中東情勢をめぐり、同盟国に対して過激な軍事的負担を迫るなど、連日世界を振り回しているトランプ大統領。日本にも大きな影響が及ぶ中、「なぜアメリカ人は彼を支持するのか?」と疑問に思う人も多いでしょう。


実は各種データを見ると、トランプ氏の強気な姿勢の裏には、これまでの常識を覆す「支持層の激変」と、深くえぐられた「アメリカ社会の分断」が隠されていました。

アメリカ政治の中枢を知り尽くす早稲田大学教授・中林美恵子氏が、現在の国民意識とデータからその背景を読み解きます。『日本人が知っておくべきアメリカのこと』(辰巳出版)より一部抜粋・編集して紹介します。

■就任から半年。支持率低下の裏で起きている「共和党員の異常な熱狂」
トランプ大統領をアメリカ国民がどう見ているのかを示す世論調査があります。

まず、アメリカのニュースサイト会社「リアル・クリア・ポリティクス」が集計した支持率平均によれば、2025年1月の就任直後に50%を超えていた支持率は、7月17日には約45%に下がっています。

それに対して、不支持率は同じ時期に約44%から50%に増えています。大雑把に言うと、約半年間で逆転し、不支持率が増えたということです。しかし、政党支持層別に参照すると、アメリカ国民の別の面が見えてきます。

アメリカの世論調査会社ギャラップによれば、就任直後の2025年1月に共和党支持層の91%がトランプ大統領を支持しており、その後も90%前後の高い支持率を保っています。

一方、1月に46%だった無党派層の支持率は、6月には36%に下がっています。さらに、民主党支持層の支持率は、同じ時期に6%から1%へと下がっています。
つまりは、共和党の支持層が依然として圧倒的にトランプ大統領を支持しているということです。

2つ目は、ギャラップ社が行った「アメリカ人であることを誇りに思うか」という調査です。

■「アメリカ人であることに誇りを持てない」。民主党支持者に広がる絶望
2001年には、アメリカ国民の8割以上が「誇りに思う」と答えていたのに対して、2015年頃から、民主党支持層と無党派層ではその割合が急速に低下を始めたことがわかります。

2025年には、民主党支持層の65%が「アメリカ人であることに誇り」を持っていないことがわかります。一方、共和党支持層は一貫して「誇り」に思っている人が多く、2025年には92%に達しています。

以上のことからわかるのは、第2期トランプ政権が誕生してから半年後のアメリカでは、共和党支持層が、トランプ氏を熱狂的に支持していて、彼らはアメリカ国民であることを常に誇りに思っているということです。

■熱狂的でも「3選」は不可。共和党独占のトリプルレッドは続くか
トランプ大統領が約半数のアメリカ国民から熱狂的に支持されていても、3年後には新しい大統領が選出されることになります。アメリカ合衆国憲法では大統領の3選は禁じられているからです。

さらに言えば、2026年には中間選挙が行われます。アメリカでは選挙のたびごとに、大統領職および連邦議会の上下両院の議席で共和党と民主党が頻繁に入れ替わります。


現在は、共和党がすべてを独占する「トリプルレッド」ですが、2026年の中間選挙以降も同じ状況が続くかどうかはわかりません。

■白人支持層は減少? データから読み解く有権者の「乗り換え」
そこで次に、2025年7月1日に、アメリカの世論調査会社「ピュー・リサーチ・センター」が発表した、2024年大統領選挙に関する調査結果を見てみましょう。

1万人の同じ回答者が、2020年と2024年の大統領選挙での投票行動をどう変えたのかを調べたもので、選挙ごとの出口調査よりも正確な投票動向が分析できるといわれています。

多少わかりにくいかもしれませんが、簡単に説明しましょう。2020年の大統領選挙では、バイデン氏32%、トランプ氏29%、投票しなかった人38%でした。2024年の大統領選挙では、ハリス氏31%、トランプ氏32%、投票しなかった人36%でした。

ところが、個人の投票履歴をみると、2024年の選挙で投票行動を変えた人が一定程度いることがわかります。図では、それが太さの違う曲線で表されており、太い線は人数が多いことを示しています。

2020年に投票しなかった人を見ると、2024年にはある程度の人がハリス氏とトランプ氏にそれぞれ投票していることがわかります。

一方で、2024年に投票しなかった人では、2020年にバイデン氏に投票した人のほうがトランプ氏に投票した人よりも多いことがわかります。

最後に、2016年からの3回の大統領選挙での政党支持率を人種別に見た調査結果を紹介します。興味深いことは、2016年と2024年を比べると、トランプ支持層に占める白人の割合が10%ポイント減少したのに対して、アジア・ヒスパニック・黒人の割合が増えていることです。


■カギを握るのは「普段投票しない若者たち」。2026年中間選挙とアメリカの行方
ここで紹介した4つの世論調査結果から次のようなことがいえます。

まず、仮に2024年に有権者全員が実際に投票していた場合には、トランプ氏のリードがさらに拡大していた可能性があることです。

また、これまでの支持層の常識に反して、民主党は「エリート層」、共和党が「大衆主義」(ポピュリスト)という構図への転換が進んでいることです。

さらに、多くのアメリカ人は必ずしも「常時投票者」ではないことです。投票権を持つ全国民のうち過去3回の選挙(2020年、2022年、2024年)で投票した人は全体のわずか41%。3回の選挙すべてで投票していない層は、全体の約4分の1に達しています。

その多くは若年層であり、4年制大学の学位を持っていない割合が高いことがわかっています。

その結果、投票率が高まれば共和党に有利に働き、低くなれば民主党が有利になると見られます。したがって、2026年の中間選挙は「投票率がカギ」ということになります。この書籍の執筆者:中林美恵子 プロフィール
政治学者。早稲田大学教授。
公益財団法人東京財団理事長。埼玉県深谷市生まれ。大阪大学博士(国際公共政策)。ワシントン州立大学修士(政治学)。米国家公務員として連邦議会上院予算委員会に勤務(1993年-2002年)。約10年間、米国の財政・政治の中枢で予算編成の実務を担う。元衆議院議員(2009年-2012年)。著書に『日本人が知っておくべきアメリカのこと』(辰巳出版)など
編集部おすすめ