劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使(だてんし)』が4月10日より公開中です。前々作『100万ドルの五稜星(みちしるべ)』が158.0億円、前作『隻眼の残像(フラッシュバック)』が 147.4億円と近年のシリーズは大記録を打ち立てており、今回も超大ヒットが期待できるのは言うまでもありません。


■前置き1:IMAXやDolby Cinemaも含めてコナン史上最大規模の公開館数に!
その超大ヒットを大きくけん引するのは、「コナン史上最大規模の公開館数」かつ、公開と同時にラージフォーマットでの上映も展開されていることでしょう。

前作『隻眼の残像』の522館を上回る、今回の『ハイウェイの堕天使』の526館にもおよぶ上映館数の内訳は、通常上映が382館、「IMAX」が62館が「MX4D」が11館、「4DX」が61館、「Dolby Cinema(ドルビーシネマ)」が10館となっています。

(大作ハリウッド映画のようにIMAX用の画面設計はされてはいないものの)巨大スクリーンだからこその没入感のあるIMAXはもちろん、(特に“漆黒”と言える黒の表現が映える)くっきりした映像のコントラストが楽しめるDolby Cinemaを選んでみるのもいいでしょう。Dolby Cinemaは3月28日より開業したばかりのTOHOシネマズ大井町でも展開しているので、この機会に足を運んでみるのもいいかもしれません。

その上で、筆者はぜひ4DXをおすすめしたいです。筆者は毎年「コナンの映画は4DXで見たい!」と思って公開日に足を運んでいるのですが、まったく期待を裏切られることはない、「やっぱりコナンは4DXだ!」と再確認できる、信頼と実績のクオリティーでした。その理由を、事前に知ってほしい知識を前提にまとめていきましょう。

■前置き2:今回は「MX4D」でもOK?
そもそも4Dとは、座席の動き、水の吹き付け、香りなどの演出が楽しめる上映方式のこと。まるで遊園地のアトラクションのような要素がプラスされます。

4Dには、TOHOシネマズで展開する「MX4D」と、イオンシネマなどでの「4DX」の2種類があり、基本的には筆者は4DXのほうをおすすめしていたのですが……今回は「MX4Dと4DXのどちらでもいい」のかもしれません。

4DXの多くの劇場では、MX4Dにはない、劇場の上から降る「雨」、スクリーン手前に降る「雪」、湧き立つ「バブル(シャボン玉)」の演出がありますが……今回の『ハイウェイの堕天使』にはそれらの4DX限定の演出を活かした場面がなく、MX4Dでもほぼほぼ変わらない体験ができると予想されます。とはいえ、筆者個人としてはMX4Dよりも4DXのほうが座席の動きやエアーなどの演出がより激しい印象があり、MX4Dは追加料金が+1300円に対して、4DXは+1000円または+1100円と少し安い(※劇場によって料金差あり)ため、やはり4DXのほうをおすすめしておきます。


そのほか、「身長100cm未満の方は4DXを利用できない(120cm未満の方は保護者同伴)」「スクリーン外に設置された専用ロッカーに荷物を預けることができる(ロッカーは100円硬貨を預かるタイプのものが多いので事前に100円を用意しておくのがおすすめ)」「座席が激しく動くため飲食の際は注意(劇場版コナンの4DXはクライマックスが特に激しいため、それまでにポップコーンは食べきっていたほうがいいかも?)」などの注意点もあるため、事前に4DXの公式ページをチェックしておくことをおすすめします。

■前置き3:「千速」関連の予習は必要?
4DXのことから外れますが、今回の『ハイウェイの堕天使』の目玉となるのは、神奈川県警の白バイ小隊長の「萩原千速」というキャラクターであり、ともすると関連するテレビアニメや原作を読んでおいたほうがいい、と思う人もいるかもしれません。結論から言えば、予備知識がまったくなくても問題なく楽しめると申し上げておきます。劇場版コナンは毎回「これまでのあらすじ」を冒頭に示してくれる親切設計。そこで千速のことはもちろん、7年前に爆弾解体が間に合わずに殉職した(死んだ)弟の「萩原研二」と、その親友であり3年前にやはり爆弾解体中に爆死した「松田陣平」の経緯が簡潔に説明されます。

その故人の2人は今回の事件とは直接関係しないため、深く知らなくても大丈夫でしょう。何より、今回からでも命令口調かつ常にクールで、コナンを「少年」と呼ぶ千速の魅力は、多分にわかるはずです。

それでも、その2人の死は千速の「今」の心境に深く影響を与えていることも事実なので、思い入れがあると、より感動も増すはず。各配信サービスでは「風の女神 萩原千速& 神奈川県警セレクション」としてテレビアニメのエピソードがまとめられていますし、時間がない人は公式の動画「ハイウェイの堕天使 入門編」を見ておくのもいいでしょう。なお、以前に千速の声を担当していたのは『攻殻機動隊』の「草薙素子」役で知られる田中敦子でしたが、2024年8月20日に逝去されてからは『ルパン三世』の「峰不二子」役などの沢城みゆきに交代しています。今回の『ハイウェイの堕天使』にて、沢城みゆきは「田中敦子さんが大好きです。思い出す事はあまりありません。
忘れる日がないからです」と多大なリスペクトが伺えるコメントをしています。なお、その千速の相棒の警部「横溝重悟」の声を担当した大塚明夫は、『攻殻機動隊』では草薙素子のバディとなる「バトー」役でもお馴染みです。『攻殻機動隊』へのリスペクトのようなキャスティングおよび、そちらとは少し異なる男女のコンビの関係性にも、ぜひ注目してほしいです。

