もうすぐ7月です。夏といえば、木綿のTシャツに、洗いざらしのジーンズ! 汗を吸ってくれて、爽やかで気持ちいいですよね。

皆さんは、ジーンズをどこで買っていますか?

今回は、業界初!「走るジーンズショップ」のお話です。

業界初“走る”ジーンズショップ『デニムマン』、「儲けよりも、...の画像はこちら >>

おすすめの『ジャパンブルージーンズ』を手にする新倉さん

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

昭和の頃は、駅前の商店街に、個人経営のジーンズショップがありました。憧れのリーバイスをはじめ、リー、ラングラー。お手頃な国産メーカーといえば、ビッグジョンやエドウィンでした。

財布の中身と相談しながら、試着をしてサイズが決まると、店のおじさんが、大きな裁ち鋏でジョキ! ジョキ!「えっ、こんなに切っちゃうの?」と思うくらい、裾をバッサリ!そのあと、工業用ミシンで「ジャージャー! ジャージャー!」と手際よく縫ってくれて、お会計。あの頃、ジーンズを買うのは本当に楽しみでした。

業界初“走る”ジーンズショップ『デニムマン』、「儲けよりも、お客様としっかり対話して、愛着の持てる一本を選んでいただく」
夏にぴったりな、葛飾北斎デザインのシャツも販売

夏にぴったりな、葛飾北斎デザインのシャツも販売

さて、今回ご紹介する“走るジーンズショップ”『デニムマン』を営むのは、神奈川県平塚市在住の新倉健一郎さん、59歳です。小田原で生まれ育った新倉さんは、大学卒業後、箱根登山鉄道の関連会社「箱根登山興業」に就職します。この会社は、スーパー、ホームセンター、お土産店、アパレル専門店などを展開。その中にあったジーンズ専門店に、新倉さんは配属されました。ここから、ジーンズとの長い付き合いが始まります。

「入社した1988年は、バブル期の後半で、ジーンズを置けば売れる……、売上は右肩上がりで、あの頃は数字ばかり追いかけていましたね」

業界初“走る”ジーンズショップ『デニムマン』、「儲けよりも、お客様としっかり対話して、愛着の持てる一本を選んでいただく」
神奈川県の湘南・西湘・足柄地域を中心に出店

神奈川県の湘南・西湘・足柄地域を中心に出店

ところが、90年代から2000年代に入ると、駅前の路面店から国道沿いのロードサイド店へ、さらに大型ショッピングセンターへと、お客さんの足は移っていきます。次第にジーンズ専門店は街から姿を消していきました。

新倉さんが勤めていたジーンズショップも、ついに閉店が決まりました。会社に残る道もありましたが、「何かを始めてみたい」、そんなことを考えていたある日、新倉さんは奥さまと二人で、平塚市の隣・大磯町で開かれる、神奈川県下最大の朝市「大磯市」に出かけました。

業界初“走る”ジーンズショップ『デニムマン』、「儲けよりも、お客様としっかり対話して、愛着の持てる一本を選んでいただく」
ジーンズ以外に、天然藍染の商品なども販売

ジーンズ以外に、天然藍染の商品なども販売

手作りクラフトの店やキッチンカー、屋台などが100店以上も並び、その活気に包まれながら、新倉さんはふと思います。「移動販売のジーンズショップって出来ないものか。誰かがやっていたら、ノウハウを教えてもらおう」と。

ネットで調べてみても、見つからない。ジーンズメーカーの営業に問い合わせると、「聞いたことがない」との返事。つまり業界初。日本初かも? 誰もやっていなければ、それはそれで面白い。

業界初“走る”ジーンズショップ『デニムマン』、「儲けよりも、お客様としっかり対話して、愛着の持てる一本を選んでいただく」
オリジナル商品「デニムマン」のTシャツや帽子なども販売

オリジナル商品「デニムマン」のTシャツや帽子なども販売

こうして新倉さんは、50歳で起業を決意。

中古のキャンピングカーを購入し、2016年2月、ジーンズの移動販売をスタートしました。お店の名前は、「あなたのところにジーンズショップがやってくる!」、そんなイメージを込めて『デニムマン』と名付けました。

キャンピングカーの良さは、車内で立ったまま試着ができること。さらに、「キャンピングカーの中って、どうなっているの?」と興味津々で、買いに来てくれるお客さんも少なくないそうです。ジーンズの販売に加え、車内にはミシンも置いて、修理にも対応。こうして、業界初の「走るジーンズショップ」は、順調に走り出しました。

時代の波にもまれ、姿を変えてきたジーンズショップ。その栄枯盛衰を見てきた新倉さんに、移動販売の手応えを伺いました。

業界初“走る”ジーンズショップ『デニムマン』、「儲けよりも、お客様としっかり対話して、愛着の持てる一本を選んでいただく」
「移動販売は、夏の猛暑が心配です」と話す新倉さん

「移動販売は、夏の猛暑が心配です」と話す新倉さん

「今はネットで服を買う時代になりましたが、ジーンズは違うと思うんです。メーカーによってフィット感が違いますし、1インチの差で履き心地がまるで変わります。だから、試着せずにジーンズを買うのは“博打”のようなもの。うちに買いに来るお客様には、必ず試着してからご購入いただいています。

車に積める在庫は、もちろん店舗よりも少ないので、事前にサイズや好みを聞いて、サンプルを用意してから試着していただくこともあります」

『デニムマン』を創業して、今年で10年目! コロナ禍でも、意外なことに売上はあまり落ちませんでした。ただ、ここ最近の猛暑には、さすがに応えるようで……、「真夏の移動販売は、正直きついですね」と、新倉さんは困り顔です。

「若い頃は、売上や数字ばかり追っていましたが、今は儲けよりも、お客様としっかり対話して、愛着の持てる一本を選んでいただく……、擦り切れたり、穴が空いたりしても、それを補修して長く履いていただく、そんな店を目指しています」

デニムマン・新倉健一郎さんのジーンズ人生は、これからも続きます。

radikoのタイムフリーを聴く:https://radiko.jp/share/?sid=LFR&t=20250625050000

編集部おすすめ