梅雨の季節を迎え、傘のマナーが気になる時季になりました。他人の傘にヒヤッとしたりハッとしたり、いわゆる「ヒヤリハット」(危ないことが起こったが、幸い事故や災害には至らなかった事象のこと)で多いのは、たたんだ傘の「横持ち」によるものです。


先ごろ東京都が実施した「傘の安全性に関する調査」で、驚くべき結果が報告されています。

■横持ちした傘の衝撃力はビアノ1台分!
東京都の調査結果によると、他人の傘で自分が受けたヒヤリハットの発生場所で最も多いのは、駅構内の階段・エスカレーターです。傘を横にして持つ「横持ち」は、後ろの人に当たってとても危険。特に階段やエスカレーターなど前後に段差がある場所では、傘の先が後ろの人の顔や胸に当たってしまうので大変危ないのです。

また、横持ちした傘がぶつかった時の衝撃力を測定する試験をしたところ、厚さ1.6mmのガラスが割れてしまいました。この衝撃力はピアノ約1台分(240kgf)!

これほどの大きな力が傘の先端に集中するため、身体に当たると失明や骨折などの大けがを負う可能性があることが分かりました。

■傘は思っている以上に長い
傘のサイズというと、60cm、65cm、70cmなどの表示を思い浮かべる人が多いと思います。これらは傘の生地が張ってある親骨の長さであり、持ち手や石突き(傘の先端部分)の長さは入っていないので、実際には表示以上に長いものを持っていると認識しておいてください。

一例として65cmと表示されている市販のビニール傘を測ってみたところ、親骨が65cm、持ち手が16cm、石突きが7cmで、全長88cmでした。「先端がとがった88cmもある棒」を横持ちし、振り子のように振って歩く行為の危険性は、容易に想像できるでしょう。

■傘を携行する時の正しい「持ち方」
傘を持ち歩く時は、必ず持ち手を持ち、石突きが真下に向くようにしましょう。そうすると、安全性が高まる上、傘から落ちる水滴が周囲に広がることもありません。


人とすれ違う際に、濡れた傘が触れないように、さっと反対側に持ちかえることができたら気配り上級者です。

■傘を「開く時」「閉じる時」も注意が必要
傘を上に向けて開くと、露先(親骨の先端)が顔の高さにくるため自分の顔や周囲の人にあたったりすることがあります。勢いよく開くワンタッチ式は特に危険ですから、周囲を確認した上で「傘を斜め下に向けて」開きましょう。

傘を閉じる時には、周囲を確認しながら傘をさしたままで少しすぼめた状態にした後、石突きを下に向けて完全に閉じます。

これらは雨傘に限らず日傘も同じなので、傘の正しい持ち方を身に付けておきましょう。

<参考>
・傘の安全性に関する調査(東京都生活文化スポーツ局)
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