現地で延泊やルート変更などを強いられた人も多いが、旅行保険は基本的に「戦争」は補償対象外。
■「中東乗り継ぎ」利用が多い本当の理由
日本との間に直行便があるアラブ首長国連邦(UAE)のエミレーツ航空はドバイ、エティハド航空は首都アブダビ、カタール航空はカタールの首都ドーハが拠点。日本航空(JAL)も東京(羽田)-ドーハ便を運航するが、実際のところ中東が旅行先という人はそう多くない。
一方、中東経由のヨーロッパ行き航路は特に需要がある。現在、日本-ヨーロッパ間の直行便はロシア上空を飛行できないうえ、運賃が非常に高い。中東経由の方がまだ安いため、旅行会社でのツアー利用も多いのが実情だ。
中東で広範囲にわたって空域が閉鎖された数日後から救援目的のフライトが限定的に運航され始めたものの、従来通りの再開にはほど遠い。日本政府も、邦人輸送する民間のチャーター機を手配して運航している(2026年3月11日時点の情報)。
■「戦争」で海外旅行保険の保険金はどうなる?
有事が起きた際、まず知っておきたいのは「海外旅行保険」のルール。通常、戦争は保険の対象外である。
旅行会社大手JTBグループの海外旅行保険を取り扱うジェイアイ損害火災保険では、今回の事態に関し、特別ページ(米国及びイスラエルのイランに対する攻撃に関する海外旅行保険の取扱いについて)を設置している。
・保険期間の終期は自動延長
・今回のケースは「戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱、その他これらに類似する事変」に該当
・一部特約を除き、保険金の支払い対象外
・旅行キャンセル費用補償特約(支払事由拡大型)、旅行キャンセル費用補償特約、クルーズ旅行取消費用補償特約(支払事由拡大型)、クルーズ旅行取消費用補償特約および旅行中断費用補償特約を契約している場合、渡航先が「戦争等の事変」に該当して旅行を取消または中断した場合に補償対象
延泊や航空券の変更などにかかる費用は、今回のような戦争が起きると、たとえ海外旅行保険に加入していても保険金は出ない。つまり、全て自己負担となる。
「戦争が起きるかもしれない」と想定して海外旅行をするのは、誰しも難しいだろう。だが、万が一の出費に備え「クレジットカードを複数持参する」のは、普通の海外旅行でも必須である。
■「航空券変更」はスピード勝負、キャンセル時期は見極めを
今回、ヨーロッパから中東経由で日本へ帰国する予定だった人が、逆回りの北米経由で日本へ戻ったケースも見られた。連絡手段はメールより電話やチャットなどが早く、個人旅行の場合は英語ができるに越したことはない。
いち早く帰国したい場合は、(自己負担にはなるものの)韓国経由・中国本土経由・東南アジア経由など、直行便にこだわらずあらゆるルートで探す。
キャンセルする場合は、航空会社が「○日まで手数料無料」などとアナウンスしてから手続きした方がいい。それ以前にキャンセルすると、その後に欠航が決まったとしても、規定通りのキャンセル料を取られる。
■「航空会社」「旅行会社」の選び方が旅行を左右する
英語ができないなど海外滞在に不安があれば「日本の旅行会社経由の申し込みが安心」というのは今後も間違いないが、今回の対応に“差”があったことを踏まえれば、全ての旅行会社やツアーが安心とは言い切れない。
また、今後は「航空会社選び」も重要となるだろう。中東経由の利用が多い日本ーヨーロッパ間の移動は、直行便より経由便が多少安くなるので、慎重に経由地を選ぶことも大切だ。
やや古い話になるが、2001年のアメリカ同時多発テロ事件の際、ハワイにいた日本人の知人は、事件直後から全米の空港で離陸禁止措置が取られたことにより日本に帰国できなくなった。その後、米系航空会社はアメリカ本土行きを優先的に再開し、日本行きは後回しになったといい、知人はこう語っていた。
「有事が起きた際、『航空会社は自国民を優先する』というのを直に感じた」
■各社の対応を見て今後の海外旅行に生かす
現地の日本大使館・総領事館から最新の安全情報がメールで随時届く。日本語で、しかも公式の情報とあり、信頼性だけでなく安心感もある。
国際情勢を知るには日本のメディアより、BBCやCNNといった海外のメディアが発信するニュースが役立つ。
これ以外にも、航空会社や空港によるSNSの最新情報で「情報収集」することも非常に重要。例えば今回も、多くの旅行客が滞留するUAEの政府は延泊の宿泊費と食費を全額負担すると発表。また、JALはドーハ到着後に足止めとなった当該便の乗客に対して宿泊費を負担する方針を表明している。こういった情報も、知っておくに越したことはない。
さらに今回の事態で航空会社や旅行会社が旅行客に対してどういった対応を取ったかも、しっかりと見ておいた方がいい。先のコロナ禍もそうだったが、有事の時こそ、その会社の一端が垣間見える。今後の海外旅行における参考となるだろう。
この記事の執筆者: シカマ アキ
大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、読売新聞の記者として約7年、さまざまな取材活動に携わる。その後、国内外で雑誌やWebなど向けに、取材、執筆、撮影など。
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