外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が3月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ロシア大統領選で過去最高の得票率で勝利したプーチン大統領について解説した。
モスクワの「赤の広場」で開かれたクリミア半島併合10年を記念する集会で話すロシアのプーチン大統領=2024年3月18日(タス=共同) 写真提供:共同通信社
ロシア大統領選挙、プーチン氏が過去最高の得票率で圧勝
3月15日から17日にかけ投票が行われたロシア大統領選挙は開票率99%以上の時点でプーチン大統領が約7600万票を獲得し、得票率87%超とロシア大統領選挙で最も高い得票率で勝利した。
飯田)投票率は18日の時点で77.44%だそうです。
宮家)おめでたいことですよね。あの大きな国で5回も続けて勝てるものではないです。二十数年も独裁を続けるのは並大抵のことではありません。
飯田)スターリン超えだという新聞の見出しもあります。
西側への憧れが強いプーチン大統領
宮家)習近平さんも祝電を送ったそうですし、実は私もお手紙を書きました。「おめでとうございます。大変でしたね。予想通り得票率が9割近くになりましたね。でも、これで本当にロシア国民は幸せなのですか?」というような感じで、とても丁寧に書きました。それが21日の産経新聞に出ます。
飯田)産経新聞で連載されているコラム「宮家邦彦のWorld Watch」ですね。
宮家)「あわれプーチン」ですよね。
飯田)全体構造を維持するため、トップにずっと同じ人が君臨する必要があるのはなぜか。
宮家)いろいろ考えたのですが、やはりロシアは西側、西欧世界への憧れが強く、憧れの塊のような人たちなのだと思います。
民主化できないロシアは強権でいくしかない
宮家)劣等感の裏返しですよね。ただ、私はお手紙にも書きましたが、中国だって怖い国ですよ。「やはりロシアは中国に少し譲歩しているのですか? 二流国になってしまったのではないですか? ロシアの誇りはどこへいったのですか?」というような内容を書いてしまいました。
飯田)そうですね。
宮家)しかし、今はそれどころではない。北大西洋条約機構(NATO)と対峙していて、「NATO、何するものぞ」と思っている。東欧の国も含め、西側諸国は民主化して自由を享受しているわけです。でもロシアは、何回やってもそれができないから、強権でいくしかない。プーチンは良きにつけ悪きにつけ、愛国者ですよ。古き良きロシアを何とか維持し、再興したいと思っているのでしょう。
ウクライナが獲られてしまったら、「NATOは目と鼻の先」という恐怖心も
宮家)彼の理想はピョートル大帝ですよね。お手紙でも「あのピョートル大帝と同じくらいの快挙ですね」とお褒めの言葉を申し上げました。あれくらい悪い奴だという意味です。ロシアは南方にもあれだけ領土を拡大したのですから。
飯田)やはりモスクワやサンクトペテルブルクにいると、西からの圧力が怖いため、バッファーゾーン(緩衝地帯)をつくりたくなるのかも知れない。
宮家)ソ連崩壊で、300年かけてつくった東ドイツまでの緩衝国がなくなり、身内だと思っていたウクライナも西側に獲られそうになってしまった。ウクライナがNATOに入れば、モスクワは目と鼻の先になるので、強い恐怖心があるのでしょうね。劣等感と恐怖心の塊です。しかし、プーチンはきわめて伝統的、かつ強力な独裁者であり、「やはりロシアの統治はこれしかないのか」という感じがします。
力によって安定を求めるしかないロシア
飯田)ウクライナへの侵略は2年を超え、ロシアは世界を敵に回している状況ですよね。
宮家)逆効果になっています。わかってはいるけれど、やめられないのです。可哀想な人ですね。
飯田)ここでやめると、やはりロシアの政権は揺らぐのでしょうか?
宮家)やめたら弱さが先に出て、おそらくロシア人は彼を見捨てるのでしょうね。
飯田)強いリーダーを求めているのですか?
宮家)そうだと思います。日本は安定が嫌いではありませんが、彼らは日本人以上に安定を求めています。
飯田)ロシア人はその安定を、力によって求めるところがあるのでしょうか?
宮家)それしかないのです。
飯田)かつてモンゴルに攻められた記憶などがDNAに刻まれているのでしょうか?
宮家)そうですね。地理的環境の影響は大きいと思います。
- 2024年3月20日、モスクワのクレムリンで、大統領選の選挙運動代理人らを前にあいさつするプーチン・ロシア大統領(タス=共同)
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