「子どもの身長は、どうせ遺伝で決まるでしょう」とあきらめていませんか?「身長は遺伝だけでは決まらない!」と語るのは、身長治療のスペシャリストで、東京神田整形外科クリニック院長を務める田邊雄さんです。実は、子どもの身長は食事の栄養バランスをよくすることで、伸ばすことができるそう。子どもの背を伸ばすために、保護者はどんなことができるのか。田邊さんの書籍『身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30』(Gakken)から一部を抜粋して紹介します。■身長は遺伝だけでは決まらない!「身長は遺伝で決まるから」と思ってあきらめていませんか? それが本当なら、日本人の平均身長はいつの時代も大きくは変わらないはずです。しかし、時代を遡ってみると日本人の平均身長は大きく変化しています。縄文時代の男性の平均身長は約160cm、現代の男性は約170cm。縄文時代と比べると、約10cmも平均身長が高くなっています。このような平均身長の変化の背景にあるのは、間違いなく栄養状態です。縄文時代に比べてその後の古墳時代のほうが約4cmも背が高くなったのは、稲作が普及して食糧の供給が安定したからだと考えられています。その後、仏教の影響で肉食を避ける時代が続き、さらに江戸時代には急激な人口増加、たびかさなる飢饉の影響で栄養状況は悪化。古墳時代の平均身長を上回ることはありませんでした。日本人の平均身長が再び高くなりはじめたのは明治時代に入ってから。文明開化によって肉食が広まり、栄養状態が改善され、次第に平均身長が高くなっていったのです。もうひとつ、お伝えしておきたいのが、遺伝身長には大きな誤差があるということです。遺伝身長とは親の身長から導き出す子どもの最終身長の予想値です。 男子の場合:遺伝身長=(父親の身長+母親の身長+13)÷2 ±9cm女子の場合:遺伝身長=(父親の身長+母親の身長ー13)÷2 ±8cm(現・浜松医科大学特命研究教授の緒方勤先生が2007年に発表した計算式) たとえば、父親が170cm、母親が155cmなら、男子の場合は(170+155+13)÷2=169cm。±9cmの幅があるので、子どもの遺伝身長は160~178cmとなります。男子の遺伝身長の振れ幅は18cmで、高いほうに振れた場合、父親より8cm高くなります。もちろん、これはあくまで予想値ですから、このとおりになるとは限りません。栄養状態がよければさらに高いほうに振れ、遺伝身長より高くなる可能性もあるのです。だから、断言します。「身長は遺伝だけでは決まらない」。栄養状態をよくすることで、身長を伸ばすことはできます。■子どもの栄養状態を把握できている親は、ほぼ0%クリニックでたくさんの親御さんとお話をしてきたなかで感じているのは、みなさん子どもの身長を伸ばすことに対して熱心に取り組む気持ちがあるにもかかわらず、子どもの栄養状態を把握できている親は、ほとんどいないということです。「お子さんは昨日、何キロカロリー摂取しましたか?」「お子さんの体脂肪率は?」「たんぱく質の摂取量は?」という問いに答えられる親は、ほぼゼロです。そんな状態でも、「我が子はしっかり栄養が摂れている」と言いきれますか?「それなりに食べているし、栄養は足りているはず」と思っていたとしても、実際は栄養が足りていないケースが珍しくありません。それが、近年耳にすることが増えた「新型栄養失調」です。新型栄養失調とは、栄養バランスの乱れが原因で起こる栄養失調で、さまざまなケースがあります。摂取エネルギー(カロリー)は足りているのに、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどが不足しているケースもあれば、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素に加えてエネルギー自体が足りていないケースもあります。エネルギー不足、栄養不足で身長が伸びにくくなることはわかっていますので、このような状況は避けなければいけません。子どもの場合、特に学校給食がない日になると栄養バランスの乱れが起こりやすいことがわかっています。厳しい言い方になりますが「家庭での食事が、子どもの身長の伸びを妨げている可能性がある」ということです。「子どもの成長期」という限られた期間にベストを尽くすためには、子どもの栄養状態を把握することが親の最重要課題です。まずはそのことを頭に入れておきましょう。 この書籍の執筆者:田邊 雄 プロフィール東京神田整形外科クリニック院長。金沢医科大学医学部を卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院整形外科へ入局。西新宿整形外科・院長職を経て、2020年に東京神田整形外科クリニックを開業。これまでの活動が評価され、『ウォール・ストリート・ジャーナル』にて、「Next Era Leaders(次世代のリーダーたち)」に医師として最年少で選出された。身長治療のスペシャリストとして、YouTubeチャンネルやInstagramなどのSNSでも積極的に発信している。