新たなNHK連続テレビ小説として、3月30日から『風、薫る』の放送がスタートしました。見上愛さん、上坂樹里さんがダブル主演を務め、原案に田中ひかるさんの『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中央公論新社)を取り上げた、看護の世界を描く朝ドラとなります。


そんな『風、薫る』ですが、初回の視聴率は世帯で14.9%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)となり、歴代ワースト2位タイという低視聴率を記録。初週の放送がヘビー過ぎる展開ばかりで、SNSでは賛否両論のコメントが集まってしまいました。

厳しい船出となった『風、薫る』ですが、筆者は見続けるべき作品だと考えています。元テレビ局スタッフで、全てのドラマを見ている筆者が、『風、薫る』の魅力を徹底解剖。なぜ見続けるべきなのかを解説します。

■型破りな2人のナースの冒険物語『風、薫る』
まず、『風、薫る』のストーリーを解説します。見上さんが演じる主人公の一人・一ノ瀬りんは、栃木県那須地域で元家老の家に長女として生まれた女性です。モチーフは大関和さんとされ、育ちのいいおっとりした雰囲気を持ち合わせ、いざという時に潔く思い切った行動ができるヒロイン。ただ、思ったことをすぐ口にしてしまうなど視野が狭くなりがちで、その性格がどう描かれるのか楽しみです。

一方で、上坂さんが演じる大家直美は、生後まもなく親に捨てられキリスト教の牧師に育てられた女性。モチーフは鈴木雅さんで、家族と呼べる人がいない孤独を抱え、信じられるのは自分の力と運と考えながら、たくましく生きる姿が描かれます。目的のためには多少のうそやズルをいとわない性格で、柔軟さとしたたかさを持ったヒロインです。


『風、薫る』では、性格も生まれ育った環境も違う2人が、それぞれに生きづらさを抱えながら看護の世界に飛び込む姿が描かれる予定です。

ドラマは、激動の明治期を舞台としています。当時は、まだ女性の職業が確立されておらず、今では当たり前の看護は未知の仕事でした。そんな中で、看護学をしっかり学んだ「トレインドナース」(正規に訓練された看護師)として、りんと直美が傷ついた人々を守るために奔走するストーリーです。全ての人の幸せを求め生きる、型破りな2人のナースの冒険物語となります。

■これまでの作品とは違う“看護”を描いたナースドラマ
まず注目すべきは、多くの視聴者が関係性の深い「看護」をテーマにしている点です。放送期間が長い朝ドラは、取り上げるテーマに関心がないと見続けるのは苦痛になります。その点、老若男女がお世話になっている看護師をテーマに取り上げているのは、魅力的なポイントです。

しかも、『風、薫る』は、これまで数多く放送された「ナースドラマ」とは違い、日本における看護の歴史ができ上がっていく様子を描くドラマ。大人だけでなく子どもが見ても勉強になる朝ドラとなりそうで、視聴者を増やしていくでしょう。

ヒロイン2人のキャラクターがまったく異なる点も、面白くなりそうなポイントです。前述した通り、りんはおっとりしてやさしい性格で、直美は独立心が強く他人を信用していないタイプ。
性格の違う2人はぶつかり合うことが多そうで、それがドラマを盛り上げる要素になるでしょう。

しかも、そんな2人が最終的には最強のバディとなるストーリーで、後半に向けて面白さが加速する可能性を秘めています。

■天才「見上愛」の抜群の安定感
筆者が最も注目するのは、主人公を演じる見上さんと上坂さんの演技です。

見上さんは、2019年に俳優デビューすると、名バイプレーヤーとしてさまざまなドラマや映画に出演します。日本大学芸術学部演劇学科卒という華々しい経歴を持ち、どんな役でも演じられるのが特徴。NHK大河ドラマ『光る君へ』で藤原道長の娘・藤原彰子を担当し、高い評価を得ました。

見上さんの魅力は、制作サイドの目線に立った演技ができるところです。インタビューでは演出家志望だったと明かしていますが、監督やスタッフに求められている演技や役作りが完璧にでき、解像度の高いキャラクターに仕上げられる能力を持っています。

演技力の高さは各作品で証明され、大ヒット映画『国宝』で演じた藤駒役は見事なもの。第49回日本アカデミー賞で新人俳優賞を獲得しました。

見上さんが演じるりんは、初週から第2週にかけて、大切な人の死をはじめ人生の大きな転機が次々と訪れます。コロコロと境遇が変わる中、りんのキャラクターをうまく作り上げて繊細な演技を見せているところです。
抜群の安定感があり、今後も作品を面白くするでしょう。

■メキメキと頭角を現す「上坂樹里」
そして上坂さんは、ファッション誌『Seventeen』(集英社)の専属モデルを務めるなど、早くからモデルとして活躍してきました。配信ドラマへの出演で俳優活動をスタートさせ、2023年に放送された『生理のおじさんとその娘』(NHK総合)でヒロインを担当して注目を集めます。

その後は、2024年放送の『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)で連ドラ初レギュラーを務め、2025年に話題を集めた日曜劇場『御上先生』(TBS系)ではメインキャストに抜てき。メキメキと頭角を現しています。

中でもドラマファンから注目されたのは、夜ドラ『いつか、無重力の宙で』(NHK総合)の演技です。同作で上坂さんは、森田望智さんが演じた主要キャラクター・日比野ひかりの高校生時代を担当。不思議な雰囲気を持つ美少女のひかりを見事に演じ、大人パートを演じた森田さんともうまく調和を取るテクニックを見せました

JR東日本のキャンペーンCM「JR SKISKI」でヒロインを務めるほどの、時代を代表する美貌を誇りつつ、器用に役を作り上げられる素質も兼ね備えています。見上さんと比べると若干演技が荒い部分はありますが、朝ドラ主演を務めたことで、躍進するでしょう。新人俳優である上坂さんが、どう成長していくのかを見守るのも楽しみになりそうです。

ここまで『風、薫る』の魅力を紹介しましたが、見応えのある朝ドラだと理解していただけたでしょうか? 約半年間、見続けて損はない作品だといえるでしょう。
この記事の執筆者: ゆるま 小林
長年に渡ってテレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。
その後、フリーランスの編集・ライターに転身。芸能情報に精通し、週刊誌、ネットニュースでテレビや芸能人に関するコラムなどを執筆。編集プロダクション「ゆるま」を立ち上げる。
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