一見すると現実的な解決策のようにも思えますが、制度面ではさまざまな課題が指摘されています。結婚相手の扱いや皇位継承との関係など、検討すべき論点は少なくありません。
本記事では『竹田恒泰の特別講義 天皇と皇族』(竹田恒泰・著/Gakken)より一部を抜粋・編集し、女性宮家構想の制度上の論点を整理しながら、竹田氏が提唱する解決策について紹介します。
■女性宮家が生む「民間人皇族」という問題
そもそも、女性宮家を創設すれば、多くの混乱を引き起こす火種になりかねません。
仮に内親王がご結婚後も皇室にとどまり、女性宮家を構成することになった場合、その配偶者、すなわち結婚相手をどう位置づけるのかという問題が生じます。
もし相手が民間人であれば、二千年以上の皇室の歴史のなかで前例のない「民間男子の皇族化」という事態が出来(しゅったい)します。むろん、過去にそのような例は一度もありません。
さらにいえば、現実的な問題も次々に発生します。
たとえば、結婚相手である民間人の男性が宮邸に住むとなると、それは「公的な施設に民間人が居住する」ことになり、不当利得の問題が発生します。
家賃はどうするのか。光熱費は誰が負担するのか。妻である皇族の分は税金で賄われるとしても、夫である民間人の分は私費で負担してもらう必要があります。
このように、同じ屋根の下で暮らすにしても、公私の区分が複雑にからみ合い、費用分担一つとっても合理的な説明が困難になるのです。
そして、子どもが生まれた場合、その子は男系ではないので民間人となります。民間人でありながら、皇族と同居し、すべての生活費が税金から支出されることは説明が困難です。逆に、「それほど皇族に近いならば、皇位継承権を認めるべきではないか」という議論も必ずや生じてきます。
将来的には、皇室に「皇位継承権を持つ男子」と「継承権を持たない男子」が混在する不安定な状況が生まれます。かたや父親が皇族であるために継承権を持ち、かたや母親が皇族であるのに継承権を持たない——こうした違いに対し、「不平等だ」「差別ではないか」という声が国民から上がるのは必至です。
■女性皇族のご結婚に新たな負担も
また、「皇室に残るかどうかをご本人が選べるようにするべきだ」という意見もありますが、これは逆に女性皇族を苦しめる制度になるでしょう。
たとえば、女性皇族がご結婚にあたって「皇室を離れたい」とご希望になったとしても、世論が「残るべきだ」と圧力をかける可能性があります。
逆に「出ていけ」という批判が集中することもあるかもしれません。SNSやネットメディアが発信力を持つ現代において、そうした心ない意見が瞬時に拡散され、ご本人の意思が尊重されない状況が生まれかねないのです。
現在でも、女性皇族のご結婚には高いハードルがあります。それが「結婚しても皇室に残る」という前提が加われば、さらにハードルは高くなります。
仮にご本人が「民間人として生きたい」とお望みになっても、世論がそれを許さず、恋愛や結婚の自由すら阻まれるようであれば、それは「女性皇族の人権を守る」どころか、かえって踏みにじる結果になります。
このように、女性皇族が結婚後も皇室に残る制度には、何ひとつとして現実的な利点がありません。
にもかかわらず、保守を名乗る政治家の多く——特に日本会議の影響を受ける自民党の一部が、驚くべきことにこの制度に賛成しているのです。私はこの動きに、強い危機感を抱いています。
■旧皇族男子を迎える「養子案」という選択肢
私は小泉内閣のときから一貫して、「旧皇族の男系男子を養子として迎える」案を提唱してきました。
実は、旧皇族を皇室に復帰させる方法には大きく分けて2つあります。一つは、法改正によって旧宮家——たとえば東久邇宮(ひがしくにのみや)家、賀陽宮(かやのみや)家、竹田宮(たけだのみや)家などを制度上復帰させるという方法。
もう一つは、旧宮家そのものを復活させるのではなく、そこに属する男系男子を、現在存続している三笠宮(みかさのみや)家や高円宮(たかまどのみや)家などの宮家が養子として迎え入れ、宮家を継承してもらうという方法です。
かつての保守派の政治家や有識者の多くは、前者の「旧宮家の制度復活」案を主張していました。しかし私は、歴史的先例と制度上の現実性から、後者の「養子案」のほうが優れていると考え、これまで提案し続けてきたのです。
■「養子案」が制度的に現実的な理由
なぜ養子案が現実的か。
まず、予算法案を新たに通す必要がありません。旧宮家をそのまま復活させる場合、新たな宮家ごとに予算措置が必要となります。「何人が皇室に復帰し、年間どれほどの予算が必要か」など、細かな財政審議をともなうため、国会での審議が煩雑になります。
一方で、旧宮家の男子を養子として迎え入れて、現在の宮家——たとえば三笠宮家や高円宮家を継承させるのであれば、皇室経済法の枠内で処理できます。国会で予算案を新たに通す必要がなく、立法手続きとしてははるかに円滑です。
さらに、制度復帰案では復帰した宮家が事実上「誰にも指導されない独立した宮家」になってしまう懸念があります。
名目上は天皇陛下が皇族の総監ですが、復帰後の新しい宮家に対して天皇陛下が直接ご指導なさるのは現実的ではありません。
また、皇族方はお互いに遠慮なさる傾向が強いため、新設された宮家が誰からの教育も受けられないまま、孤立するような事態も想定されます。
その点、養子として既存の宮家に迎え入れられた場合、現当主が「皇族としての振る舞いや皇族としてのしきたり」などを責任をもって伝授・指導することができます。次代への引き継ぎが自然な形で行われ、皇族としての一貫性と統制が保たれるのです。
いわば、糸の切れた凧のような宮家にならずに済むということです。
■政府主導の制度復帰よりも国民の理解を得やすい
また、国民の印象という点でも、まったく新しい「聞いたことのない宮家」——たとえば東久邇宮や賀陽宮といった宮家を復活させるよりも、すでに知られている三笠宮家や高円宮家などが継続するほうが、国民の理解と支持を得やすいでしょう。
制度復帰案では実務的な困難も生じます。旧宮家出身者は何十人もいますが、誰が皇室に復帰するのか、政府がどのように選定し、誰がその人たちを説得するのか——この過程に大きな問題があるのは明白です。「私は辞退したい」と言われたら、それをどう説得するのか、誰が責任を持つのか、非常に曖昧です。
一方、養子案であれば、たとえば三笠宮家や高円宮家の当主が「この方を養子に迎えたい」とご自身で選定なさり、説得までなさることになります。
仮に「なぜこの人を?」という疑問が生じたとしても、「宮さまご自身のご判断によるものです」と説明すれば、それで議論は収束します。政府主導の制度復帰とは異なり、自然で円満なかたちで実現できるのではないでしょうか。
このように、制度的にも、法的にも、感情的にも、養子案のほうが圧倒的に合理性と実現可能性に優れているといえるでしょう。ですから私は、養子案が最も現実的な解決策であると考えています。
この書籍の執筆者:竹田 恒泰 プロフィール
作家、実業家、皇學館大學非常勤講師。1975年、旧皇族・竹田家に生まれる。明治天皇の玄孫にあたる。
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