それは、国を守るはずの「自衛官の不足」と、装備品を支える「防衛産業からの企業撤退」です。いくら防衛費を増額しても、戦う人も、武器を作る企業も集まらない……。
日本の防衛の“脆すぎる土台”のリアルとは? 防衛省シンクタンクの第一人者・高橋杉雄氏の著書『日本人が知っておくべき自衛隊と国防のこと』(辰巳出版)より一部抜粋・編集して紹介します。
■命を懸ける自衛隊が、若者に敬遠されるリアルな理由
自衛隊員の充足率は、歴史的に見て、失業率との連動が高いといわれています。不況で失業率が高いときは応募が集まり、好景気で失業率が低いときは集まりません。この相関関係は、はっきりしています。
それでも、東日本大震災後に自衛隊の社会的評価が高まった際には、応募者数が再び増加するのではという期待がありました。しかしその思惑は、見事に外れました。
自衛隊は基本的に国民の生命財産を守るために働きます。そして、これと同じ性質を持った職業がほかにもありました。
これから進路選択をする学生たちは、陸海空自衛隊と並んで、警察や消防を進路候補として検討するのです。すると、自衛隊の求人面での不利な部分が浮き彫りになります。
しかし国家公務員である自衛隊員の場合、異動先は全国規模です。これが敬遠されたのではないかと考えられています。
■わずか2年で退職、定年も早い。若者を悩ませるキャリア設計
将来を見据えたときも、不確実性がつきまといます。幹部候補生であれば、防衛大学校を卒業して三尉、海外の軍隊でいう少尉に任官されて任務に就き、昇進を重ねながら定年まで自衛官として働くこととなります。
しかし一般隊員は2年の任期制で入隊し、任期満了で除隊する者と、下士官である曹の階級になって自衛隊に残る者に分かれます。
特殊技能も身につくため除隊後の再就職状況は悪くないのですが、わずか2年で人生を再設計することになるのは、印象がいいとは言えません。
また、曹になって自衛隊に残った隊員も定年が一般企業よりも早く、人生設計に不安が残ります。
国家公務員の立場で別の職種より突出した給料を出すわけにもいかないという組織側のジレンマもあり、いい解決策は見いだされていません。
国家の安全安心の礎となる隊員たちのキャリアデザインについても、考えなければならないのです。
■3兆円の国内市場に“最適化”しすぎた防衛産業
今、日本の防衛産業は転機を迎えています。
ここで「転機」というのは、2つの理由があります。その1つ目が、防衛産業から撤退する中小企業が増えつつあるということ。そしてもう1つは、防衛装備の移転。要するに武器輸出が緩和されているということです。
後者は防衛産業からすればいいニュースのはずですが、ではなぜそこで撤退が起こっているのか、という疑問が湧きます。それを考えたときに行き着く答えが、日本の防衛産業の特殊性です。
防衛費5兆円の時代は、人件費がおよそ4割で2兆円。残りの3兆円にプラスαの補正予算がついて、3兆5000億円くらいが何らかのかたちで防衛産業のどこかに流れることになります。
つまり、日本の防衛産業は3兆円規模の単一顧客のマーケットに対して最適化してきたと言えます。
同様に自衛隊も、3兆円を支える防衛産業に対して最適化してきたと言えます。いわゆる相互最適化という図式です。ですから、ほかの製造業のように、「国内マーケットだけでは足りないから海外マーケットを切り開こう」ということにはならなかったのです。
元々武器輸出には厳しい規制があって不可能だったというのが最大の理由ではありますが、それが長期にわたって続く間に「3兆円の中でやればいい」という状況になってきたわけです。
■防衛省は低コストな超優良顧客。リスクを取らない大企業
加えて、日本の防衛産業に関わる大手企業の多くは、防衛需要への依存が極めて低い水準です。数パーセントか、せいぜい10%程度です。
海外に目を向けると、ボーイング社はそれなりの数の民間機を製造しているので50%くらいの依存になりますが、ロッキードマーチン社あたりだと80~90%を軍需に依存しており、日本の防衛産業と比較すると防衛需要も全然違うわけです。
ただし、依存率が低いから撤退、という簡単な話ではありません。主契約になるような大企業にとっては、防衛省は営業コストが小さい状態で企業全体の売り上げの数%が見込めてしまう超優良顧客とも言えるのです。企業にとっては撤退する理由はありません。
ただこうなると、新たなマーケットを開拓する理由もなくなってしまいます。売上の数%を確実に取れる状態ならば、リスクを抱えて海外に進出する必要はないのです。
輸出が緩和されて十数年が経ちます。しかし輸出が大きく増えているわけではないのは、こうした事情があるからです。
■43兆円への防衛費増額は、沈みゆく産業を救えるか
中小企業の防衛産業からの撤退と大手防衛産業の成長意欲の欠如。このままの状態が続けば、いずれ防衛産業は衰退し、それだけ陸海空自衛隊は海外への依存度を高めざるを得なくなります。
なかには中小企業にしか持ちえなかった特殊技術が失われるケースもあるかもしれません。
この2つの問題をどう立て直していくのか、かなり根本的な取り組みが必要になります。また、DXの時代になってデジタル化に旧来の重厚長大型の防衛産業がちゃんとついていけるか、というのも重要な部分です。
43兆円まで防衛費が増えていくことで、防衛産業に新規参入があるかもしれません。そこで業界全体が再び活性化することを期待したいところですが、逆に新規参入企業と古参企業の関係が問題になるかもしれません。
民間企業の経済活動に過剰な干渉はできませんが、わが国の防衛力の土台を形作る企業には、新旧問わず、ぜひともアクティブであり続けてもらいたいと思います。この書籍の執筆者:高橋杉雄 プロフィール
防衛省のシンクタンクである防衛研究所防衛政策研究室長。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。専門は国際安全保障、現代軍事戦略論、核抑止論、日米関係論。日本の防衛政策を中心に研究・発信する、我が国きっての第一人者。
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