「旅券(パスポート)の日」に合わせて、今年も「旅券統計」が公表された。2025年のパスポート発行数は前年より減ったものの有効総数は若干増え、保有率は約18%に。
それでも有効期限内のパスポートを保有するのは「日本人の約6人に1人」にとどまる。

世界各国のパスポートをランク付けするHenley & Partnersの「ヘンリー・パスポート・インデックス」では世界トップクラスを維持してはいるが、“宝の持ち腐れ”とも言える状況は変わりない。コロナ禍も落ち着いたのに、なぜ増えないのか。国が行うさまざまな取り組みとともに、日本人とパスポートの現状について海外旅行ガイドが解説する。

■2025年からパスポート申請は楽になったが……
2025年(令和7年)の旅券発行数は、約362万冊(国会議員などに発給される公用旅券を除く一般旅券は約360万冊)。前年比5.3%減となった。

有効旅券総数(2025年末時点)は約2282万冊で、前年末比で約117万冊増加。このうちの一般旅券の有効旅券総数約2193万冊を日本の総人口で割る計算式に当てはめると、保有数は約17.8%となり、前年(2024年)の約16.8%から微増となる。参考までにパスポートの保有率は、2010年代は20~25%で推移、コロナ禍直前の2019年は23.8%だった。

2025年3月24日には、オンライン申請の対象が切替申請に加えて新規申請まで拡大されたことにより利用率は2024年の約9%から約44%(2025年の3月24日以降)へと大幅に増加したという。

■パスポートランキングが意味をなさなくなってきた?
世界2位「最強パスポート」でも保有率18%止まり。日本人が海外旅行に行けなくなった理由とは?
日本の一般旅券は5年有効(上)と10年有効(下)がある(筆者撮影)
前出の「ヘンリー・パスポート・インデックス」最新ランキングによると、1位のシンガポールは192の国・地域にビザなしで渡航可能。2位は日本と韓国、アラブ首長国連邦で187カ国・地域、3位がスウェーデンで186カ国・地域と続く。


日本のパスポートは、2025年から2年連続2位という結果ではあるが、2024年まで7年連続1位を維持していたことからみても、世界最強クラスといって過言ではない。

一方で、現在では多くの国・地域で電子渡航認証(ETA)制度、いわゆる事前審査を導入しているため、「ビザなし=パスポートだけで入国可」とは限らない。アメリカの「ESTA」をはじめ、カナダの「eTA」、オーストラリアの「AustralianETA」、イギリスの「英国ETA」などがよく知られるところで、ヨーロッパでも2026年第4四半期から「ETIAS」を導入予定。日本版ETA「JESTA(ジェスタ)」も2028年度中の導入を目指している。

ETAを必要としない国でも、シンガポールは「SGアライバルカード」、タイは「TDAC」、韓国は「K-ETA」(一時免除措置あり)による事前申請が必要だ。

こうした流れに対し、旅行者から「実質的な入国ビザではないか」という声は少なからずある。また、取得料が無料であっても「日本語ページがない」「海外旅行に慣れていない」などの理由で自力申請が難しい場合もある。そこで仲介業者を利用すると、高額な手数料が発生することもあるため注意が必要だ。

■日本人が海外に行けなくなった「5つの理由」
世界2位「最強パスポート」でも保有率18%止まり。日本人が海外旅行に行けなくなった理由とは?
ドイツ・ミュンヘン空港。日本直行便があるが、案内表示に日本語はない(筆者撮影)

日本人が海外へ行かない(行けなくなった)理由はいくつもある。

▼■理由1. 国内に魅力的な観光地が多い例えば、国内に魅力的な旅行先が多いため「海外へわざわざ行かずとも、日本で十分」という人は少なくない。

▼■理由2. 英語力が「非常に低い」海外旅行の場合、旅行会社のパッケージツアーでないと英語などの語学力が必要となる場面が多い。スイスの国際語学教育機関「EFエデュケーション・ファースト」が発表した、英語を母語としない123カ国・地域の「英語能力指数 ランキング」で日本は96位。
アジア25カ国中18位で、能力レベルは「非常に低い」という結果だった。

▼■理由3. 渡航費高騰と円安、情勢不安そして、燃油サーチャージの高騰を含む航空運賃の高止まり、昨今の円安で現地滞在費用が増大し、国際情勢への不安などもあり、海外旅行がしづらい要因が増えている。

▼■理由4.「タイパ」に加え「メンパ」が加速する若者たちまた、JTB総合研究所の「ライフスタイルと旅行に関する調査2026」によれば、令和の旅は「心の平穏」を重視し失敗を避ける「メンタルパフォーマンス(メンパ)旅」が拡大していることが明らかになった。旅行そのものが余暇から外れ、興味が薄れる傾向もあるようだ。

▼■理由5. お金がない、休みが取れない何より、日本人には「お金がない」「休みが取れない」という根本的な事情もある。手取り給与は増えるどころか減り続ける一方で、あらゆる物価は高騰し、「海外旅行どころではない」というのが大多数の本音だろう。

旅行会社大手のエイチ・アイ・エス(HIS)が2026年2月に発表した「春休みシーズン 学生の海外旅行予約動向」によると、人気の旅行先は「ソウル」「台北」「バンコク」「セブ島」「グアム」など、近場のアジア各国が上位に並んだ。

■「最大7000円」引き下げは起爆剤になるか
パスポートの取得料は現在、オンライン申請で10年用が1万5900円、5年用(12歳以上、18歳未満)が1万900円だが、2026年7月1日からは10年用がオンライン申請8900円/窓口申請9300円、5年用(一律 ※18歳以上の5年用は廃止)オンライン申請4400円/窓口申請4800円へと大幅に引き下げられる。

ただし、これと同時に国際観光旅客税(出国税)の引き上げ(現行の1000円から3000円へ)も予定されているため、今の国際情勢を踏まえると日本人にとっての海外旅行は「ハードルが高い」状況が続きそうだ。

この記事の執筆者: シカマ アキ
大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、読売新聞の記者として約7年、さまざまな取材活動に携わる。その後、国内外で雑誌やWebなど向けに、取材、執筆、撮影など。
主なジャンルは、旅行、飛行機・空港、お土産、グルメなど。ニコンカレッジ講師をはじめ、空港や旅行会社などでのセミナーで講演活動も。
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