しかし、家に仕事を持ち帰る先生、休日も自主的に研修会に参加している先生も珍しくなく、こうした時間は調査結果には反映されていません。
そのような状況から「やりがい搾取だ」と指摘されることもある教師という職業。それでも学校の先生がここまで頑張る原動力は、やはり子どもたちの成長を願う気持ちや、成長の瞬間を見た喜びでしょう。
日本の公立小学校に1年間密着したドキュメンタリー映画の制作を通じ、山崎エマ氏は「大人が一生目にすることのない、先生たちの見えない葛藤」を目の当たりにしたと言います。
異常な重圧を抱えながらも、教育者として子どもたちと並走する先生たちの知られざる姿を、彼女の著書『それでも息子を日本の小学校に通わせたい』(新潮社)から抜粋・再構成して紹介します。
■日本の教師にのしかかる異常な重圧
大人になって小学校に戻ると、子どもたちだけでなく、自分と同世代の先生方にも興味が湧きました。子どもの頃は、「先生は『先生』という生き物だ」という感覚でした。
しかし、当然ながら先生方も我々と同じ人間です。子どもたちの教室と同じように、職員室にもいろいろな人間模様があるのでした。
近年、学校の先生の仕事の「ブラックさ」、そして、その影響で教員のなり手が危機的に減っていることが話題です。一部の教員の不祥事もこの状況に拍車をかけています。
悪いニュースが繰り返し報道される一方で、真面目に職務をまっとうする多くの先生方の働きがクローズアップされることはほとんどありません。
生活面までが学校教育の範疇とされている日本社会では、他国と比べても社会が学校や先生に期待することが非常に多いです。
先生の仕事は教科の勉強を教えることだけ、という国も多い中、次世代の人間たちの価値観の善しあしにまで責任を負っている——その重圧たるや、我々の想像以上のものだと思います。
撮影現場の先生方も、やはり大変そうでした。
一方で、先生方が自分の仕事にやりがいや生きがいを確かに感じているのだろう、という姿もたくさん見ることができました。
運動会が無事に終わった後、先生方の表情には充実感があふれていました。子どもたちの成長を喜び合って、先生たちが涙する場面も目にしました。
■「さっきの声がけ、間違っていたかも…」誰も知らない、退勤後の見えない苦悩
一方で、先生方の苦悩を感じることもありました。
教育という正解がない課題を前に、毎日多くの子どもたちと向き合う中では、たとえその時はベストを尽くしたつもりでも、後になって「さっきの声がけ、間違っていたかもしれない」と後悔することは日常茶飯事です。
そうやって常に子どもたちのことを案じ悩みながらも毎日懸命に教壇に立つ先生方を前にするたび、深い感銘と感謝の気持ちが生まれました。
その度、同時に考えたのは「この場面は学校の『外』にいる大多数の大人にとっては一生目にすることのない光景なのだ」ということでした。
■修学旅行の夜中に……。保護者が涙した“先生のリアル”
今の学校は、情報公開が叫ばれる時代の要請に従って保護者や地域に日々の活動をオープンに見せたいという気持ちと、そうは言っても苦情や不満のきっかけになるような情報はむやみに開示したくないという防御姿勢の間で揺れている印象です。
人間、何かを隠されていると感じれば、不信感が湧くものです。それでも何とかしようとする過程で、子どもを通して不正確な情報が耳に入ってしまい、余計に不安が募ったりする。
その結果、先生と保護者が大人同士で敵対することになったりしたら、本当に目も当てられない事態です。この状況が子どもにとって良いはずがないことは誰の目から見ても明らかです。
だからこそ、私の映画の中では先生方の人間らしい姿を意識的に映し出すようにしました。「先生も人間なのだ」という当たり前の事実を社会にあらためて認識してもらうことは、この映画の存在意義の一つだと思いました。
特に、映画に出て来た「修学旅行中にも夜な夜な『良い指導法とは何か』と考え、熱い議論を交わす先生方の姿」にはかなりの反響がありました。
親世代の観客からは「先生たちが子どものためにあれほどまでに悩み、考えてくださっているなんて思ってもみなかった。これからは今まで以上に学校と協力しようと思います」という感想をたくさんいただき、この映画での目標を一つ達成できたと嬉しく思っています。
完璧な人間がいないように、完璧な先生などいません。先生の言うこと、やることが全て正しいと信じなければいけない時代でもありません。
それでも、たとえば金儲けのために先生になるなんていう話は聞いたことがありません。
問題のある先生が一部にいたとしても、その他大半の皆さんは子どもたちの未来のために精一杯尽くしているという事実を知ってほしいのです。
この書籍の執筆者:山崎エマ プロフィール
1989年(平成元)年兵庫県生まれ。イギリス人の父と日本人の母を持つ。19歳で渡米しニューヨーク大学映画制作学部卒業。日本社会の中で育まれた感性と、多文化環境で培った視点を重ね合わせ、独自の視点でドキュメンタリー制作を行う。代表作は日本の公立の小学校を1年間追った長編『小学校~それは小さな社会~』。100館を超える大ヒットを記録し、教育やドキュメンタリーの分野を越えて広く注目を集めた。短編作品『Instruments of a Beating Heart』は第97回米アカデミー賞の短編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされ、国際的にも高い評価を得た。









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