マイル修行僧が殺到「島民が乗れない」事態…批判のウラには離島路線を担う航空会社の切実な事情も
琉球エアーコミューター(RAC)の飛行機、ボンバルディアのDHC-8-400カーゴコンビ(画像は筆者撮影)
日本の国内線のうち、特に離島路線は、陸上交通がない島民にとっては買い物や通院、通学に不可欠な「生活の足」となっている。先日、「マイル修行で島民が乗れない」事態が話題になった琉球エアーコミューター(RAC ※日本航空=JALグループ)の沖縄・宮古-多良間線もその1つだ。


そもそもマイル修行とは何なのか、なぜ沖縄なのか。航空事情に詳しいAll About 旅行ガイドが解説する。

■地元紙「島民の生活に支障」と相次ぎ報じる
沖縄県の多良間島は、宮古島と石垣島の中間に位置する宮古諸島の島で、人口は約1000人。飛行機が宮古島から1日2往復4便運航されるほか、片道約2時間のフェリーが基本的に1日1便ある。

そのRAC宮古-多良間線で最近、「2月まではほぼ満席で、島民が予約できない」事態が発生して話題となった。地元紙『琉球新報』『沖縄タイムズ』も、「島民の生活に支障をきたしている」といった内容の記事を相次いで報じた。そして多良間村議会は1月28日、RACに対し、島民優先枠の導入やマイル加算対象外を要望したという。

満席の原因については両紙とも、JALのマイルが通常より貯まる「ダブルLife Status ポイントキャンペーン」で予約が殺到したことにあるとしている。これに対応し、RACは2月の宮古-多良間線、那覇-宮古線を増便。さらに、2月3日以降の新規予約は宮古ー多良間線をキャンペーンの対象外(~2月末まで)とした。

■1日ひたすら搭乗を繰り返す「マイル修行」
「マイル修行」とは、飛行機に搭乗した実績に応じて付与される資格(ステイタス)を獲得するため、出張や旅行といった目的地への移動ではなく、飛行機に乗ることをただひたすら繰り返す行為を指す。厳密には、マイルを貯める以上に「搭乗実績を積む」ことが目的だ。


例えば、1日“修行”する場合、早朝便で羽田-那覇間を移動し、その後、宮古-多良間、宮古-石垣間などの短距離路線にできる限り搭乗する。到着から次の出発までのたったの数十分しかないケースもあるため、空港から出て島内観光することは皆無だ。離島の場合は行きも帰りも同じ飛行機、さらにその次の飛行機も同じ状況で「周りの乗客がずっと同じ顔触れ」だったこともある。

そんな修行僧/修行尼と呼ばれる人々は、どこまでも効率よく、費用を抑えてステイタスを獲得したがる。ネット上にも飛行機やホテルの“修行”関連記事・動画は大量に公開されているし、SNSのプロフィールに自身が保有する航空会社やホテルのステイタスを書き連ねたアカウントも多く見かける。

実態としては、飛行機旅行というよりも日々の買い物やクレジットカード決済のポイントを貯めて使う「ポイ活」「節約術」に近い。

■JALで「回数修行」と沖縄が人気の理由
今回問題になったRAC宮古-多良間線のマイル修行は、飛行機で20分ほどの短距離を往復するもの。

JALでは、1~12月の年間搭乗数または搭乗ポイントで貯まる「FLY ONポイント」数に応じてステイタスを獲得できるため、短距離で搭乗1回にカウントされる「回数修行」は特に人気が高い。

なかでも1~2月の沖縄は閑散期で運賃が安いうえ、北海道のように雪による欠航リスクがないため人気が高い。離島路線中心のRACは、1機の飛行機で島から島を巡るフライト「アイランドホッピング」も人気がある。

ANAにも同様のステイタス制度があるが、現在は搭乗ポイント(プレミアムポイント)のみが対象となっている。

過去にはANAでも搭乗回数でステイタスを獲得できた時代があったが、2010年ごろ、羽田-伊豆大島線で「マイル修行」の利用者が増えたことで島民が利用しづらくなり、ルール変更された経緯がある。
その後、搭乗率が下がったため、ANAは2015年10月末で羽田-伊豆大島線から撤退した。

高速船や他の航空会社の就航もあるため今回の多良間島とは事情が少し異なるものの、マイル修行が影響を及ぼしたことは共通する。

■島民の言い分、航空会社の事情
マイル修行僧が殺到「島民が乗れない」事態…批判のウラには離島路線を担う航空会社の切実な事情も
RACは沖縄の島々を結ぶJALグループの航空会社(画像は筆者撮影)
生活路線である離島路線で、本来の乗客である島民が乗れないことは「困る」と異を唱えるのは当然のことである。しかも、飛行機で着いてすぐ引き返す「タッチ」と呼ばれる行動は、島への宿泊どころか観光すらしないため経済的なメリットもない。マイル修行に否定的な目が向けられるのも、致し方ない面もある。

一方で航空会社にとっては、お金を支払って乗ってくれる“お客さま”に他ならない。しかも、離島路線は「乗客が数えるほど」しかいないことも珍しくはない。たとえ「乗客ゼロ」でも運航し続けなければならないのだ。

沖縄県の資料によると、宮古-多良間線の搭乗率は59.9%(2024年度)。「不採算となることが予想される」路線の1つとなっている。

たとえ本来の目的と異なる搭乗であっても、採算が苦しい離島路線の維持は乗客がいてこそ。搭乗率が低いままだと、ANAの羽田-伊豆大島線のような撤退もあり得る。


予約時に島民優先枠を設けて座席が余れば一般販売する、また、マイルや搭乗回数を対象外としたり減らしたりすることなどが、この問題の解決策として考えられる。だが、マイル修行は「コスパが悪い」となれば別路線に鞍替えするため、今度は搭乗率の低下が問題になるのだ。

経営の生命線である「搭乗率」を維持しながら、島民の生活を支える「足」であり続けること。この矛盾こそが、離島路線が背負う宿命なのかもしれない。

この記事の執筆者: シカマ アキ
大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、読売新聞の記者として約7年、さまざまな取材活動に携わる。その後、国内外で雑誌やWebなど向けに、取材、執筆、撮影など。主なジャンルは、旅行、飛行機・空港、お土産、グルメなど。ニコンカレッジ講師をはじめ、空港や旅行会社などでのセミナーで講演活動も。
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