2001年にICカード「Suica」がデビューして以来、そのマスコットキャラクターとして知られてきた「Suicaのペンギン」が2026年度末をもって「卒業」することが発表された。四半世紀にわたって親しまれたSuicaのペンギン。
永遠にマスコットキャラクターであり続けると思っていただけに、このニュースは世間に大きな衝撃を与えた。

「卒業」撤回を願う署名運動が始まったり、公式グッズを販売するサイト「JRE MALL」にアクセスが集中するなど、早速影響が表れている。

■SuicaのマスコットからJR東日本のマスコットへ
「まるでペットのようだったのに…」Suicaペンギン卒業で始まるロス。リュック、Tシャツ…愛用者の嘆き
JR東日本の駅でよく見かけるこんなポスターも間もなく見納めになる

Suicaのペンギンは、当初はICカードのキャラクターとして目に留まる程度だった。駅やJRの車内で見かける、あくまで“Suicaのマスコット”であり、鉄道を離れると存在感はなかった。それが、いつの間にか独自の存在感を持ち始め、カードとは関係なくJR東日本のマスコットとして幅広く見かけるようになった。

Suicaは電車に乗るためのきっぷの代わりになるものという固定観念から離れ、駅構内での買い物だけではなく、駅とは関係のないコンビニや各種店舗でも広く利用できるようになっていくのと歩調を合わせるように、Suicaのペンギンもその活動の幅を飛躍的に広げていった。

もちろん、JR東日本に関係するマスコットとしてではあるものの、カレンダーや日用品のグッズなどとしてありとあらゆるところで目にするようになった。

■Suicaのペンギンは、鉄道ガイドの旅のお供
鉄道ガイドである筆者宅でも、いつの間にかSuicaのペンギンは増殖しつづけ、マグカップ、おにぎりケース、コースターそしてリュックサックにもアクセントとして出没。
「まるでペットのようだったのに…」Suicaペンギン卒業で始まるロス。リュック、Tシャツ…愛用者の嘆き
夏場によく着用しているTシャツ

さらに、夏場はSuicaのペンギンTシャツを着て、外出時や旅行でも一緒に過ごすなど、なくてはならないペットのような存在になっている。anello(アネロ)のリュックは別に見せびらかしているわけではないのだが、他人の目に留まるようだ。

昨日も店での買い物時に、レジ袋を購入せずに買った商品をリュックにしまっていたところ、レジ係の若い女性に、「そのペンギンかわいいですね!」と声を掛けられた。自分が褒められたようで、なんだか誇らしい気持ちになった。


このバッグは、JRE MALLで購入したもの。意外に高価で、安い買い物ではなかった。といっても、ウラがあり、Suicaで電車に乗ったり、買い物をしたりして貯まったJREポイントをかなり充当しているので、全額自腹ではない。しかし、定価はかなり高いので、わざわざ買う人は少ないのではないだろうか。珍しいリュックサックであることに変わりはない。

おにぎりケースも同じくJRE MALLで購入したものだ。妻が毎日のようにおにぎりを作ってこのケースに入れてくれるので、リュックとともに愛用している。外出時にも持ち歩き、近場に電車で出掛ける際は、2階建てグリーン車の中で食べるのが、ちょっとしたぜいたくな楽しみとなっている。

もちろん、乗車時にはモバイルSuicaで天井にタッチするので、ペンギン尽くしになってしまう。持参しているタブレットの待ち受け画面にもペンギンが登場するので、やはりまるで同行するペットのような存在だ。

■イルカの「ことちゃん」が後任に立候補
しかし、あと1年ほどでSuicaのペンギンは「卒業」してしまうという。これほどまでに親しんだキャラクターがいなくなってしまうと、その後の人生はどうなってしまうのだろうか? ロスから立ち直れるのか、不安になるものだ。
思ってもみなかった事態だけに、動揺は隠せない。

ある意味、深刻な事態ではあるが、四国を走る私鉄「ことでん(高松琴平電気鉄道)」のキャラクター・イルカの「ことちゃん」がSuicaのペンギンの後任に立候補した。ジョークだとは思うけれど(案外、本気かな?)、心を和ませる話だ。JR東日本も無視することなく、ジョークで返信してほしいものだ。
「まるでペットのようだったのに…」Suicaペンギン卒業で始まるロス。リュック、Tシャツ…愛用者の嘆き
四国のことでんのマスコットキャラクターは「イルカのことちゃん」。写真左下に小さく映っている

こうしたマスコットキャラクターは、イルカもそうだが、JR西日本のICOCAキャラクター・カモノハシのイコちゃん、関東の大手私鉄・相鉄(相模鉄道)の「そうにゃん」(ネコ)など人気者は皆かわいらしい動物がモデルだ。Suicaペンギンの後任もやはり動物由来のマスコットになるのだろうか? 引退が本決まりなら、新しいマスコットがどうなるのか、楽しみに待つとしよう。

この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
編集部おすすめ