒業したばかりの18歳。
でも勉強はあまり好きではなかったので、高校は普通科に進むよりも「ちょっと違った勉強をしてみたい」と考えます。東京都・東部地区で唯一の農業高校、葛飾区亀有にある「都立農産高校」の食品科に入りました。
高校時代はコンビニやお弁当屋さん、自転車屋さんでアルバイトをしていた和音さん。明るく愛想がいいので、「卒業したらうちで働かない?」と誘われたりしましたが、就職・進学のどちらも選ばず、自分がやりたいことを考えます。そして「お店をやりたい!」と思ったそうです。
父親の英明さんは、「和音は3歳のころから駄菓子屋さんごっこのような、お店を開く遊びをしていました。そのため『お店をやりたい』と言われたときも、それほど驚きませんでしたね」と話します。

人気の「あんこホイップ」は550円
和音さんがやりたいと思ったお店は「クレープ屋さん」。その理由を聞いてみました。
「クルッとクレープを丸く焼いていると、見ているお客さんが笑顔になるんですよ。笑顔をつくる夢のある仕事だなと思ったんです」
千葉県市川市に本店がある人気店、「ヤマグチクレープ」でアルバイトし、クレープづくりのイロハを学びます。
現役高校生でクレープ店を始めた中川和音さん。高校に通っていたときは放課後と土日の営業でした。それでも、お店の前には長い列ができ、6台のクレープ焼き器をフル稼働させていたそうです。
1人では手が回らないため両親に手伝ってもらったり、中学時代の友人にアルバイトをお願いしたりと、忙しい日々を過ごしました。

和音さんと父親の英明さん
3月11日に卒業式を迎え、グランドオープンした現在。昼12時~夕方6時までの営業で、定休日は木曜日です。仕事帰りのOLや、幼稚園に子どもを迎えに来たお母さん、バイクで買いに来たおじさん、ウーバーイーツを利用する人など、いろいろなお客さんがいます。
和音さんに「ナカガワクレープ」のこだわりを伺ったところ、18歳とは思えないほどのしっかりした受け答えが返ってきました。
「何と言ってもクレープの生地ですね。外はパリッと、なかはモチッとしています。

メニューも豊富で「デザート系」と「サラダ系」がある
ところが最近、小麦の値上げや卵不足、電気料金の値上げなどの問題があり、和音さんの顔は曇りがちです。
「クレープ焼き器は開店前から電気で温め、閉店まで付けっぱなしです。いまは値上げせずに頑張ります!」
「和音」という名前は、音楽の「和音(わおん)」から名付けたそうです。「和音」とはド・ミ・ソのように異なる音が共鳴し、心地よい音を響かせる状態のこと。
「ナカガワクレープ」では、お店の外でお母さんがお客さんの対応を、店内ではお父さんがレジや洗い物などの雑務を担当し、起業したばかりの一人息子を両親が優しく見守っています。まさに「和音(わおん)」のような、ほっこりと心温まるクレープ屋さんです。
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