『木の上の軍隊』堤真一×山田裕貴、戦後80年の今こそ見たい沖縄映画

2025年07月19日(土)11:00

Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1260回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X（トーキョーシネマクラウドエックス）」。

今回は、7月25日から全国公開される『木の上の軍隊』と、大ヒット上映中の『スーパーマン』をご紹介します。

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『木の上の軍隊』平和への祈り、そして生きることへの渇望

作家・井上ひさしの原案を元に、こまつ座で上演された同名の舞台を実写映画化した『木の上の軍隊』。沖縄にて熾烈な地上戦が行われた太平洋戦争末期。2人の日本兵が終戦を知らずに2年もの歳月を過ごしたという実話から生まれた物語は、先行上映されている沖縄で大ヒットを記録。7月25日から全国公開されることでも話題となっている一作です。

『木の上の軍隊』のあらすじ

1945年。沖縄戦の中でも激戦地のひとつとなった伊江島に、飛行場の占領を目的とする米軍が侵攻。激しい攻防戦が繰り広げられた末、島は壊滅的な状況に陥っていた。敵の銃撃に追い詰められた山下一雄少尉と純朴な新兵・安慶名セイジュンは、大きなガジュマルの木に登って身を潜める。仲間の死体が増え続ける中で、圧倒的な戦力の違いを目の当たりにした山下は、援軍が来るまで木の上で待機することを決断する。

戦闘経験が豊富な山下と、生まれてこの方、島から一度も出たことがない安慶名。2人きりで恐怖と飢えに耐え忍ぶ日々が続く。

やがて戦争は、敗戦をもって終結。しかし、そのことを知る術のない２人は、カジュマルの木の上で“孤独な戦争”を続けていた……。

『木の上の軍隊』のみどころ

ダブル主演を務めたのは、堤真一と山田裕貴。堤真一が、厳格で恐ろしい上官・山下を。

山田裕貴が、沖縄出身でちょっぴり呑気な新兵・安慶名を演じています。正反対の性格を持つ２人のやり取りはボケとツッコミが絶妙で、戦争を題材にした映画ならではの緊張感に満ちた本作において、一服の清涼剤のように感じられるシーンも。これが初タッグとは思えない阿吽の呼吸で観客を魅了します。

共演には津波竜斗をはじめ、玉代㔟圭司、尚玄、岸本尚泰、城間やよい、川田広樹など、沖縄出身の俳優が集結。また、こまつ座の舞台で上官役を演じた山西惇が名を連ねているのも見どころのひとつです。

監督・脚本を手がけたのは、沖縄出身で新進気鋭の監督として期待されている平一紘。こまつ座の魂を受け継ぎながら、沖縄県民の視点からも戦争を捉えた作風となっており、こまつ座「戦後“命”の三部作」に位置付けられる名作に新たな息吹を吹き込んでいます。

戦争の無惨さや相互理解の難しさを、演者の台詞によって観客の想像力を掻き立てて伝えていく舞台とは異なり、本作ではその台詞のひとつひとつを映像に具現化。戦争の恐ろしさや変化していく島の様子が視覚として直接伝わってくることで、舞台をご覧になったことがある人も、新たな気持ちで本作に触れることが出来るのではないでしょうか。

戦後80年となる2025年の今こそ観てほしい。平和を願わずにはいられなくなる秀作です。

『スーパーマン』ジェームズ・ガン節全開！アメコミ映画の醍醐味が詰まった快作

1938年にコミックが刊行され、これまで幾度も映像化されてきた『スーパーマン』。アメコミヒーローの原点として世界中で愛されてきたキャラクターが、完全新作となってスクリーンに帰ってきました。

デイリー・プラネット社の新米新聞記者として働くクラーク・ケント。その正体は、クリプトン星からやって来たスーパーマン。「目の前で傷ついている人を救いたい」という信念のもと、人々の平和を守り続ける最強ヒーローだ。

そんな彼を地球の脅威とみなす天才科学者で大富豪のレックス・ルーサーが、世界を巻き込む巨大な計画を密かに進行していて……。

メガホンを取ったのは、「アベンジャーズ」シリーズなどの大ヒット作を手がけてきたジェームス・ガン監督。スーパーマン、恋人のロイス・レーン、そしてスーパーヴィランのルース・レックスに加え、スーパーマンの相棒犬クリプトやヒーローチーム「ジャスティス・ギャング」も登場。これまでの「スーパーマン」シリーズに比べて、チーム色が増した感があります。

最強だけど無敵ではない。倒れても何度も立ち上がる新生スーパーマンに、胸アツになること間違いなし。DCユニバースの新たな幕開けとなる注目作。是非、大きなスクリーンで体感して。

＜作品情報＞
木の上の軍隊
沖縄にて先行公開中／ 2025年7月25日（金）から新宿ピカデリーほか全国公開

出演：
堤真一　山田裕貴
津波竜斗　玉代㔟圭司　尚玄　岸本尚泰　城間やよい　川田広樹（ガレッジセール）
玉城凛（子役）西平寿久　花城清長　吉田大駕（子役）大湾文子　小橋川建　蓬菜つくし　新垣李珠　真栄城美鈴／山西惇

監督・脚本：平一紘
原作：「木の上の軍隊」（株式会社こまつ座・原案井上ひさし）
主題歌：Anly「ニヌファブシ」
企画：横澤匡広　　プロデューサー：横澤匡広小西啓介井上麻矢大城賢吾
企画製作プロダクション：エコーズ　企画協力：こまつ座
制作プロダクション：キリシマ一九四五 PROJECT9
後援：沖縄県　　特別協力：伊江村
製作幹事・配給：ハピネットファントム・スタジオ
(C)2025「木の上の軍隊」製作委員会

＜作品情報＞
スーパーマン
大ヒット上映中

出演：デイビッド・コレンスウェット　レイチェル・ブロズナハン　ニコラス・ホルト　エディ・ガデギ　ネイサン・フィリオン　イザベラ・メルセド　アンソニー・キャリガン　プルイット・テイラー・ヴァンス　ネバ・ハウエル　スカイラー・ギソンド　ズラッコ・ブリッチ　マリア・ガブリエラ・デ・ファリア　サラ・サンパイオ　ウェンデル・ピアース　ミカエラ・フーバー
日本語吹替版：武内駿輔　種﨑敦美　浅沼晋太郎　　諏訪部順一　東地宏樹　松岡美里　津田健次郎　ささきいさお　宮沢きよこ　下野紘　千葉繁　行成とあ　ファイルーズあい　楠見尚己　櫻庭有紗　長田庄平（チョコレートプラネット）　松尾駿（チョコレートプラネット）

監督：ジェームズ・ガン
原題：Superman
配給：ワーナー・ブラザース映画
(C) & TM DC (C) 2025 WBEI

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者：八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね公式サイト http://yakumox.com/

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