子どもが成長するにつれて、「周りの子とわが子の違い」に目が向き始めます。ほかの子はお利口にしているのに、わが子は注意すると「いやだ!」と大声でわめいたり、登園・登校の際に「ママがいい」と大泣きしたり。
「なぜうちの子だけ?」と不安を感じる保護者は多いでしょう。

モンテッソーリ講師の丘山亜未さんは著書『1分だけ子どもを待ってみる モンテッソーリ流 子どもの才能を伸ばす100の小さなこと』(青春出版社)で、「行動よりも、なぜそうしたのかを見ることが大切」と語ります。

本記事では、言葉ではうまく表現できない子どもの気持ちをどう解釈すべきかを、同書から一部抜粋・編集してご紹介。

さらに記事の後半では、なぜ子どもの行動には「必ず理由がある」と言えるのか、その根本にあるモンテッソーリ教育の視点についても解説します。

■怒りっぽい子は、感情を分かち合える子
床に寝転んで泣き叫ぶかんしゃく。注意されると「うるさい!」「やだ!」と強い言葉を返す姿。ゲームで負けると「もうやんない!」と怒る。

そんなわが子を見て、「このままで大丈夫かな?」と心配になる親御さんも多いでしょう。

けれど、かんしゃくも怒りっぽさも、ふてくされも、根っこは同じ。それは「感情を扱う練習中」の姿であり、「心を外に出して表現できる力」のあらわれです。

怒りを大きくあらわせる子は、喜びや楽しさも全身で表現できる子。

飛び上がって喜んだり、笑い転げたり、ワクワクして語ったり……。
そんな豊かな感情の動きはその子の魅力であり、周りを明るくするエネルギーでもあります。

感情の振れ幅は、心の豊かさの証。大きな感情を押し殺さずに出せるのは、この子の「強さ」でもあるのです。

とはいえ、ときには親も疲れます。「またか……」「もういや」と感じるのは自然なこと。

そんなときは、気持ちを受け止めながらも「でもこれはしてはいけないよ」と短く伝えて、少し距離と時間をおきましょう。

まだ気持ちをうまく扱えない年齢ですが、感情を出したり・ぶつけたり・落ち着いたり――そういった経験を重ねる中で、少しずつ気持ちを整理し、言葉にする力が育っていきます。

手がかかる分、笑うときも全力で、人を惹きつける存在になる。

親から見れば“困った姿”も、実はその子らしい魅力を形づくっているのです。

■甘えん坊な子は、つながりを大切にできる子
登園時に泣いて親から離れられない子。いつまでも「一緒がいい」とベッタリする姿に「愛情不足?」「このまま自立できないのでは」と心配になる親御さんもいるでしょう。

けれど、親から離れられないのは「弱さ」や「不足感」ではなく「安心を求めるサイン」。
毎回応えるのは大変ですが、その時間は子どもが安心を蓄えるために必要な時間です。

甘えん坊な子は「人とのつながり」に敏感で、「ひとりで頑張る」よりも、「一緒に頑張る」ことで力を発揮します。

そうして安心を積み重ねた子は、そのやわらかい感性で人を惹きつけ、人との関係を深くあたたかく育てていきます。

■慎重すぎる子は、状況を読む力のある子
公園の遊具の前で、固まってしまう。

新しい習い事やお友達の輪に、なかなか入っていけない。

そんな子どももいます。

動く前に立ち止まって想像できるのは、危険を避け、自分を守るための大切な力。慎重な子は状況を観察し、人の様子を丁寧に読み取る力に恵まれています。

一歩目はゆっくりでも、じっくり見てから動くので、覚えたことは確実に身につきやすい。そこには「丁寧さ」や「責任感」も隠れています。

大人が心がけたいのは立ち止まる姿を急かさず、「やってみても大丈夫」と、本人が納得できるまで見守ること。慎重である自分を尊重された子は、冷静に周囲を見渡し、安心と安全を大切にできる人へと育っていきます。


■解説:わが子の行動すべてに「理由」がある
子どもの行動を見て、つい「どうしてこんなことをするの?」と思ってしまう。でも、モンテッソーリ教育では、その行動を止めるよりも、まず「なぜそうしたのか」を見ようとします。

叩くのは、相手と関わりたいから。泣くのは、気持ちが追いつかないから。反発するのは、「自分で決めたい」という意志が芽生えているから。どんな行動にも、必ずその子なりの理由があります。

モンテッソーリは、子どもを“できない存在”ではなく、“成長の途中にある生命”として見つめました。だから、目の前の行動を「問題」としてではなく、「発達のサイン」として受け取ります。

そして何より大切なのは、子どもの「気持ち」と「意志」を受け取ること。「やりたい」「自分でやる」と言えるのは、子どもが自立に向かおうとしている証。その気持ちを尊重してあげてください。

うまくいかなくても、その挑戦をくり返すことで、子どもは「自分にはできる」という感覚を育て自立に向かって力強く進んでいきます。


そして最後に、大人の私たちができるのは、信じて待つこと。

子どもを信頼するというのは、「きっとできるはず」と結果を期待することではありません。「この子の中に成長の力がある」と信じて、見守ること。

大人のまなざしが穏やかであるほど、子どもの中にも静かな安心が広がっていきます。この書籍の執筆者:丘山亜未 プロフィール
株式会社kototo代表。モンテッソーリ幼児教室「ちいさないす」とモンテッソーリの学びを広げる教育事業「kototo Montessori Life」を主宰し、2万5,000組以上の親子を支援する。著書に『子どもの才能を伸ばす5歳までの魔法の「おしごと」』、『0~7歳 モンテッソーリ教育が教えてくれた子どもの心を強くする10のタイミング』(どちらも青春出版社刊)。
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