■前置き4:本編は実績と信頼の面白さ!
その上で、今回の出来には(後述するように不満もあるものの)個人的には満足です。

近年の劇場版コナンは、「推理の過程における複雑な情報の整理」と、そして「スピーディーなアクションの先に待つ爆発」と、「『キャー!』と心の中で黄色い声をあげたくなるラブコメ要素」といった信頼と実績の面白さに加えて、今回は「バイクアクション」「千速というキャラのカッコよさ」に大きくステータスを振ってこその魅力がたっぷりあったのですから。

同時に「そうはならんやろ!」とツッコみたくなるムチャなシチュエーションもより目立ってはいますが、その笑ってしまうほどの荒唐無稽さも含めて楽しんでしまえると思います。

さて、すっかり前置きが長くなりましたが、ここからは実際に『ハイウェイの堕天使』を4DXで見たからこその感想を記していきましょう。ストーリー上の決定的なネタバレは避けたつもりですが、サプライズ的でもある4DXの演出の一部は明らかとしているので、予備知識をまったく入れたくない人は、先に劇場へ駆けつけることをおすすめします。

※以下、『ハイウェイの堕天使』の4DXの演出および、一部の展開を記しています。

■4DXの魅力その1:バイクアクションでのスリルを「エアー」でも体感!
映画のどのようなシーンと、4DXとの相性がいいかといえば、やはり「カーチェイス」が筆頭に上がります。映画館の座席をそっくりそのまま車のシートに見立てることができるので、観客もまた劇中の車に乗っているかのような感覚になります。

今回の目玉は、ポスタービジュアルや予告編などからも分かる通り、白バイに乗った千速のアクション。
カーブでの急激な身体の傾きや、大ジャンプをしたりする様でも座席の動きがしっかり連動しているのです。さらに「座席の横から吹き付けるエアー」も臨場感に大きく貢献しています。なぜなら、「バイクが車の横をギリギリで通り過ぎる」時の「空気圧」をも、そのエアーで演出しているため、「あわやぶつかる」スリルを体験できるのです。

さらに、バイクを大きく倒した時に地面にあわや脚がついてしまう感覚を「足元をくすぐる」演出で魅せていたり、バイクだけでなく大きく「スピン」をする車の動きもまた座席の動きで表現している場面もあります。ともかく、劇中のバイクアクションを4DXは余すことなく「底上げ」して楽しませてくれるのです。

■4DXの魅力その2:コナンといえばやはり爆発! クライマックスでは演出が大盤振る舞い!
さらに、劇場版コナンの「お約束」として「爆発」があり、その時の「爆煙」が劇場前のスクリーンで実際に「スモーク」として現れること、さらには「爆風」も劇場全体を吹く「風」で表現されていることも、4DXの大きな意義です。もちろん今回もしっかり爆発が起こりまくる上に、クライマックスでは、コナンが「キック力増強シューズ」でボールを蹴り上げる時に劇場内斜め上のライトが光る「フラッシュ」の演出もあり、これまたお約束である「ヘリが落ちていく」見せ場でもまた座席が「大回転」と言うほどに動きまくり、さらに前述してきたバイクアクションも組み合わさるため、4DXの演出がもう大盤振る舞いというわけです。

その他にも、もはや良い意味で情報量過多で笑ってしまうほどの見せ場だからこそ、4DXも「盛って」楽しむことをおすすめしたいです。

■今回の4DXでここが物足りないかも?
反面、今回の4DXでやや物足りなかったことは、作品の特性上仕方のないこととはいえ、演出のバリエーションがやや少ないことでしょうか。前述したように「雨」「雪」「バブル(シャボン玉)」の演出は今回はありませんし、バイクアクション以外ではシリーズの新基軸となるアイデアはそれほどありません。

また、物語上では、キャラクターの複雑な関係性や推理要素が理路整然と示されている一方、やはりその「説明」に多くの時間を割いているため、物語が停滞している印象も少なからずありました。予告編での時点で明かされていた「蘭がさらわれる」展開もほとんど「ノルマ」のように用意された強引な展開に思えました。
ツッコミどころもまた劇場版コナンのお約束とはいえ、もう少しスマートにできなかったのかな、と思う部分はあります。

その上で、アクションのツッコミどころは、千速のカッコ良さに「上書き」されますし、やはり一周回って楽しい領域になっていると思います。「白バイは高速道路の壁を走れる」「ガードレールは基本的にジャンプ台になる」「千速は交通違反をしまくりだし始末書じゃすまないだろ」「クライマックスでコナンが『止めるにはもうこれしかないよ!』と言う手段が本当にムチャすぎる」みたいなことは、多くの人が「許す」となるのではないでしょうか(※感じ方には個人差があります)。

さらに、クライマックスでのラブコメのための展開も、「それは物理的に無理があるぞ」と一瞬は思ってしまったのですが、それができてしまうキャラクターの「度量」と、その直後のニヤニヤが止まらないやり取りのおかげで、「劇場版コナンはこういうところがいいな」とやはり肯定できたのです。ムチャさやツッコミどころもやっぱり魅力であり、それを底上げする4DXを盛って、ぜひ楽しんでください。

この記事の執筆者: ヒナタカ
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
編集部おすすめ