5年で漁獲量5倍! 京都で“海のダイヤ”クロマグロが豊漁なのに「値下がりしない」のはなぜ?
京都府北部の舞鶴市で水揚げされた天然の小型クロマグロ(筆者撮影、以下同)
クロマグロ(本マグロ)は、その美しさや価値の高さから「マグロの王様」「黒いダイヤ」とも評される最高級品として知られる。

京都府は近畿圏で1、2を争う漁獲量で知られるが、近年は、国際基準で定められた漁獲量にすぐ達するほどの豊漁が続いているという。
クロマグロはなぜ豊漁なのか、それによって一般の消費者も安く食べられるようになっているのだろうか。現地を取材した。

■クロマグロの漁獲量、この5年で約5倍に
京都のクロマグロ漁は、毎年12月1日から開始。府内北部の日本海沿岸部で行われる。同じ冬の時期に漁獲される定番のズワイガニが沖合の底びき網漁法なのに対し、クロマグロは定置網漁法。30kg以上が「大型」、30kg未満が「小型」に大きく分類される。
5年で漁獲量5倍! 京都で“海のダイヤ”クロマグロが豊漁なのに「値下がりしない」のはなぜ?
「都まぐろ」初競りの様子。右は京都府の武田一寧副知事(2026年2月11日、京都府舞鶴市)
なかでも近年は特に、地元で「中シビ」と呼ばれる小型のクロマグロの漁獲量が増加。京都府は2021年から3年連続で近畿1位の漁獲量となり、5年前の約5倍になった(2024年は和歌山県がトップで、京都府は2位で漁獲量は約39.9トン)。水揚げ後は、大型が東京の豊洲市場など全国へ、小型は主に地元(京都北部)や京都市、大阪府などへ出荷されるという。京料理との相性のよさにも定評がある。

■クロマグロ豊漁、背後に「国際ルール」の存在
このクロマグロ、なぜ豊漁なのか。気候変動による海水温上昇でクロマグロの回遊ルートが変わり、全国的に水揚げ量が増加していることに加え、舞鶴市水産協会によると、「国際的な資源管理」による個体数の回復が主な理由だという。
5年で漁獲量5倍! 京都で“海のダイヤ”クロマグロが豊漁なのに「値下がりしない」のはなぜ?
クロマグロの漁獲量は国際ルールにのっとって決められている
クロマグロの場合、「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」での国際合意を基準に年間の漁獲枠がまず設定され、これが都道府県ごとに漁業者に配分されている。また、小型マグロには半減措置(資源回復を目的とした漁獲制限)を設け、大型マグロも漁獲実績の報告が義務付けられている。遊漁(趣味釣り)者にも採捕禁止や報告義務が課され、違反者には罰則も設けるなどして厳しく管理・調整している。

一方で、豊漁であっても設定した漁獲枠に達すると獲ることができないため、漁業関係者いわく「とてもいいクロマグロが獲れても、再び海に戻さざるを得ない」状況が起こっている。

■豊漁でもクロマグロが「値下がりしない」理由
消費者にとって気になるのはクロマグロの価格だが、豊漁によって「安くなった」わけでもないという。資源管理で漁獲量が調整されているため、大幅に値下がりしないのが実情といえる。
5年で漁獲量5倍! 京都で“海のダイヤ”クロマグロが豊漁なのに「値下がりしない」のはなぜ?
「都まぐろ」を使った海鮮丼。京都丹後鉄道「丹後あかまつ号」でのツアーで提供された
また、漁業経済という視点でも「獲れすぎると単価が下がって収入が減る」(漁業関係者)、いわば「豊漁貧乏」になるといい、明るい話ばかりとはいかないようだ。

■京都発「都まぐろ」は上品な脂身が特徴
京都府では、冬に京都府内で水揚げされる8kg以上30kg未満の天然小型クロマグロを「都マグロ」と命名し、県内外へ広くアピールしている。都まぐろは、大型のマグロと比べて上品な脂身でさっぱりとした味わい、プリプリとした食感が特徴、漁港の競り前に専用のステッカーをマグロの魚体に貼り、市場へ出荷される。

また舞鶴市では2026年3月22日までの期間、市内15店舗で都まぐろのメニューが提供される「都まぐろフェア in 舞鶴」が行われている。地元でおすすめの食べ方は、刺身、藁(わら)焼き、丼、薫製(中はレア)、ねぎまなど。まさに「ここでしか食べられない」京都北部の冬限定マグロが、新たな京都グルメとして定着するか注目される。


この記事の執筆者: シカマ アキ
大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、読売新聞の記者として約7年、さまざまな取材活動に携わる。その後、国内外で雑誌やWebなど向けに、取材、執筆、撮影など。主なジャンルは、旅行、飛行機・空港、お土産、グルメなど。ニコンカレッジ講師をはじめ、空港や旅行会社などでのセミナーで講演活動も。
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