義母との付き合いは令和の時代でも難しいものの1つ。ただ、共働きが増えている今、夫婦どちらかの実家近くに住んで協力してもらえるのは、現実的にはありがたいことでもある。


■義実家の近くに引っ越して
都心から1時間程度のところに、夫の実家があるというユリさん(42歳)。結婚して9年、娘が小学校に上がったこの春、夫の実家近くに越した。

「下の息子も近くの保育園に預けることができると分かって。夫と私の仕事のことを考えると、とても二人で二人の子どもを育ててはいけない。これまでは都心近くに住んで、二人とも残業のときは22時まで預かってもらえる保育園だったので、何とかなったんですが、上が小学校となるとどうにもならない。

このタイミングで退職していく同僚も多いんですが、私はやはり仕事をやめたくない。夫ももちろんやめられない。そこで最後の妥協点として義父母の家の近くに住むことにしました」

義父母とは疎遠だったというわけでもない。時間があれば子どもたちの写真を送ることもあったし、まとまった休みがあるときは子どもたちと家を訪れることもあった。ただ、互いの生活の実態が見えるほど親しいわけではなかった。

■義母は明るい人ではあるけれど
「ただ、義母はもともと明るい人だし、『私は無遠慮だっていつも夫や息子に怒られるの。だから言い過ぎたら、それは言い過ぎって注意してね』というくらいあっけらかんとした人なんです。
だから何とかうまくやっていけるかなと思っていたんですが」

義母に比べれば、自分は神経質かもしれないとユリさんは言う。長くチームで仕事をしてきたせいか、どうしても周りの反応を見て全体のバランスを取ろうとしてしまう。それは人間関係にも影響していた。

「前の保育園でも、ママ友みたいなグループはあったんですが、私はぐいぐい来られるのが苦手なので、あまり親しい人も作らず、距離を置いていました。バリバリに仕事をしていても、ママ友との関係をしっかり築いている人もいた。

器用で何でもできて人間関係が苦にならない人からは、『たまにはユリさんも有休とって息抜きしない?』と言われましたが、有休とるならママ友とはいたくないなと心の中で思っていました。結果、ママ友グループからは浮いていましたね」

もともと誰とでも仲よくできるタイプでもないので、引っ越してからは義父母との関係はもちろん、ママ友との付き合いにも過敏になっていた。

■義母との距離が近くなって
「数カ月に1度しか会わなかった義母と、週に数回は顔を合わせるようになりました。義母はいつも明るく声をかけてくれるけど、そのテンションに私はついていけない。しかも妙なノリの冗談を言うんです。先日も私がストライプのちょっとロングのスカートをはいていたら、『あら、すてきなはかまね』って。

『え?』と言ったら、『やだ、はかまじゃないのね。
ちょうど卒業式シーズンだからあなたもはかまで会社に行くのかと思った』とケラケラ一人で笑っている。私は揶揄(やゆ)されたんだと思ったけど、本当に冗談だったみたいで……。でも失礼ですよね」

義母はユリさんのメイクやファッションに必ず何か一言、余計なことを言うようだ。もちろん、本人に悪気はない。

「朝会ったときは、『目の周りがキラキラしすぎてまぶしい』『そんなに茶色い髪で会社に行ってもいいの?』なんて言われましたね。パンツをはいていたときは『あなた、うちのお父さんのスーツが似合うかも』って。

私は肩幅が広くてがっしりして、けっこう男っぽい体型なんです。それをあえて突いてくるような言い方で。何だかムカッとくるんです」

■私はあくまで他人
それとなく夫に言ったら、「おふくろはそういうことを言うタイプなんだよ。悪気はないし、ほんの冗談だから」と。でもそれによって私が不快になるということは悪気のあるなしの問題じゃないよねと思わず言ってしまいました。

すると『だったら言い返せばいいじゃん。
大丈夫だよ、言い返しても気にしないから』と。でも大丈夫なのは親子だからですよね。私はあくまで他人ですから」

おしゃれが好きなユリさんだが、義母の目を気にしてあまり華やかな色合いのものを身につけなくなった。すると今度は「最近、地味ね。あなたのアナーキーでポップなファッションを楽しみにしてるのに」と言われてしまう。その直後に「私が言うこと、ほとんど冗談だからね、あなたはすてきよ」と笑いながらつけ加えたりする。

「日々、義母の目を気にするようになって。ここ数日は、なるべく夫に子どもたちを実家に迎えに行ってもらっています。義母と顔を合わせると、なんだか不快なんですよ。でも不快なのは私の個人的な感情なので、それをあまり表立って言うのもはばかられるし」

義母との付き合いにすでに疲れているユリさん。心の中で義母を切り捨てるか、気にしないと決めるかしかないのかもしれない。

▼亀山 早苗プロフィール明治大学文学部卒業。
男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
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