「ランバイク」をご存知でしょうか?ペダルのない子ども用二輪車で、足で地面を蹴って進みます。主に2歳から9歳くらいの子ども向けに作られていて、バランス感覚や体幹を養うのに役立つとされています。

今回は、そのランバイクからオートバイの世界最高峰レース「MotoGP」を目指す17歳の高校生ライダーの物語です。

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ライバルと競い合う理智くん(黄色い帽子)

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

千葉県佐倉市に住む高校2年生、髙平理智くんがオートバイと出会ったのは、なんと1歳の時でした。父・髙平悠生さんは、日本を代表するロードレーサーの関口太郎選手と知り合いで、まだ1歳の理智くんをベビーカーに乗せて、サーキットへ応援に行きました。そこに子ども用の50ccエンジンのポケットバイク(ポケバイ)が展示されていて、理智くんが「これに乗りたい、乗りたいよ」とせがみます。そこで父は、クリスマスに「ランバイク」をプレゼントしました。理智くんはそれにまたがり、しばらく楽しく遊んでいました。

オートバイの世界最高峰レース「MotoGP」を目指す17歳の高校生ライダー
9歳で「ランバイク世界選手権」(オープンクラス)のチャンピオンに

9歳で「ランバイク世界選手権」(オープンクラス)のチャンピオンに

3歳の時、再び父親に連れられてサーキットに観戦しに行くと、子どもが遊べるランバイクのコースがありました。悠生さんはレースを観戦中、理智くんをランバイクで遊ばせていると、朝から夕方まで飽きることなく乗り続ける姿を見ていた係の人から、「そんなに好きなら、レースに出てみたら?」と声をかけられます。試しにランバイクのレースに出場してみたら、いきなり優勝。4歳になると「全日本ランバイク選手権」でチャンピオンに!

6歳になると「そろそろオートバイに乗りたい」という理智くんに、クリスマスに「ポケバイ」をプレゼントしますが、「ただし、レースは危険だから出場させない」と父は条件をつけます。それでも飽き足らず、「レースに出たい」とせがむ息子に、父は言います。

「世界チャンピオンになる覚悟がない限り、やらせない」

その世界チャンピオンとは、1000ccのマシンで争うオートバイの世界最高峰レース「MotoGP」(モトジーピー)です。うなずく息子に、父はこう言い放ちます。「だったら、まずはランバイクで世界チャンピオンになれよ」

オートバイの世界最高峰レース「MotoGP」を目指す17歳の高校生ライダー
10歳の時、ポケットバイクのレースに出場

10歳の時、ポケットバイクのレースに出場

「ランバイクで勝つ決め手は、もちろんスタートダッシュですが、それだけではなく、どれだけ頭を使うかも大事です」と理智くんは言います。1コーナーでどのポジションを取るか、直線で誰の後ろにつくか、コースを頭に叩き込んで、レースに臨みます。まさに頭脳戦です。9歳になった理智くんは、ランバイクの世界チャンピオンを掴みます。10歳からポケバイのレースに出場し、千葉のポケバイ選手権に優勝!11歳で、100ccの「ミニバイク」を経て、鈴鹿レーシングスクールに入り、250ccのクラスで腕を磨きます。

理智くんにとって、大きな転機になったのは、14歳、15歳の2年間、「MotoGP」の登竜門と言える「アジアタレントカップ」の出場でした。この大会にはテストに合格しないと出られません。アジアから500人もの若手ライダーが応募し、合格者はわずか9人。20人が出場するレースで、理智くんは、2024年、年間3位に輝きます。

その中で衝撃を受けたのが、同い年のインドネシアのプラタマ選手でした。

理智くんはスクールで「ランバイクとオートバイは乗り方が違う」と教わっていました。

「プラタマ選手は、自分よりも圧倒的に速くて、うまかったんです。よく見るとランバイクで走るような乗り方をしていたんですよ。その方が速く走れるとわかって、ランバイクの乗り方に戻しました」

オートバイの世界最高峰レース「MotoGP」を目指す17歳の高校生ライダー
2024年「出光Asian Talent Cup」ランキング3位

2024年「出光Asian Talent Cup」ランキング3位

昨年16歳で、250ccクラスの「アジアロードレース選手権」と、「全日本MFJカップ」に参戦します。開幕戦から上位争いを繰り広げ、途中まで総合1位をキープ。ところが5月、トレーニング中に転倒し、右手の指3本を骨折。8月には、レース中に追突され、左腕を骨折する重傷を負います。その後のレースを欠場し、悔しさの残る一年でした。

この4月から2026年シーズンが始まります。理智くんは、モータースポーツの聖地・ヨーロッパに初挑戦。若手ライダー向けの世界選手権に出場し、ヨーロッパ6カ所を転戦します。第一戦は4月9日、イタリアのクレモナ・サーキットです。

「自分がどこまで通用するのか、試したいです。そして世界で戦えることを証明したいです」

名前の「りいち」には、仏教用語の「理解して実行する」という意味と、英語の「reach(到達する)」という願いが込められています。将来の目標は、オートバイ世界選手権「MotoGP」のチャンピオン!その頂点にたどり着くまで、理智くんは走り続けます。

写真提供:父 髙平悠生さん

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