皇族男子は順位の高低にかかわらず、万が一のときには天皇としての役割を担う覚悟を求められる立場にあるといいます。宮家が存在してきた理由も、まさにそこにあります。
本記事では『竹田恒泰の特別講義 天皇と皇族』(竹田恒泰・著/Gakken)より一部を抜粋・編集し、宮家の役割と、皇位継承順位が意味するものについて見ていきます。
■宮家は「いざ」というとき「天皇を出すため」に存在する
秋篠宮皇嗣殿下について、弟宮でいらっしゃることから、「将来、天皇になることは想定されていなかったのではないか」と見る向きもあります。けれども、宮中での見方は決してそうではありません。
これは、かつて寬仁親王殿下から直接うかがったことですが、たとえ皇位継承順位が下位であったとしても、「天皇になる準備をしなくてよい」ということには決してならないそうです。
よく一般には、「皇太子殿下は帝王教育を受けているが、秋篠宮殿下はそうではない」と語られることがありますが、これは正しい理解とはいえません。そもそも「帝王教育」といった明確な制度やカリキュラムが存在するわけではないのです。
■皇位継承順位は単なる序列ではない
皇族男子とは本来、「いざ」というときに天皇となるために存在していて、そうした役割を宿すのが宮家なのです。決して、公務を担う皇室の実務部隊というだけの位置づけではありません。
もちろん日常的には公務に従事なさいますが、それは本質ではなく、「いざというときに皇位を担う」という役割の延長にすぎません。
そうした宮家の役割は、700年、あるいは800年に一度あるかないかというほどの稀な頻度ではありますが、その稀な瞬間があるからこそ、皇統は2000年にわたって一度も断絶することなく続いてきたのです。
つまり、宮家は「必要なときに、天皇を立てる」ために存在しているのであって、日々の公務のためだけにあるのではない。ふだんは表に出る機会が限られていても、その背後には、非常時に皇位を継承する覚悟を秘め、皇室の本質を静かに支えているのです。
■順位に関係なく求められる「天皇になる覚悟」
かつて寬仁親王殿下から、非常に印象深いお話をうかがったことがあります。
殿下ご自身、当時の皇位継承順位は第六位ないし第七位でいらっしゃいました。常識的に考えれば、皇位が回ってくる可能性はきわめて低い。しかし殿下は、「順位が付されている」という一点だけで、計り知れない重責を感じていらっしゃったのです。
私たち国民には、皇位継承順位などというものは当然ありません。しかし、皇族男子にとってそれは現実であり、たとえ生涯その順番が回ってこないと予想されても、万が一のときには、即座にそれに応じなければならない。それができなければ、皇族は存在する意味がないのです。
とりわけ三笠宮家のような傍系の宮家は、有事の際に天皇を輩出するという宿命を負っています。であるからこそ、継承順位が付されている以上は、今日、明日、いつそのときが来てもよいように、日々自らを律し、研鑽を積む責任がある。殿下はそのようにおっしゃっていました。
ですから、皇族男子は順位にかかわらず、すべての方が「天皇になる覚悟」を備えていらっしゃるのです。小さいころから天皇の気質を備えるよう期待されて育つ。これは尋常ならざる重圧でしょう。
■継承者としての「立場」が人をつくる
今上陛下にとっては、上皇陛下のお振る舞い、さらには歴代天皇の生き様に倣っていくことが、最大の規範になります。これは形式的な教育を超えた、いわば「継承される精神」といってよいでしょう。
世間には、「お兄さまは将来の天皇」「弟宮は違う」といった印象論があります。しかし、弟宮であればこそ許された自由さ、そして深められた専門性というものがあるはずです。
皇太子は公的行事にまんべんなく関与する必要がありますが、弟宮はご自身の関心に即した学問や活動を深めることができます。その意味で、優劣の議論はまったく無意味です。
秋篠宮殿下も、若いころは比較的自由なお立場で研究や活動をなさっていましたが、近年はまったく様相が異なります。
皇嗣(皇位継承の第一順位者)という立場を担った今、かつてのような自由なご発言は控えておいでで、むしろ天皇陛下が皇太子時代に担っていたご公務を一部継承なさるなど、皇嗣としての責任を実直に果たしていらっしゃいます。
立場が人をつくる。
そして今、秋篠宮殿下の胸中には、ご自身の年齢と次なる皇位継承の時期、さらには皇統の連続性に関する強いご自覚があるのではないかと推察いたします。
上皇陛下が高齢を理由に譲位なさったように、自らがその年齢に差しかかったとき、果たして国家の象徴としての責任を果たしうるのか。そうした思索は当然なさっておいででしょう。
さらに、悠仁親王殿下という「次の天皇」を確実にお育てにならねばならない。これは単に父親としての役割ではなく、国家的責務を負う立場からの苦悩でもあります。次代を託す相手がわが子である。これほど重い使命が、ほかにあるでしょうか。
この書籍の執筆者:竹田 恒泰 プロフィール
作家、実業家、皇學館大學非常勤講師。1975年、旧皇族・竹田家に生まれる。明治天皇の玄孫にあたる。慶應義塾大学法学部法律学科卒。
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