「東大の推薦入試」と聞くと、国際大会での優勝など、華々しい実績を持つ「スーパー高校生」のための制度と思われがちです。

しかし、女子最難関の桜蔭高校から推薦で工学部に進学し、現在はエンジニア、そして「東大卒110kgの女」として活動するYouTuber「うさねこらーじ」さんの体験談からは、また異なる「東大推薦のリアル」が見えてきます。


■なぜ「一般入試」ではなく「推薦」だったのか
桜蔭でも鉄緑会でも上位。“東大卒110kgの女”YouTuberが、あえて「推薦」を選んだ合理的理由
桜蔭→東大卒のYouTuber・うさねこらーじさん(提供画像)
「桜蔭の生徒なら、一般選抜で東大に受かるのでは?」という疑問が当然湧くでしょう。

事実、うさねこらーじさんは東大受験指導専門塾「鉄緑会」に通い、そこでの成績もよく、東大模試の結果も学内で20位くらいと、一般選抜でも合格圏内の学力を十分に保持していました。

うさねこらーじさんが東大推薦を受けたのは2010年代後半で、当時は学校ごとに事実上男女各1人しか挑戦できない時期でした。 

それでも彼女が推薦入試に挑んだのは、とても合理的な理由からでした。

「推薦で合格すれば、進学振り分け(※入学後の教養課程の成績で進学先が決まる制度)を経ずに、志望する学部に進める点に魅力を感じました。高校時代からプログラミングをしていたので、情報学を学びたいという明確な目的があったのです。せっかく推薦の制度があるなら受けてみようと思いました」

思うに、学力が高いがゆえに未知の制度にあえて挑む余裕があったのかもしれません。

■名門進学校の放任と、孤独な書類作成
しかし、東大の推薦の準備は簡単ではありません。本人も「書類作成は大変でした」と率直に振り返ります。数カ月かけて少しずつ志望理由書などを作成し、その間は一般入試の勉強が思うように進まなかった時期もあったそうです。

ブランディングのために高校が東大推薦に積極的なケースもありますが、うさねこらーじさんが通っていたのは超名門の進学校である桜蔭です。

生徒の「自主の精神」を重んじる校風もあってか、学校の先生は応援はしてくれたものの、手取り足取り指導してくれるわけではありませんでした。


そこでネットで見つけた外部の塾に相談すると、東大推薦の合格実績がほしいからか「無料で添削をする」と持ちかけられたこともありましたが、結局は頼りにならず、親御さんの助言を受けながら、ほぼ独力で書類を仕上げたといいます。

■重要だったのは「志望理由書」と「小論文」
うさねこらーじさんは、提出した主な書類として志望理由書、課題小論文、活動報告書、学校長からの推薦書などを挙げています。その中でも特に重要だったのは、志望理由書と小論文でした。

志望理由書では「人間に近い判断を行うAIを作りたい」というテーマを掲げました。あえて理学部ではなく工学部を選んだのも、情報系の研究室の特色や工学部が求める人物像を調べた結果、自分の進みたい道に合致していると判断したためです。

活動実績としては、科学オリンピックでの実績や、自らアプリケーションを開発した経験などを提示しました。

■「スーパー高校生」の実績よりも大切なこと
今回の経験から伺えるのは、華々しい受賞歴だけが必要だったわけではなく、「自分がこれまで何をやってきて、それが大学での学びにどうつながるのか」を言語化できるかどうかが大きかったということです。

東大の推薦というと、めざましい実績のある「スーパー高校生」のための制度に見えがちですが、今回の話から見えてくるのは、推薦制度の本質が単なる「実績の派手さ」にあるのではないということ。

むしろ、「進学後に何をしたいか」を自分の言葉で説明できるかどうかが肝要なのだと分かります。

うさねこらーじさん プロフィール
エンジニア・YouTuber。桜蔭高校から東京大学工学部へ推薦入試で合格・卒業。現在はエンジニアとして働く傍ら、自身の日常や独自の視点を発信するYouTubeチャンネル「新・うさねこらーじ【110kg東大卒の女】」を運営。


この記事の執筆者:杉浦 由美子 プロフィール
キャリア20年の記者。『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(青春出版社)、『女子校力』(PHP新書)、『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)など単著は14冊。『ダイヤモンド教育ラボ』、『ハナソネ』(毎日新聞社)『マネーポストWEB』(小学館)などで取材記事を寄稿している。趣味は取材。
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